徳永農園

[出品者情報]

德永農園
福岡県大牟田市

[商品]

  • バターナッツかぼちゃ(紹介のみ・農産物)
  • ささげ豆(農産物)
  • 長崎黄金(農産物)
  • バジル塩

農業は人を元気にする力を持っている

福岡県の最南端、熊本県との県境にある大牟田市。東はなだらかな稜線を描く山々、西は有明海に面した温暖な気候の町。三池炭鉱の発展とともに積み重ねてきた歴史があり、古くから炭鉱の町としても知られている。
ここでひとり畑と向き合い、日々野菜づくりを行っているのが德永紘一さん。これまでバンドマン、アパレル、IT企業…と様々な職種を渡り歩き、たどり着いたのが農業だった。「德永農園」を開園して7年、農薬・化学肥料不使用の野菜を育てている。

德永さんが作る野菜は30~40品種。ナスやピーマンなど一般的な野菜もあるけれど、中にはもちきび、四角豆、日野菜カブ、つぼみ菜…といったあまり聞き慣れないものも多い。「僕はもともと農家ではないので、広い敷地や大きな機械を持っているわけではありません。生き残っていくには人と違ったことをしないと埋もれてしまうので、背景にストーリーのあるものや変わったものなど、珍しい野菜も育てています。そういう野菜は面白いし、育てたくなっちゃうんです」。
農薬や化学肥料を使わないのは、自分のまわりの人が求めていたから、というシンプルな理由。現在は、知り合いのパン屋さんに置いてもらったり、レストランや居酒屋などの飲食店や個人宅に卸したり、月に1~2回マルシェなどのイベントで德永さんが販売している。

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德永農園は新大牟田駅からすぐ。新幹線なら約30分で博多駅へ着くほど交通の便も良く、ほどよく田舎でほどよく都会な町。三池炭鉱関連施設が世界文化遺産にも登録されている。

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農薬や化学肥料を使わずに野菜を育てている德永さん。農薬を批判する気持ちはなく、お互いの技術の良いところを吸収し合ったり、高め合えたりできればいいと考えている。

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『ぱんのいえ ボヌール』に並ぶ德永農園の野菜たち。太陽の光をたっぷり浴び、スクスクと育ったのがよくわかる色艶と瑞々しさ。「この野菜はどんな風に食べようか」と思いを巡らせるのも楽しい。

そもそも德永さんが野菜づくりを始めたのは、祖母に家庭菜園をやってくれないかと言われたのがきっかけ。草取りが終わったから鍬で耕してみよう、次は畝(うね)を作って種を植えてみよう…。自分で調べながらだったが、祖母が喜んでくれたのがとても嬉しくて、どんどん野菜づくりに夢中になった。そんな時に知人に紹介されたみかん農園で働きながら、社長の後押しもあり、野菜づくりをスタート。栽培から販売までひとりで任してもらうようになった。

農業を始める前はとても痩せていたという德永さん。畑仕事をしているうちに筋肉がついて体重が増え、ご飯がとても美味しくなったそう。毎日陽を浴びながら体を動かせる喜び、そして、自分が作った野菜を食べて喜んでくれる人がいるという幸せ。農業は人を元気にする力があるのだと身をもって感じた。
「もちろん、農業は大変なこともたくさんあります。自然相手だからファジーな事が多いし、完璧は通用しない。だからこそ頑張って実ると嬉しいんです」。
野菜はちょっとくらいなら耐える強さを持っていて、世話し過ぎてもダメだし、放置し過ぎてもダメ。そこが農業の面白いところだ。

太陽と愛情をたっぷり受けた野菜たち

「祖母が亡くなる前に、独立することを伝えることができました。祖母のもちきびは、僕が受け継いで今でも大事に育てています。芋を作るのがとても上手な人だったのですが、不思議と僕も美味しく作ることができます。血筋なのかな(笑)」。
そんな德永さんが得意とするジャガ芋「ながさき黄金(こがね)」は今回、皿の上の九州でも登場する。希少種の「インカのめざめ」を改良した珍しい品種で中は鮮やかな黄金色。ジャガ芋自体の味が濃いのでスライスして焼くだけで、甘みとホクホクとした味わいを楽しめる。
そのほか、小豆によく似た小粒の豆で赤飯にすると美味しい「ささげ豆」、端正込めて種から育てたバジルを使った「バジル塩」も会場にやってくる。「バジル塩」は天日干ししたバジルをイタリアの海塩とブレンド。肉料理や魚料理、つけ塩としてなどどんな料理にも合わせやすく、リピーターの多い人気商品だ。
ポップアップレストランでは、ひょうたんの形をした「バターナッツかぼちゃ」を使った料理を堪能することもできる。バターのようなクリーミィな味わいで、そのまま生でサラダにしても、繊維質がないのでポタージュスープにすればまろやかな食感に仕上がる。今回、プロの腕によってどんな料理となって登場するのかぜひ楽しみにしたい。

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鮮やかな色、ホクホクとした食感、抜群の栄養価と三拍子揃った「ながさき黄金」。皮付きフライドポテトやじゃがバター、綺麗な色を生かしてポテトサラダにするのもおすすめ。

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ささげ豆は皮が厚く、火を通しても破れにくいのが特徴。煮炊きすると割れやすい小豆は切腹をイメージさせることから、その昔、武士の間では赤飯にささげ豆が使われていた。

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德永さんが育てたバジルは香りがとても強い。天日干しした後に、仕上げにオーブンで焼いて細かく濾してから使用。収穫から1週間後に完成する「バジル塩」は主張し過ぎず、やさしい味わい。

多様性があっていい、農家の可能性を信じて。

德永さんは地元のイベントで野菜を販売する傍ら、司会をしたり、歌を歌ったりもする。さらに、週に2回は八女のコミニティラジオにも出演している。ラジオでは2時間半の番組のパーソナリティも務めているが、もちろん「野菜農家の德永です」と名乗ることを忘れない。新規就農の農家さんの話を聞いたり、野菜について話をしたりなど、農業を身近に感じてもらえるきっかけづくりを行っている。八女までは車で往復2時間。ラジオがある日も早朝の畑仕事や八女での配達、収録後の畑の手入れも欠かさない。農業をやりながらだとハードそうに感じるが、德永さんがとても元気でパワーが有り余っているように見えるのは、自分がやりたいこと、好きなことにまっすぐ向かっているからだろう。
昔はプロミュージシャンを目指していたが、農業を続けるうちに歌を歌うという夢がいつの間にか叶っていた。「農業は大変だけど、工夫次第で自由もあるし、いろんなことができる仕事です。これからの農業は多様性があっていいと思います」。歌もラジオもイベントの司会も。これまでの農家のあり方とは異なるけれど、德永さんにとってはどれも農業とつながっているのだ。

今年は大牟田市動物園の協力のもと、子供達を対象にした「そだてる あにまる べじたぶる」という企画も実施。自分の手で野菜を育て、動物達やみんなと食べることで、子供達の心にどんな変化が生まれるのか。食べ物に興味を持ち、思いやりを学んで欲しいと企画した初めての試みだったが、しっかりと手応えを感じることができた。
また、3年前からは熊本のNPOの理事として里山保全の活動をスタート。今後は農業を通して高齢者の方のリハビリや、引きこもりの自立支援や社会復帰といった福祉活動にも力を入れていきたいと、少しずつ取り組みを始めている。
これまで以上に農業が注目されて、多くの人が親しむきっかけになるように。そして幸せになる人が増えるように。農業から広がる大きな可能性を信じて、德永さんは今日も足取り強く畑に向かう。

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イベントでは聞いてくれる人が楽しめるように、洋楽から邦楽までみんなが知っているカバー曲をすることが多い。「歌のお礼に野菜を買って行くよ!」と言ってくれるお客さんもいるそう。

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德永農園からは車で約20分、委託販売用に週に1〜2回野菜を届けている『ぱんのいえ ボヌール』。西岡さんご夫婦とは、德永さんが売り先に悩んでいる時に声をかけてもらって以来の仲。

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左から時計回りに、バターナッツかぼちゃ、バジル塩、ささげ豆、ながさき黄金。栽培、収穫、製品づくりまですべて徳永さんがひとりで行っている。

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