株式会社肥後やまと

[出品者情報]

株式会社肥後やまと
熊本県上益城郡山都町

[商品]

  • 有機人参
  • 里芋
  • 蓮根
  • 有機ベビーリーフ

畑とお皿のあいだで有機の輪をつなぐ。

熊本県上益城郡山都町は、有機JAS認定事業者数が日本で一番多い町だ。取材冒頭からそんな話を聞き、驚く取材陣をよそに、「知らんかったでしょう。うちの町は外にPRするのが下手とたい!」と豪快に答えてくださった原田幸二さん。有機農業への志をもった生産者が所属する組合「株式会社 肥後やまと」の代表をつとめている。原田さん自身も、野菜や米などを有機栽培で育てている農家だ。 1976年に「第3回全国有機農業大会」が開催されたことを発端に、約40年前から有機農業の先進地として一目置かれてきた山都町。熊本県のサイトによると、町内の有機農業の割合は面積ベースでみると2.2%にのぼり、全国水準より高い。さらに、近年の農業移住希望者のうち8割が有機農業を目指す傾向にあるという。今回話を伺ったのは、山都町で新規就農し「自分らしく働くこと」を目指す若き生産者たち。夫婦で蓮根栽培に取り組む坂本光陽さん・真穂さん夫婦と、昨年新規就農したばかりの林真理さん。全国に先駆け有機農業を推進してきた山都町には、有機を通じて広がる輪が確かにあった。
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一大産地として知られる山都町は、有機JAS認定事業者数が日本一の有機先進地。「株式会社肥後やまと」は、山都町の自然の恵みをそのまま感じられる安心・安全な野菜を届けてくれる。

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「株式会社 肥後やまと」の発起人であり現代表の原田さん。自身も有機農家で若手の生産者からの信頼も厚い。生産者と消費者をつなぐコミュニケーションづくりを目指し続けている。

有機生産者数日本一! 山都町が育むオーガニック野菜。

九州の中央に位置し、阿蘇の外輪山と九州山脈の間に広がる山都町。標高300〜900メートルの冷涼な気候と寒暖の差が大きい地域で、中山間地の特性を活かした安心・安全な農産物を生み出してきた。有機農業の普及と新規就農者の育成、その売り先の確保を目的に設立された「肥後やまと会」は、代表の原田さんと有志12名により2013年に設立された。その後2016年に「株式会社 肥後やまと」に発展し、現在は約50名の会員で運営をしている。山都町で育つオーガニック野菜は、人参、玉ねぎ、なす、きゅうり、レタス、トマト…およそ100品目以上にのぼり、取引先も100社を超える。 「こだわりをもって有機野菜を栽培している生産者の収入が安定しない問題があり、それをどうにかしたいと立ち上げました。環境や健康のことを考えて有機農業への志をもっている生産者の思いを大切にしたいという気持ちと、若い生産者を育成・サポートするのが目標。もの(野菜)はあるのに出荷先がないという人が多く、新規就農者たちの販売先を確保することを優先します。『みんなでやる組織』ということを大事にしているんです」と原田さん。約40年前。原田さんがいち早く有機農業に舵を切った頃、まわりのサポートはほぼなく、すべてが手さぐり状態だったという。たくさん失敗した。だから、たくさん考えた。そして出した結論は、「自分たちがつくったものに自分たちで責任をもって価格をつける仕組みをつくる」ということだった。 「株式会社肥後やまと」では、生産量の安定しない新規就農者をベテラン農家がカバーし、互いに支え合う仕組みづくりにはげむ。品目ごとの部会もあり、互いに技術を共有しあっている。そうすることで野菜の味、値段、収穫量が安定し、次の世代へ引き継げる“山都町のオーガニック野菜”をつくっていくことになる。「『肥後やまと』にはいつも安定した量のオーガニック野菜があると思っていただけるのが目標。今の若い人たちが上の世代になったとき、今度は若手を育てる体系をつくれれば」と語るのは、営業企画として日々生産者をサポートする岩田理恵さんだ。目指すのは、「有機をやりたい」という生産者が希望をもてる地域。それぞれにできる、それぞれのやりかたで、この土地の新しい未来をつくろうとしている。
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「肥後やまと」では、生産量の安定しない新規就農者をベテラン農家と事務局がカバー。互いに支え合い、成長し合う仕組みづくりが強みだ。

届けたいものを作りながら 蓮根農家の道は続いていく。

水をたっぷり張った泥の海からすくい上げると、3節重なった蓮根が顔を出した。泥を落とすと、ふっくらとしたきれいなクリーム色が目に入る。自然豊かな圃場で出迎えてくれたのは、坂本光陽さん・真穂さん夫婦だ。大阪の野菜宅配会社で働いていた光陽さんが、地元である山都町に圃場を持ったのが2014年のこと。会社員時代に有機農業の生産者とのやりとりが多かったことから、食の安全について関心を持ったのが就農のきっかけ。結婚し、家庭をもったことで、「本当に安全な食べものを自分たちでつくろう」と有機農業に参入することを決めた。 山都町は11月下旬以降ぐっと気温が下がる。蓮根は気温が低いと養分を多く根に蓄える性質があり、平野部より気温の低い山間部のほうがおいしい蓮根ができる。有機農家の数は増えているが、実は蓮根農家は坂本さんだけ。「身動きしづらい泥田に浸かりますので、高齢者の方には負担が大きいんですよ。一番寒い時季は氷を割りながら畑に入りますし、かなりの重労働です」。またほかの野菜に比べると周囲の環境整備が大変なため、山都町にはあまり条件が整った圃場がないそうだ。さらに「とりわけサイズが大きく育つわけでもないんです。本当は山都町の特産にしたいと考えているんですが…まずはうちの蓮根のおいしさをお客さんに知ってもらうのが必要かな」と語る。 山都町で有機栽培の蓮根づくりはなかなか難しいのでは?というこちらの心配をよそに、味に絶対の自信を持っている。坂本さんの蓮根は、肉厚でシャキシャキとした歯ざわりが特徴。筋が少なくでんぷん質が多いことから、加熱するとねばりが出て、もちもちとした弾力が生まれるのだ。一番の喜びは、食べた人に「おいしかった」といわれること。そして、「自分たちが食べたいもの、つくりたいものをつくる」こと。いずれは山都町で10品を超える有機野菜を育て、自分たちの食卓とまわりにいる家族の食卓を彩る。それが坂本さん夫婦の最終目標。「夢はでっかくね」と語った真穂さんの、やわらかな言葉が圃場に響いた。
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仲睦まじいおふたりの出会いはなんと外国。真穂さんは大阪出身だが、ワーキングホリデー中のニュージーランドで学生生活をおくっていた光陽さんと出会い、結婚。「いわゆる“農家の嫁”に対する抵抗感は全くありませんでしたよ!」と明るく語る姿に引き込まれた。

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「光陽さんの蓮根を食べるとほかの蓮根は食べられません」と岩田さんも太鼓判。個人的に毎年数キロ購入するほどファンだという。梅酢れんこん、豚バラ巻き、はさみ揚げ、天ぷら…ふだんの食卓に最適。

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取材に伺ったその日の夕食に、早速蓮根をグリル。光陽さんがおすすめしてくれたように、オイルで焼き、岩塩をぱらりとかけたのみ。モッチモチの食感で、コクがありながらもさらりとした余韻。どれだけでも食べられる…!

この地で受け継がれてきた思いに ふれながら、努力をやめない。

2018年に新規就農した林真理さんは、小柄で華奢なのに、とてもパワフルな女性だった。長く耕作放棄地だったという畑に手を入れ、今年3月中旬に作付けした里芋は、すくすくと育っている。林さんは宮崎大学農学部を卒業後、農業法人の仕事に携わっていたものの、「やっぱり自分で農業をしたい」という思いを捨てきれず地元で就農。「どんどん畑が荒れていくのを間近で見て何とかしたいと思った。『肥後やまと』には本当にお世話になりっぱなしで、頭が上がらないんです。頑張ってつくれば売り先を確保してくれる仕組みは、私たち若手生産者にとってどれだけありがたいか」。 土作り、畑作り、収穫のすべてを一人で。やることは無限にある。わからないことばかりだから、林さんは積極的に「畑の先輩」たちの元をたずねる。「畑手伝うんで教えてください!って言います(笑)」。ありがたいことに、先輩たちは若い仲間を手厚く歓迎してくれるそうだ。とはいえ、あこがれの農業を有機栽培で行うことはやはり大変なことも多いという。「知れば知るほど難しく、農業で食べていくのは本当に大変だなと思います。ただ、色んな先輩たちと話をすると、皆さんの知恵と工夫に本当に驚かされます。いまはとにかく“楽しい”のほうが勝ってますね!」。畑や土にふれながら、生まれ育った場所で野菜をつくることは、林さんにとってごく自然なこと。「肥後やまと」が若手に提案する道は、決してきれいな道ばかりではない。でこぼこしたり、時に曲がったりしている。それでも、同じ思いをもつ人がつながり、支え合うことで、本当に伝えたいものをまっすぐ届けている。
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「畑の先輩」たちのサポートを受けながら地元で新規就農した林さん。ちなみに新婚で、ご主人はお隣の清和地区でベビーリーフを育てている。お2人はともに「肥後やまと」の会員であることから出会ったという。公私ともに人生を支えるパートナーを目指す。

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ころんとしたフォルムの品種は「だるま」。原田社長が福岡の久留米市から山都町に持ってきて育てた里芋を、長年かけて作付けすることで土地に馴染み、味わい豊かな里芋として栽培が定着。その里芋を様々な生産者に種芋として分け、「だるま」というオリジナルの品種が生まれている。

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