コトバナ

これからの福岡はもっとおもしろい! 暮らしをワクワクさせる種探し〜後編〜

VOL.012 「これからの福岡はもっとおもしろい! 暮らしをワクワクさせる種探し」

2015.06.04(木)

暮らしをワクワクさせるヒント

白石 「コトバナ」のゲストは、(前編で紹介したように)消費や選択の新しい一歩を示してくれるゲストが多かったですね。

山内さん(以下、山内) 僕らがモデレーターを務めた回以外では、どんなお話があったんでしょう?

白石 「暮らしがもっと豊かになる“住まい”としてのシェアハウス」ではシェアハウス、「ベッドひとつで世界とつながる 暮らしと旅の新たな関係」ではAirbnbをテーマにし、住まいや暮らし方、滞在の仕方について話し合いました。

三迫さん(以下、三迫) 僕も、暮らし方と働き方のバランスの追求は、自分の中で大きなテーマです。例えば、「暮らしと仕事の良い関係。 “私サイズ”で身の丈ブランディング」に出ていただいた前崎さんは、築150年の屋敷を、自分で手を入れながら住んでいて、住まい方と働き方をデザインされていることに刺激を受けます。

(前崎さんの暮らしはウェブサイト「宿借日記」でも紹介されています)

三迫 そうなんです。Webで発信する際の、見せ方についての考え方も面白くて。

山内  1回目の「みんなで作るシェアする暮らし」の時も、似たようなことを感じました。ゲストの畠山千春さんは、3.11をきっかけに、これまでの生活を見直し、福岡に移住してきました。そして糸島で自給自足の生活を始めるんですが、ユニークなのは、米づくりや狩猟や家づくりなど、自分たちの生活に必要なものをすべてワークショップ化して公開し、人の協力の下にやること。労働力が提供されることで彼女らは助かるし、参加者も経験を積むことで得るものがある。

三迫 畠山さんは「波乗り」と表現されてましたね。

山内 ええ。何かをしようと思うたびに、毎回波を起こして、その波に乗りたい人を募る。彼女が言うシェアとは、単に1枚のピザを1ピースずつ分けるようなシェアではなくて、作ることやプロセス自体をシェアしていく、というスタイルなんです。

プロセスをシェアし、ワクワクを共有する

三迫 それはWebを利用して盛んに行われるようになってきましたね。「街と暮らしを変えて行くWebと日常のつなげかた」では、Webエンジニアの下村さんから、Webを使ってプロセスを公開しながらブランディングしていくことの大切さをお話いただきました。イベントが始まった時には、すでにファンがいるという状態を作ることが大事だと。

白石 期待を徐々に高めていくわけですね。

三好 その点は、「やっぱりシエマはやめられない! まちで文化を発信し続けること」の重松さんの話も印象的で。佐賀にあるシアター・シエマという映画館は、デジタル上映機器を揃えるために必要な資金1000万円の寄付を、クラウドファンディングというネット上の募金システムで募って成功させたんですが、地道な募金活動から始まったんですよね。

白石 常連だったおじいさんが寄付をしたいと言ったところから、すべてが始まってるんですよね。

三好 そうそう。街の皆さんに応援を受けながら、「クラウドファンディングもぜひ利用すべき」とアドバイスを受け、開設した頃にはもう、寄付したくてもできない遠隔地の人たちが待ち望んでいる状態で。

三迫 僕もシアター・シエマとは関わっているのでよくわかりますが、目標額を達成してプロジェクトが終わってからも、熱量がずっと続いていますよね。

三好 そうなんです。少しでも募金に加わることによって、自分もプロセスに関わった、自分も当事者であるという感覚が持てるんですよね。だから、シエマの出来事はすべて他人事じゃなくなるんです。我が映画館、という気持ちで見守ったり、活動をサポートしたり。


佐賀市民が当事者意識を持って貢献し、デジタル化を達成したシアター・シエマ。カフェ、ライブ、ワークショップや結婚式まで行う、市民に愛された場所となっている(写真提供/シアター・シエマ重松さん)

山内 そういう意味ではこのトークイベント自体も、みんなで場を共有し、傍観者ではなく当事者になれるいい機会になったのかもしれません。

三好 そうだと嬉しいですね。

〜会場の皆さんとのコミュニケーション〜

総集編ということで、毎回来ていただいている常連の方から、サイトを見て初めて来たという方まで、大賑わい。お客さん同士の会話も弾みます

白石 ではここで、会場の皆さんの声も聞いてみましょうか。今日の感想や、みなさんの中でワクワクしていること、気になる人や物を、ぜひ教えてください!

Aさん こんばんは。以前一度来た時に面白かったことと、山内さんとお話しできたことがとても有意義だったので、またお話を聞きたくて来ました。

山内 ありがとうございます(笑)

Aさん 私、これからどういう仕事をしてどう生きていくかを、ずっと悩んでいまして。というのも、私はアスペルガー症候群で、いまは同じような障害を持っている人が集まり、就職のためのスキルを磨いている最中です。アスペルガー症候群って、見た感じではよくわからないので、誤解を受けやすくて、それで傷つくこともあって。

山内さん メンタルヘルスやワークライフバランスは、2030年代に向けて取り組むテーマとして、ドネルモでも話し合いを重ねています。“ワークライフバランス”という言葉は誤解されやすくて、よく仕事がバリバリできる人が仕事も私生活もより充実させるための考え方という風に捉えられてしまうんですが、実際には、週に5日間働くのが心身的に厳しい方、子育て中のお母さんといった人を対象に考えていくことが大事です。不安を感じることもあると思いますが、お一人で悩まず、社会全体で考えていく課題だと思います。

Bさん アナバナのメールマガジンでイベントを知って、過去のアーカイブを読んで興味深かったので来ました。出身は佐賀なんですが、福岡は人も情報も多くてキラキラしていますよね。イベント事が好きで、だんだんと参加しているうちに、主催側に立って手伝うようになったりして、わくわくした気持ちが続いています。

三好 それはいいことですね! あちら側にいた人が、その魅力に引きつけられて、緩やかに越境し、こちら側に立っている。それがまさに、私がずっと取り組んでいる当事者意識ということですから。どんどん楽しんだらいいと思いますよ!

Cさん わたしは福岡が実家なんですが、この春に佐賀に引っ越して、新しい会社に入社しました。そこで商品企画を任されていて、まだまだわからないことが多いので、今日はその勉強にきました。ちょっとわたしの悩みを来てほしいんですけど…。

三迫 ええ、どうぞ。

Cさん 佐賀のすごく田舎に住んでいて、車もないので、遊びに行く場所がなくて、自分の世界が広がらないままなんです。

三迫 佐賀市内にあるパハプスギャラリーは行かれました?

Cさん すごく行きたいんですが、なんせ自転車で1時間半かかるので……。

三好 それは遠いですね…。これは、どの地方でも起こりうることです。身近な環境が面白くないと感じる時、都市部にアクセスする手段をみつけるのか、いまの環境に面白いものを作るのか。僕は、見方を変えれば面白いものはたくさん発見できると思っているので、後者をおすすめします。何か、その地域で気になっているものはありませんか?

Cさん 家の近所で栽培されている、キャベツがめっちゃ余ってるんですよね(会場笑)。キャベツ作ってるおばちゃんに話しかけてみようかな。何か活用できるかもしれません。ちょっと勇気が出てきました、ありがとうございます。


この日お話いただいたのは女性3名。もちろん事前打ち合わせなしのご指名にもかかわらず、皆さんハキハキと、ユーモアも交えてご自分の想いを語ってくれました。素敵です。

白石 皆さんありがとうございます。会場の皆さんと会話し、当事者としてその状況を楽しんでいただくことも、コトバナのねらいのひとつでもあったので、今日はとてもいい形になりました。今後のコトバナの展開にもご期待ください。ありがとうございました。


3人それぞれのコメント力が光る充実した会となりました。13回目以降もモデレーターとして登場くださる予定です

コトバナ編集後記

コトバナ総集編、いかがでしたでしょうか。毎回個別のテーマで展開していたトークも、こうして振り返ってみると、いくつかの共通点が見い出せます。ないものは自分で作ること、プロセスを共有し楽しむこと、消費に意識的になること、自分にあった住まい方や働き方を見つけること、どれもいまの時代に取り組むべきテーマであり、自分たちの手でよりよく変えていけることだと感じます。次回からはどんな話題が展開していくのでしょうか。大好評のコトバナ、まだまだ続きます! (佐藤)

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