合資会社 川茸元祖遠藤金川堂

[出品者情報]

合資会社 川茸元祖遠藤金川堂
福岡県朝倉市

[商品]

  • 川茸(生)
  • 川茸(塩水入り)
  • 黄金川うま酢セット
  • 川茸つくだに

世界にここだけ、朝倉の清流で採れる幻の淡水ノリ。

特別なおいしさや、派手さはない。それでも、辿ってきた物語を知れば、途絶えかけた伝統を人の手で守る力強さを感じることができる。その食材は、川茸(かわたけ)。学名をスイゼンジノリという。朝倉市の清流・黄金(こがね)川のみに自生する淡水ノリで、はるか昔から高級珍味として扱われてきた。かつては幕府の献上品として重宝された貴重なノリだが、それ自体には味も臭いもない。エメラルドのような透きとおった緑色と、つるんとしたのどごしが特徴だ。

日本最古の実働する水車群として有名な三連水車や、生産量日本一を誇る甘柿をはじめとする果物。そして、原鶴温泉があることで知られる福岡県朝倉市。さまざまなご縁をいただき、アナバナ編集部では少し前から朝倉市の魅力を絶賛掘り起こし中! …なのだが、そこで出合ったのが川茸だった。

世界で唯一、川茸が自生地する黄金(こがね)川は、全長2キロほどの小さな小川だ。地域の子どもたちが川茸や文化を学ぶ教材そのものであり、環境学習のできる場所でもある。黄金川は、地域に住む人たちの暮らしや営みが重なりあって育まれた、朝倉の原風景ともいえる風景のなかにある。川茸はその美しい川の底に“生える”ようにして生まれる。気温が高くなると光合成して浮き上がり、ふわふわと流れてきたものを収穫される。

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福岡県朝倉市の黄金川でのみ自生する「川茸」。ミネラル分を豊富にもち、つるん、ぷるんとした独特の食感をもつ。これ自体は無味無臭。

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黄金(こがね)川は全長2キロほどの小さな川で、水深も大人の膝丈くらいほど。地域の子どもたちの遊び場、環境を学ぶ場としても貴重な役割を果たしている。

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川茸が流れ着く収穫場所をのぞくと、川底におたまじゃくしのようなものを発見! その名のとおり、昔は“かえる子藻”と呼ばれていたときいて納得。

17代目に託されたバトン。想いは、引き継がれる。

川茸は、かつて熊本県や久留米市の川にも自生していたそうだ。今は黄金川でしか採れない幻の食材になった。この川と川茸を代々守ってきたのが「遠藤金川堂」だ。川茸は、1763年に遠藤さんの祖先によって発見されたもの。17代目となる現代表の遠藤淳さんは、貴重な川茸を後世に残すため、生産にとどまらない活動を続けている。

地元を支えてきた特産物を、“朝倉の宝”としてこれからも大切に守っていくために。その不思議な魅力をもっと広く知ってもらいたいと企画・開催されたのが、今年3月の穴バー「川茸とイタリアンの会」だった。会を彩るオリジナルメニューは、天神の「リストランテKubotsu」窪津朋生シェフとのコラボレーションで生み出された、“オール福岡”でまとめあげたイタリアン。これまで「川茸イコール高級」のイメージが強かったらしいお客さんも、ひと皿ひと皿料理が運ばれるたびに沸き、賞賛の声をあげていた。

遠藤さんには、今年初収穫された“初獲れ”を持ってきていただいた。基本的に川茸は毎年1月〜8月にかけて収穫されるそうだが、前年の大雨の影響を受け、十分に成長するのが3月になったのだ。遠藤さん自ら語るエピソードを聞いてあらためて、川茸が自然の力にあらがわず、あるがままを受け入れて育つ“天然モノ”であることを実感。そして、自然に生えて育つという“自生”の意味を思い知らされた。

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約250年という長きにわたり、いつの時代も黄金川と川茸を守ってきた「遠藤金川堂」は1793年創業。「朝倉市の宝を後世に残していきたい」と話す17代目の遠藤淳さん。

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絶滅危惧種となった川茸の魅力を広めるため、情報発信を積極的に行う。写真は、今年3月に開催された「穴バー」の様子。知られざる魅力について、参加者全員で学び、味わった。

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「リストランテKubotsu」の窪津シェフにより、前菜からデザートまですべてに川茸が使われたイタリアンコースが完成! こちらは稚鮎のコンフィのオイルパスタ。黄金川で採れたクレソンを使用し、皿の上で“朝倉の春”を演出してみせてくれた。

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「朝倉市屋永にある「遠藤金川堂」。遠藤家は江戸後期から幕末にかけて、秋月藩の財政を支える事業を担ってきた。

すべての工程を人の手で。200年以上変わらない朝倉の風景。

川から収穫されたあとは草や藻と分別するため、人工芝を使ったすべり台を使用。それでも獲れない草や藻、ごみなどは、さらに人の手によって分別。たとえば「川茸の塩漬け(生)」をつくるには、選別し、塩漬けしたあと、水にさらしてごみを取り除いていく。機械を使わず、一つひとつがすべて人の手による作業だ。遠藤さんたちは、なんと200年以上この製法を守り続けている。その理由を、「人に食べていただくものだから、人の手をしっかりかけたいという思いから。伝統産業を守っていくためにも、これまで受け継いだものに自信と誇りを持ち続けたい」と語ってくれた。

川茸は朝倉で長年親しまれてきた食材であるものの、温暖化による水温の上昇や水質変化などさまざまな理由から、収穫量がピーク時の10から20分の1にまで減少。2006年には「絶滅危惧1A 類」に指定された。つまり今のままでは、今後黄金川で川茸が獲れなくなってしまうかもしれないということ。「もともと川茸は、お盆やお正月に家族で食べたり、お中元やお歳暮に選ばれたりしていた地域の特産品です。絶滅し、伝統や文化が途絶えることのないよう、いまできることをしたい」。遠藤さんは、時代にあった企画やアイデアを色々と試しながら、この状況を打破したいと考えている。

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収穫したあとは、人の手で一つひとつごみを取り除く。機械だと傷がつくため、作業はすべて人の手で行われる。人が食べるものだから、人の手で丁寧に。「遠藤金川堂」では、200年以上変わらないこの製法をずっと守り続けている。

伝統食材であり名脇役。食べるたびに別の表情に出合う。

ゼラチン質で、ぷるんとした食感がクセになるこの川茸。その小さな体には炭水化物、タンパク質、ミネラル、ビタミンB1・B2など良質の栄養を豊富に含んでいるとあって、さすがは高級珍味。遠藤さんのおすすめは、よく水洗いし、さっと熱湯にくぐらせ、三杯酢などでシンプルにいただく食べ方。また、刺身の取り合わせやお吸いもののほか、スープの具や、茶碗蒸しなど蒸しものとの相性も抜群だ。皿の上の九州では、こんにゃくに川茸をちらしたおさしみこんにゃく「黄金川」、川茸や黄金川にかけると上品な味になる「川茸のうま酢」、もろみ醤油で仕上げた甘辛いお醤油風味の「川茸のつくだに」などをお持ちいただく。

最後に、「味わう」だけではない川茸の秘めたポテンシャルについてお伝えしたい。それは、川茸から採れる貴重な成分「サクラン」のこと。サクランとは、川茸から3%ほどしか採れない新物質の多糖類で、なんとヒアルロン酸の数倍の保湿作用があるそう。高知大学の研究では、サクランがアトピー性皮膚炎の予防と治療に有効であることが確認されており、今後は臨床試験を経て医薬品としての実用化を目指している。伝統食材でありながら、まだまだ知られざる可能性を秘めた川茸の魅力。そして味力(みりょく)を、ぜひ体感してほしい。

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遠藤さんがもつビーカーのなかに入っているのが、サクランを攪拌(かくはん)したもの。水を入れてかき混ぜると、ぷるぷるの状態になり、「穴バー」の参加者も驚きの様子だった。今後川茸の生産量が増えれば研究も進んでいくのだそうだ。

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高級珍味という背景から和食に使われることが多いが、実は和・洋・中さまざまな料理で活用できるそう。250年も守られてきた伝統食材でありながら、あくまで、料理の引き立て役。そんな主張控えめな川茸がいとおしい…!

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