宗像日本酒プロジェクト推進会

[出品者情報]

宗像日本酒プロジェクト推進会
福岡県宗像市

[商品]

  • 寿司専用米「笑みの絆」
  • 玄米
  • 米麹
  • 山の壽 宗像日本酒プロジェクト(紹介のみ)

宗像の自然が育てる酒米で日本酒を

「自然栽培の山田錦100%でお酒を造りたい」。そんな米農家の青年の思いが縁を繋ぎ、福岡市の酒販店『とどろき酒店』、久留米市にある酒蔵『山の壽酒造』、そして福島さんをサポートする谷口竜平さんとともにはじまった「宗像日本酒プロジェクト」だ。

福岡県宗像市は、福岡県北東部にあり響灘・玄界灘に臨む都市。福岡が誇るブランドいちご「あまおう」をはじめ、農業が盛んなエリアだ。そんな宗像市で、祖父母から田んぼを受け継ぎ、米作りに励んでいるのが、プロジェクトの発起人である農業福島園の福島光志さん。2017年にはじまった「宗像日本酒プロジェクト」は、2019年に三期目に突入。1年目、2年目に作られた日本酒はほぼ完売で、2020年に販売される3年目の酒に期待が集まる。とはいえ、「もともとお酒が苦手だった」という福島さんが、酒米の代表ともいえる山田錦の栽培に取り組むきっかけは何だったのだろう。

もともと福島さんは、宗像市のお隣、北九州市の出身。子どもの頃から宗像市で農家を営む祖父母の元を訪れることは多かった。「遊びに行くと、じいちゃんがいつも昼寝をしていたんです。それを見て子ども心に、『農家は楽だな』と考えてしまって」とかつての思い違いに苦笑いを見せる福島さん。高校卒業後は、九州東海大学(現在は東海大学に統合)農学部へ進学し、熊本県で農業を学ぶことになった。その時に出合ったのが、「自然栽培」での稲作だ。

自然栽培とは、化学肥料、有機肥料、農薬を使うことなく作物が持つ自然な力を引き出して育てる栽培方法だ。環境負荷の少ないこの栽培方法なら、川の水は汚染されない。川がきれいなら、当然、海にも負担はかからない。私たちが生活するうえで壊れてしまった自然を、少しでも回復させることができる。「宗像日本酒プロジェクト」の根幹でもあるこの「環境回復」の考えは、自然栽培を知った学生時代に芽生えたものだ。

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大学の講義で農薬や化学肥料の弊害について学んだ福島さん。在学中に出会った大分のお百姓さんに教えてもらった「循環農法」の考え方が、今の根幹となっている。福島さんは、田んぼのあぜの草も除草剤を使うことなく、「自然栽培」を徹底する

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祖父母から受け継いだ田んぼでは、山田錦のほか、ササニシキやヒノヒカリなど私たちになじみ深い米をはじめ、10種類以上を自然栽培で育てる。米の販売まで福島さんが一人でこなし、栽培より営業活動のほうが大変なのだとか

自然栽培の米には、ほかにはないエネルギーがある

「自然栽培で米を作りたい」。そう考えた福島さんだが、卒業後、農薬・除草剤は使わないと伝えたところ、祖父母は大反対。福島さんの祖父母はもちろん、周辺の農家にとって、稲作には肥料も農薬も欠かせないものだった。「農薬なしで米が作れるわけがない」という考えが当たり前だった。農業に従事していない私たちも「自然栽培」と聞くと、なんだか手間がかかりそうというイメージがあるが、「そんなことはない」と福島さんはきっぱり。「米を作るために、農薬は欠かせないと考えている農家は多くいますが、それは肥料を使っているためです。肥料を使えば稲の体は大きくなりますが、そうするとどうしても虫が付いてしまい、農薬が必要になる。だから農薬を使わないようにするためには、肥料も使わなければいいんです」

福島さんの説得にも、農薬を使わないことに抵抗がある祖父が首を縦に振ることはなかったそう。しかし米作り1年目の夏にして、ある転機が訪れる。祖父が病気で入院し、福島さんを中心に稲作を進めることになったのだ。「僕のやり方でやってみたんです。『農薬を使わないなんて無理だ』という思いがあった祖父も、実際に出来上がった米を見て、任せてくれるようになりました」。こうして本格的にはじまった自然栽培での稲作は、苗床の土づくりからスタートする。福島さんの田んぼで、除草はジャンボタニシの役目。福島さんの田んぼをよく見ると、ポコポコと小さい穴が開いているが、それがジャンボタニシのいる証なんだとか。一生懸命草を食べるタニシの姿を想像すると、なんだか愛らしくふふっと笑ってしまう。「自然栽培の米は、食べた時に感じるエネルギーが違う」と福島さんはいう。それはきっと、小さな粒の内側からぐぐっと力を発揮して育った米ならではの力強さなのだろう。

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米を販売する店舗に飾られた田んぼの写真。田植えから稲刈りまで、徐々に姿を変えていく田んぼの様子を知ることができる。街中で暮らしていると感じることができない自然が見せる美しさに、ふと目を留めてしまった

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稲刈りを1カ月後に控えた山田錦の様子。重たそうに穂を傾げているものの、その高さは福島さんの腰あたりまで達し、周りの田んぼの稲に比べて頭一つ抜けている。これが山田錦の特徴で、その分倒れやすく、農家にとっては育てにくい品種と言われる理由だそう

一本の日本酒との出会いが転機に

そんな福島さんが、2017年に山田錦の栽培を始めたきっかけは、ある日本酒との出会いだった。それが、自然栽培の米で作った日本酒。お酒は苦手という福島さんだが、この日本酒を飲んだときに、これまでにない感覚を覚えた。「すーっと体に入っていって、気持ちよく酔えるという感覚が分かりました。ほかのお酒とは全然違う。僕もこういうお酒が造れる米を育ててみたいと思ったんです」

とはいえ、酒造りについては全くの素人。まずは、地元・宗像の酒蔵に相談をしてみた。しかし、新たな取り組みに手ごたえはあったものの、米の値段で折り合いがつかず破断に。というのも、通常、酒米となる山田錦の相場は一等米で一俵1万8000~9000円。名高い産地で知られる兵庫県の高級米でどんなに高くても2万8000円ほどだが、福島さんが提示したのはそれよりも高い3万円という価格だった。価格を下げられたら、とも思えるが、ここが自然栽培の難しいところ。自然栽培での収穫量は、肥料を使う場合に比べてどうしても少なくなる。手間が増え、収穫量が少ない分相場より高くなってしまうのだが、そこを理解してもらうのに苦労したという。

破談になったとはいえ、すでに田んぼでは山田錦が育っている。何とか酒蔵を見つけたいと思っていたところ、破談になったとはいえ、すでに田んぼでは山田錦が育っている最中。何とか酒蔵を見つけたいと、農家や商店主らが集う交流会で出合った谷口竜平さんとともに、同じく交流会のつながりで紹介していただいた福岡市の「とどろき酒店」に相談したところ、紹介されたのが山の壽酒造だった。

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福島さんとともに、プロジェクトに取り組む谷口さん。思いの強さからつい熱が入ってしまう福島さんと冷静に助言を行う谷口さんは、バランスが取れたいいコンビとなっている

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脱穀前、籾(もみ)の状態の米。田んぼのすぐそばに加工場があり、脱穀や精米を行っている

おいしい、けれど、それ以上に感じた言葉にできない味わい

「自然栽培の米というのは私たちにとっても初めてのことで、とても魅力的でした。とはいえ、山田錦を作るのは初めてという福島さんの話を聞いて、『本当にできるのかなあ』と不安だったことも事実です」。当時のことをそう話してくれたのは、山の壽酒造の斉田匡章さん。とはいえようやく「宗像日本酒プロジェクト」がスタートした。期待と不安が入り交ざりながらはじまったプロジェクトではあったものの、実際に収穫された福島さんの山田錦は、斉田さんいわく「優等生」。粒がそろい、とても扱いやすい米だった。

こうして2018年の早春に出来上がったのがプロジェクト初となる待望の日本酒。これまで多くの日本酒を口にしてきた斉田さんは、「単純に言葉にできない味わいがありました」とその味を教えてくれた。いつも通り普段使いのお酒で、おいしいことはおいしいけれども、それ以上のもの。きっと、それこそが福島さんの言う「エネルギー」なのだろう。

さらに二年目は一年目を超える仕上がりに。「雑味が少なく透明感があって、純米酒なのに吟醸酒のような香りがするランクを超えたお酒でした。その出来は私たちの想像以上です」。その言葉通り、いただいたお酒を口に含むとふっくらと丸みがある口当たり。喉を通った直後、鼻に抜ける香りは華がありふくよかで、ふぅっと小さく息が漏れる。とはいえ、2年目の酒こそ目指した味かと思えばそうではない。同じ条件で作っても、同じ味には仕上がらないのが日本酒だ。「このお酒はまだ、完成したお酒ではありません。僕たちも作り方を変えながら、もっともっと試行錯誤していきたい。3期目が、どんな味になるのか楽しみにしていてほしいですね」

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創業200年以上を誇る山の壽酒造が目指すのは、「福岡で愛されるお酒」。福島さんの米も、築後山脈の北端にある耳納連山の伏流水で仕込み、福岡の食材に合い、食事の味を邪魔しない食中酒として楽しめる日本酒に仕上げている

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山田錦は10月半ばごろに稲刈りを行う。酒造りは12月からスタート。来年2月以降に、3期目の日本酒が販売予定。1期目、2期目はすでにほぼ完売。3期目への期待も自然と高くなる

米こうじや酒かすで山田錦を余すことなく楽しむ

酒造りには欠かせない山田錦だが、そうはいっても仕込み量には制限がある。きっちり適量のお米を生産することができればよいが、自然のことだとそうはいかない。必然、多めに栽培するため、どうしても余ってしまう米が出てくるのだが、それらはどうしているのだろう。酒造適合米である山田錦は、私たちが普段口にする米とは異なるため、一般消費者に販売することは難しい。そこで福島さんが考えたのが「米こうじ」だ。この米こうじで作る甘酒は、絶品とのこと。実際に飲ませてもらうと、甘味はしっかりとあるものの甘酒にありがちな喉に引っかかりのある甘さではなく、すっと喉を通るすっきりした後味で非常に飲みやすい。今年はこの米こうじを作るために、あえて多めに山田錦を栽培しているんだとか。また酒を造る際にできた酒かすも商品化。ふっくら香りが立つ酒かすは、かす汁などで食べると体の芯からほっこり。自然の恵みが詰まった自慢の山田錦を余すことなく楽しませてくれる。

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福島さんの奥さま手作りの甘酒。甘いけれど甘過ぎない、すっきりした飲み口でゴクゴク飲めるおいしさ

宗像から全国へ、自然栽培の和を広げたい

宗像では、プロジェクトに賛同し協力してくれる農家も出てきた。「それぞれの土地の米農家と酒蔵によってできる日本酒がいくつもできてほしい。取り組みが全国に広がってほしいです」とプロジェクトをサポートする谷口さん。斉田さんの考えも同様だ。「米や水、酵母など同じ条件で酒造りをしても、蔵によって全然味が違ってくるのが日本酒。僕たちは福島さんの米を独占しようとは考えていないんです。だから、全国に取り組みが広がるのはもちろん、福岡でももっといろんな酒蔵さんが賛同してくれたらと考えています」。

そのために、福島さんが今年から栽培を始めたのが寿司専用米「笑みの絆」だ。山田錦は背丈が高く伸びるため倒れやすく農家にとっては育てにくい品種。自然栽培のハードルもおのずと上がってしまう。そのため、農家が育てやすい品種をと選んだのが「笑みの絆」だった。無事に寿司専用米も収穫でき、来年以降に向けて無農薬の稲作にチャレンジする農家さんを募集しているそうだ。

「一緒に取り組む農家が増え、無農薬の田んぼがもっと増えることで目に見える形で成果が現れたら、うれしいですね」とさらに続ける福島さん。海がきれいになることで漁獲量が減っていた魚が戻ってきたり、田んぼにとって大切な資源である古森川に蛍が戻ってきたりと、かつては当たり前だったその光景をいつか目にすることができれば。宗像から九州、そして全国へ……。日本の農業が新しい一歩を踏み出す予感。そんなワクワクした期待たっぷりのエネルギーが、ここにはある。

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プロジェクト第二弾として栽培をはじめた寿司専用米「笑みの絆」。日本酒と寿司、合わせて楽しんでもらいたいという思いが込められている

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田んぼのすぐそばに流れる古森川は、稲作に欠かせない水資源。上流では今もほたるが見られる小川

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