今こそ、東峰村の魅力を全国へ

[出品者情報]

東峰村アンテナショップWith+(ウィズプラス)
福岡県東峰村

[商品]

  • 生しいたけ(宝珠山きのこ生産組合)
  • 干ししいたけ(宝珠山きのこ生産組合)
  • おいしたけせんべい(宝珠山きのこ生産組合)
  • 柚子ジンジャー(宝珠山ふるさと村)

今こそ、東峰村の魅力を全国へ

福岡県中南部の東端にあり、大分県との県境に位置する東峰村。村の総面積の約8割が森林原野を占め、山間地域の村には手つかずの自然が多く残っている。“美しい村”と称するのに相応しい地域で、清らかな風土と水を生かした農作物づくりが盛んだ。伝統工芸品指定の小石原焼や高取焼の窯元も50軒ほど点在している。

2017年7月に発生した九州北部豪雨では、その名を全国区にするほどに深刻な被害を受けた。あれから1年。村の山肌は未だ大きなブルーシートで覆われ、土砂の山積みが随所に見られる。そんな中、村の人々はというと、「きっかけは災害でも、村が全国区となった今こそがチャンス!」と至って前向きだ。今、東峰村では、たくさんの作り手たちを巻き込んで、新たなプロジェクトが立ち上がり、東峰村から外へと発信を拡げている。

東峰村の魅力を伝えるべく、東峰村出身の女性たちを中心に5年前に発足した「東峰ムラガールズ」。主にイベントやメディアを通して発信していたが、4年前にたくさんの方が訪れやすい福岡市内にアンテナショップを出店した。九州北部豪雨直後には新たな東峰村の産品も取り扱い「東峰村アンテナショップWith+(ウィズプラス)」に改め、現在も東峰村と福岡市、他の地域との架け橋を担っている。今回、そのアンテナショップから「皿の上の九州2018」に出品するのが、東峰村で代々続くしいたけ農家の「宝珠山きのこ生産組合」のしいたけ商品と「宝珠山ふるさと村」の柚子ジンジャー。「宝珠山きのこ生産組合」の4代目であり、「東峰ムラガールズ」の一員でもある川村倫子(かわむらともこ)さんを訪ねてみた。

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被災から1年の月日が経過した今も、村のあちこちで復興作業が行われている

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「宝珠山きのこ生産組合」からは生しいたけ、干ししいたけ、おしいたけせんべいを出品する

東峰村は柚子の産地でもある。会場では、「東峰ムラガールズ」の一員でもある「宝珠山ふるさと村」が生産・販売する柚子ジンジャーも登場する

東峰村で4代続くしいたけ農家

生産者でありながら農学博士、というユニークな肩書きで、“キノコ博士”の愛称で親しまれている「宝珠山きのこ生産組合」の川村倫子さん。九州北部豪雨では、ハウス6棟に自宅も事務所も失うという甚大な被害を受けた。だが、わずか1年で新施設を完成させ、「私たちは元気です」と笑顔であっけらかんと話す姿が印象的だ。

あまり知られていないが、福岡県は国内3位を誇るキノコの生産地。東峰村でも古くからキノコの栽培が行われてきた。4代目の川村さんが作るのはハウス栽培のしいたけ。実は約90%が水分から成る生しいたけは、水の綺麗な環境でこそ美味しく育つ。福岡県で唯一、平成の名水百選の認定を受ける「岩屋の湧き水」が流れる東峰村は、まさにしいたけ栽培に適した環境なのだ。

しいたけの一般的な栽培方法は主に2通り。原木に菌を植えつけ、林で栽培する「原木栽培」と、樹木などを粉砕して作った菌床に菌を植えつけてハウスで育てる「菌床栽培」。かつては川村家も原木栽培であったが、ハウスならではの生産性や安全性の観点から、現在は菌床栽培に。その良さは、土の役割を担う菌床から手作りしてハウス内で徹底管理して育てるので、完全無農薬で作れることだ。

川村さんが作るしいたけは肉厚で、ジュワ―っと旨味がしみ出る、いわゆる“しいたけ汁”が特徴的。綺麗な水はもちろんのこと、昼夜で寒暖差をつけて自然に近い環境をハウス内で維持することが、美味しさの決め手だという。不要なものは一切加えず、菌床の原料は、原価が高くても九州産の木くずなど、安心安全なものだけを使用。そうして出来あがった逸品は、しいたけ嫌いの子どもでもパクパク食べてしまうそうだ。

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「宝珠山きのこ生産組合」4代目の川村倫子さん。大学では薬用キノコを学び、農学博士を取得。しいたけの生産に限らず、「きのこ大祭」など自身でイベントの企画まで手掛けることで、キノコや東峰村の魅力を伝えている

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ハウス内で育てる菌床栽培のしいたけ。培地から一から作り、温度も徹底的に管理する

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2018年7月に完成したばかりの新施設。「おかげで被災前よりも作業の効率は上がっている」と川村さんは前向きだ

東峰村は元気でアツい!

「生産者として、ただいいものを作るだけでなく、この地でしかできないこと、この地だからこそできることの魅力を、消費者に直接伝えていかなければ」と川村さんは話す。東峰ムラガールズの一員として、またしいたけ農家の生産者として、今、川村さんが直面している課題が、菌床栽培のよさをいかに伝えていくか、だ。というのも、他の野菜ならハウス栽培でも抵抗なく手に取れるのに、何故かしいたけに限っては、特に九州において“原木栽培信仰”が根強く残っているという。川村さん自身、スーパーでもイベントでも、「菌床」という表記を見た途端に消費者が商品を置いていく光景を何度も目にしてきた。

近年、川村さんは、小学生を対象に、菌床栽培のハウス見学を受け入れている。「実際に栽培のプロセスを目で見て、食べてみる。時代と共に変わる安全の定義も、肌で感じてもらえれば」と川村さんは話す。“菌床栽培=加工しているもの=美味しくない”という根拠のない固定観念を払拭すること。そして、この東峰村のよさを伝えていくことが、川村さんの使命だ。
完全なる復興への道のりはまだまだ続く。それでも、村の人々は、目の前のものづくりに日々励み、次々と新しいプロジェクトを立ち上げ、ただただ前だけを見て歩んでいる。東峰村は、東峰ムラガールズをはじめ、とにかく元気なのだ。

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市場に出回る生しいたけの8割以上が菌床栽培だという。現在は主流の栽培方法だ

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しいたけは鮮度が命。朝採れのしいたけは、軸が真っ白。フレッシュな証拠だ

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宝珠山を流れる美しい川。しいたけ産地に適している最大の理由がこの綺麗な水だ

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