ダイワファーム

[出品者情報]

ダイワファーム
宮崎県小林市

[商品]

  • モッツァレラ
  • ロビダイワ
  • ジンゼ
  • プレーンヨーグルト
  • ミルクジャム

しぼりたての生乳だからできる味を探して。

霧島連山をはじめとした九州山地の山々が連なり、田園風景が広がる宮崎県小林市の東方地区。小林市を起点に九州山地を阿蘇まで縦断する国道265号を進むと、「アイスあります」の看板とともに現れるのがダイワファームだ。代表の大窪和利さんの父が始めた酪農を20歳の若さで継いだのが40年前。そこから現在のチーズづくりを軸にした事業形態に至るまでには、逆境もあった。  

逆境の中から生まれた モッツァレラチーズ

1993年には40頭いた牛を60頭にまで増やすほど順調だった牧場経営をゆるがしたのが、牛乳の生産調整だった。生産調整とは、牛乳の余剰を抑制するために生産量を制限される行政指導のことだ。牛は生きもの。搾乳は出荷できずとも毎日行わなくてはいけない。出荷できないもどかしさが和利さんを苦しめた。そんな状況下で、「なんとか生乳を活用したい」と、3年の準備期間を経て、1996年にソフトクリームの製造を開始した。イタリア製の本格的な設備を整えて挑んだアイス製造。そのおいしさは評判をよび、地元では「アイスのお店」として人気の立ち寄りスポットとなった。
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小林市街地から、須木方面に向かう道沿いにあるダイワファームの店舗。近くには渓谷美で知られる「三之宮峡」や霧島火山帯の溶岩が作り出した奇岩「陰陽石」がある。

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さらりとした味わいのソフトクリーム。トッピングありは各290円。トッピングがいろいろ楽しめるが、一番人気はブルーベリー

アイスの販売で息を吹き返し、さあこれから何をしようかとあれこれアンテナを張っていた和利さんは、ある農業雑誌で「家庭でできるチーズ」という記事に出会った。アイス製造を開始して5年後のことだ。好奇心のままに家にあった鍋や釜で作った。「まず作ったのは1カ月ぐらい熟成させるゴーダタイプのチーズ。焼けばとろけると聞いて、友達を呼んでホットプレートで焼きながら食べたとよ。これは美味しいねっちゅうて、盛り上がったねえ」と当時を振り返る。これはいける。そんな確信をもって、当時、偶然出会ったチーズ工房の方の元で技術を学び、2005年には本格的なチーズづくりに乗り出す。「らしきものはできるけど、本物をつくるなら、やっぱり本場のイタリアに行かんといかん」と、和利さんは一念発起して現地へと飛んだ。そこで衝撃を受けたのが、作りたてのモッツァレラチーズの食感と搾りたての生乳が作りだす風味だった。弾力、ジューシーさ、風味、発酵度合い、繊維のつくり方。おいしいモッツァレラにはちゃんと理由があった。「現地のつくりかたを真似ても同じものは作れないけど、できたてのあの食味は再現できるはず」。本物の味を求めて試行錯誤するうちに、いつしか料理のプロが求めるチーズへと成長していた。
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「この辺りは夏場30度ぐらいになるんだけど、その温度がモッツァレラを発酵させるのに最適なんですよ。本場のナポリも雪が降らないように、ここはチーズづくりに合ってると思うよ」と和利さんは嬉しそうに話す

おいしいチーズは 健康な牛を育てるところから

朝5時半。チーズづくりの朝は早い。朝もやのような湯気と湿気が室内を包むなか、もくもくと作業が進んで行く。ふいに「食べてみますか?」と、差し出されたモッツァレラチーズ。まだほんのりと温かい。プルンとした弾力とともに、口いっぱいにミルクの優しい風味が広がる。「このおいしさが味わえるのは、作りたてだけなんですよ」。そう教えてくれたのは、和利さんの息子の誠朗さんだ。本格的に父を手伝い始めて4年。チーズづくりの現場を先導する若き担い手だ。 「おいしいチーズをつくるには、原料の生乳が大事」と誠朗さんはいう。朝夕2回搾乳された生乳は、牛舎と隣接する工房へと運ばれ、新鮮なうちにチーズやヨーグルトなどの乳製品へと加工される。 農場にはホルスタインとブラウンスイスの2種類の牛が約30頭おり、これらの生乳を混合させてチーズをつくる。牛のエサは牧草主体。腸内環境が整い健康状態を良好に保つことができ、脂肪分やタンパク質の高い、濃い成分の生乳ができるからだ。飲む水は、牧場から2.6キロメートル離れた国有林から引いたもの。天然鉱山でろ過される地下水脈から湧き出た清浄な水だ。牛舎にはふかふかしたカンナくずを敷く。牛のストレスを軽減し、腹部を保護する役割も果たす。 牛は生きもの。その日の体調や気温によって生乳の状態も変化する。誠朗さんが生乳に乳酸菌を加えて分離させる過程は、まるで生きた命と対話をするようだった。ゆっくりとゆっくりと、かき混ぜるその手先に全神経を集中させるようにして状態を見極める。乳酸菌の力を借りて、生乳があらたな形状へと変化していく。決められた時間はあくまで目安だった。最後は人の勘が決める。良しと思ったら次の工程に移る。そうやって日々、牛や生乳と向き合いながらチーズをつくる。
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活性炭が敷かれ、搾乳前にヒノキのカンナくずが取り換えられる畜舎は、アンモニアの臭いなどがまったくない

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乳酸菌を加えた生乳を38~39度に温度を保ち、ゆっくりと混ぜながらカード(凝固物)とホエー(水分)に分離させる。330リットルの生乳から約45キロのモッツァレラチーズができる

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白いかたまりのようなものがカード。液体がホエー。ホエーは後でリコッタチーズをつくる

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カードが発酵したら、ストレッチテストをしてチーズの伸び具合を見極めると、いよいよモッツァレラに成型していく

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カードに熱いお湯をかけて溶かし、棒でかきまぜチーズを繊維状にしていく。ここで繊維をつくることで、モッツァレラ独特の弾力がうまれる

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程よく水分を含ませながら手際よく丸めていくとチーズが艶を帯びてくる。成型ができるのは、和利さんと、息子の誠朗さんの2人だけという職人技。モッツァレラとは「引きちぎる」という意味。

チーズは生きもの。難しいから面白い

「チーズは生きているんですよ。特にモッツァレラは、つくりたてが一番弾力があって、発酵の力でだんだんと柔らかくなります。賞味期限の10日ぎりぎりまで、その弾力が感じられるよう心がけています」。ハード、セミハード、ウォッシュと約10種類のチーズがあるなかで、モッツァレラは全製造量の7割を占める、ダイワファームの看板といえる主力商品だ。モッツァレラに次ぐ自信作が、ウォッシュタイプの「ロビダイワ」。厳重な温度と菌の量の管理が必要な難しいチーズだ。約1カ月熟成させる間、塩水でふきながら丁寧に仕上げていく。チーズらしい独特の香りとしっとりとした口触りが特徴だ。ロビダイワは「オールジャパンナチュラルチーズコンテスト」で金賞を受賞。「ジャパンチーズアワード」でも入賞しない年がないほど高い評価を受けている。 日常使いでおすすめの食べ方をたずねると、「モッツァレラは、ぜひ生で」と和利さん。ただし、包丁では切らずに手でちぎるか箸で裂いて食べて欲しい。そうすることで程よい繊維感を味わえるそう。ホットプレートで野菜と一緒に焼いて、チーズフォンデュのようにチーズをとろけさせながら食べるのもおすすめ。「カリカリのチーズのおこげで食べてもおいしいですよ」と、とっておきも教えてくださった。 「青カビのチーズもまだまだ納得いく味には届いてないし、今つくっている種類一つひとつの味を極めるためにも、もっと研究せんとですね」。酪農もチーズも生きもの。正解がないからこそ、良いものをつくるためには手間がかかる。「難しいから面白い」。そうたびたび口にする和利さんからは、苦労も失敗も愛するチーズのためと、心から酪農とチーズづくりを楽しんでいるのが伝わってくる。ダイワファームが目指す最高のチーズ作りへの挑戦は、まだまだ続きそうだ。
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プレーンヨーグルト360円と手作りヨーグルト微糖タイプ250円、飲むヨーグルト170円。どれもしぼりたての生乳でつくった、とろみとコクのある味わい

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生乳と砂糖だけでつくった手作りミルクジャム750円。パンがおいしくなる逸品

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