MISO LABO みそらぼ

[出品者情報]

みそらぼ

[商品]

  • DIP & JAM(加工品)
  • DIP & SAUCE(加工品)
  • 米味噌(加工品)

独自配合の味噌と筑豊が育んだ素材

全長61km、流域面積1,026平方キロメートルにおよぶ一級河川の遠賀川。かつて炭鉱で栄え、現在はその豊潤な水に恵まれた上流に位置する筑豊は、農業が盛んな地域でもある。味噌研究家の安藤久代さんが代表を務める『みそらぼ』は、筑豊三都のひとつ、飯塚市の住宅街の中に工房を構え、味噌加工品の開発・販売や味噌づくりの出張ワークショップ教室などを行う。

安藤さんの実家は、田川郡川崎町で1952年に創業した「安藤商店味噌醸造元」だ。古式製法による無添加の味噌づくりを行い、今では地元のスーパーや道の駅への卸しの他、県内外問わずふるさと納税などでも人気の味噌となっている。安藤さんが「安藤商店味噌醸造元」と共同で開発したオリジナル配合の味噌を使い手作りしている甘味噌「DIP & JAM」と旨味噌「DIP & SAUCE」が『みそらぼ』の看板商品だ。

今回、皿の上の九州に登場する「DIP & JAM(林檎とシナモン)」には、福岡県嘉麻市の「博光園」で収穫されたリンゴを使用している。「主役となる味噌は実家の味噌蔵がある川崎町産、そのほかの素材もできる限り筑豊を中心とした九州産を選ぶようにしています」と素材選びで大切にしていることを教えてくださった。

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川幅が広く雄大な遠賀川。流域は山地と水田や果樹園などの農地が大半を占めている。炭鉱が栄えていた頃は、鉄道輸送に変わるまで石炭の主な運搬路として活用されていた。

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遠賀川の源流点がある福岡県嘉麻市で果樹園を営む「博光園」。

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時期ごとに品種を変えながら、リンゴと梨の栽培を行っている。

味噌の魅力を人々に伝えていくことが使命

「私、味噌まみれの人生を生きております」。そうおどけて笑う安藤久代さんは、実家が味噌蔵ということもあって、生まれた頃から味噌がすぐそばにある人生を送ってきた。「時代の移り変わりと共に味噌が昔ほど使われなくなってきたことを目の当たりにして、このままではいけないと危機感を覚えました。味噌蔵で生まれ育った私は、日本の食文化を守ることが使命だと思いましたね」と当時を振り返る。

安藤さんは「みそソムリエ」「調味料ジュニアマイスター(現・調味料ソムリエ)」の資格を取得し、2011年に味噌加工商品のブランド「misoya no kitchen」シリーズを開発した。以降、後世に味噌文化を伝承していくために、味噌の魅力や食べ方を研究し、発信している。2015年には、現在の前身となる『みそ屋のラボラトリー』を独立起業。味噌づくり教室などのワークショップを中心とした事業で、味噌の可能性を模索・研究している。2017年より『みそらぼ』と名称を新たにして、息子の祐基さんと共に活動を本格的にスタートさせた。コンセプトは“食を通じてライフスタイルに「彩」を”。現代の食生活に合う商品開発をしながら、味噌の大切さや素晴らしさをもっと世間に広めていくことに励んでいる。

『みそらぼ』が提唱しているのは、「味の素」「身の素」「美の素」からなる「三素(みそ)」という考え方だ。「味の素」とは、味噌は和食だけでなく洋食やスイーツとも相性がいい万能調味料であるということ。「身の素」とは、人間の体を構成するアミノ酸の中で体内では合成できない必須アミノ酸を味噌は含んでいるということ。「美の素」とは、発酵食品の味噌は腸内環境を整えてくれるということ。体に悪いものを排出するデトックスによって、細胞が元気になってアンチエイジングにも繋がっていく。免疫力が向上すればがんになりにくく、味噌をはじめとした発酵食品は放射線物質を除去する体内除染の作用が期待できるという。これが古くから「味噌は医者いらず」と伝えられてきた所以だ。
「あなたの体は、あなたが食べたものでできている」という安藤さんの言葉は、みそらぼの活動の原点だ。

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住宅街の一角に佇む工房。

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工場に委託すれば大量に製造できるが、加熱処理をしたり、pH調整剤などの食品添加物を使ったりしなければならない。無添加にこだわる『みそらぼ』では、加熱し過ぎて味噌の風味を損なわないように、手間ひまを惜しまずゆっくりとかき混ぜながら手作りしている。

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『みそらぼ』代表で味噌研究家の安藤久代さんと、息子で営業企画の祐基さん。

家庭によって味が変化していく手前味噌

味噌を使った加工品づくりと並んで、味噌の魅力を広めるワークショップも『みそらぼ』の活動には欠かせない。小学校や公民館などで「味噌づくり」や「味噌玉づくり」を行う体験プログラムを不定期で実施している。

訪れたこの日は、ちょうど2日前に90名近い生徒たちと一緒に手づくりしたという味噌を見せてもらった。それぞれの味噌には、名前を書いた名札が付けられている。これは味噌を作った子どもの名前ではなく、子どもが味噌に付けた名前だという。「麹を使った味噌は生き物なんです。ワークショップで手づくりした味噌は、家に持ち帰って終わりではありません。各家庭で育てる必要があるので、愛着を持って育てるために名付けるようにしています」と安藤さんは名札を付ける理由を教えてくれた。

作った味噌はタッパーや樽ではなく、透明な袋に詰められていることに気づく。理由は味噌が徐々に熟成していく様子を観察するためだった。「味噌は発酵するので、そのままだと袋にガスが溜まってしまいます。たまに袋の口を開けてガスを抜く、味噌のお世話が大切です。その度に家庭に住み着いている菌が採り込まれ、各家庭の味へと変化していきます」。安藤さんが以前、同じ日に同じ材料で作った味噌を後日持ち寄って食べ比べる「味噌の同窓会」をしたところ、それぞれの家庭で異なる味わいへと熟成していたという話を教えてくれた。各家庭で味噌を作ることが一般的だった時代、自分の生活環境にある菌で熟成した手前味噌だから、自慢したくなるほどおいしく感じたのだろう。
熟成過程も観察できる味噌づくり体験を通して、「子どもが味噌汁を飲むようになった」「食に関心が湧き、野菜嫌いの子供が野菜を食べるようになった」という声を聞くそうだ。ワークショップ当日だけで完結するのではなく、数か月かけて楽しめる味噌づくりは食育としても素晴らしい成果を残している。

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夏期は約2か月、冬期は3~4か月ほど熟成させる。味噌に名前を付けて毎日声をかけてあげると、不思議とおいしく熟成されていくという。

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袋内の味噌に付着している白いものはカビではなく、チロシンといううま味成分の元となるタンパク質。これができるのは、味噌がおいしく熟成した証。

日常的に味噌が食べられるジャムとソース

和食において、味付けの基本となる調味料の「さしすせそ」。その中で「そ」にあたり、日本の伝統的な発酵食品の一つ、味噌。甘味、塩味、酸味、うま味による複雑な味わいは、どんな食材や料理にもマッチする万能な調味料だ。

『みそらぼ』の看板商品は、パンにつけるジャムとして開発した2種類の「DIP & JAM(林檎とシナモン・柚子の味噌ジャム)」と、野菜につけたりスープに混ぜたりして食べる3種類の「DIP & SAUCE(生姜と玉ねぎ・胡麻とガーリック・海老とトマト)」。

「DIP & JAM(林檎とシナモン)」は味噌に甘味があるので、一般的なジャムよりも砂糖は控えめ。リンゴは甘味と酸味のバランスが良くて、身がしっかりしている品種「ふじ」を使用。口にすると細かなリンゴの食感と、リンゴと相性抜群のシナモンの香りが心地いい。そしてジャムを食べたはずなのに、あと味には残る濃厚な味噌の風味は不思議な感覚だ。リンゴの甘さを纏った、味噌特有のコクがヤミツキになるだろう。

近年の味噌づくりは製麹機を使った機械式の製造が主流だが、安藤さんの実家の「安藤商店味噌醸造元」では「室蓋」と呼ばれる木箱に麹菌を付けた米を寝かせて麹を育てる昔ながらの「室蓋製法」を採用している。『みそらぼ』では「安藤商店味噌醸造元」に依頼して、「室蓋製法」による福岡県産米麹、福岡県産大豆、添加物不使用、加熱処理を施さずに麹が生きたオリジナルの「福岡県産米麹を使った手づくり生味噌」が完成。この米味噌も今回の「皿の上の九州」にも登場する。

2013年12月、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界からも注目される日本の食文化。「今後は日本で生まれた伝統的な発酵食品の味噌を世界にまで広めていきたいですね」と安藤さん。肉や魚に塗って焼くだけの「味噌漬け」、熱中症予防として暑い夏に飲める「冷たい味噌汁」など、新商品のアイデアは尽きない。

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「DIP & JAM」と「DIP & SAUCE」は、どれも無添加にこだわっている。100gと160gの2サイズで展開。

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「DIP & JAM(林檎とシナモン)」を作るところ。工房のキッチンでは丁寧にすりおろした嘉麻市で収穫されたリンゴとたっぷりの味噌を大きな鍋で混ぜ合わせ、砂糖は鹿児島県喜界島のザラメを使用している。

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『みそらぼ』オリジナルの「福岡県産米麹を使った手づくり生味噌」。塩分濃度も9.5%と控えめ。

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飯塚市の新技術・新製品開発補助事業の助成金を受け、筑豊の食材と味噌を使った「味噌ジェラート」を開発したこともある。ジェラート用の味噌は安藤さんの手作りで、甘味が強くてまろやかな味わいにするため、低塩で麹の割合を多めに配合している。

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