やました農園土づくり奮闘記

たびたび勃発!やました農園の〝誤算〟とやっぱり壁は高かった〝菌ちゃん農法〟

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たびたび勃発!やました農園の〝誤算〟とやっぱり壁は高かった〝菌ちゃん農法〟

最近のやました農園は、ワイワイと人が訪れ賑わいを見せています。というのも、この無農薬栽培に賛同した人や農作業を体験したいという人が集まり、畑仕事の手伝いをしてくださっているのだとか。人海戦術で作業もはかどり、微生物の実験も光が見えている。ハードルが高いと思われる土作りの現場、今のところ順風満帆に見えますが、実際のところどうですか?マナブさん、マナミさん?

やってみてはじめて明らかになった、機械問題!

「僕たちだけでは、毎年何週間もかかるポット詰めが、皆さんのご協力により2日で終わりました!ありがとうございます!」と清々しい笑顔で語るマナブさん。その数なんと、1万4000個以上もあった作業を終えて拍手が起こります。「いちごは農薬散布が多いので、子どもには敢えて食べさせていませんでしたが、やました農園のことを知って嬉しくなって。どうか、土作りが成功するようにという想いで来ました」と、愛らしい赤ちゃんをおんぶしながら作業をしていたお母さんは、お手伝いの常連さん。その他、お勤めの休みをとってわざわざ参加してくださった方やご自身でも無農薬栽培をされている農家の方、そして、農作業の合間にいただく昼食を作ってくださる方も訪れ(この日はガパオライスのような野菜たっぷりプレート!)、いつの間にか‘やました農園応援隊’なるものができているような雰囲気がありました。

…っと、なんだかキラキラした思い出が残るような和気あいあいとした農作業の現場を見る限り、全てが順風満帆のようなやました農園ですが、実は事件が起きていたのです。それは、機械の問題。実際に今年ふたりが挑もうとしている土ごと発酵させる土作りは、まだ取り組んでいる農家があまりないために、大規模で取り組むための機械がありません。開始当初おふたりは、土に入れるための草を刻む作業を友人から借りた草刈機で挑もうとしたようですが…。

「実際に作業してみると現実は厳しかった!粉砕しないといけない草は20トンぐらいかな。ふつうの農家は、こんなに大量の草を細かく刻む必要がないんで、専用の機械は持ってないんです。うちのよりはるかにパワーのある友人の草刈機でもまったく太刀打ちできない。カマで切ろうとしても話にならない!そんなこともあって、いちごの定植時期から予定していたスケジュールからも大幅に遅れてしまい…。悩んだ末、トラクターに草刈機専用の部品をつけて(下記の写真参照)パワーアップさせ、作業の効率化を図ろうと。この予想外の出費は、めちゃめちゃイタいです。でもこれがないと大量の草を細かくカットできないし、草が大きいままだと土に入れた後の分解に時間がかかって、今年のいちごに間に合わない。苦渋の選択でしたけど、この機械なしでは決してやれてなかったと思います」とマナミさん。

いちご栽培をはじめてもうすぐ10年になるやました農園ですが、まさか草刈機が作業の主力になるという不測の事態。機械問題は、それだけには留まらないようです。夏に予定している“畝立て”でも、大きなハードルが待ち構えています。「微生物の心地の良い環境を作るためには水はけが大事で、できるだけ畝を高くしたい。40〜50cmは欲しい。僕たちが持っている機械では、20cm程度しか上げられなくて。探してみた範囲では、うちの土質を考えると市販の機械で思うような高畝(たかうね)にするのは難しそう。たとえあっても、すぐには買えないし、人力で畑全部を高畝にするのなんて、とてもできそうにない。とにかく今年は、いくつかの機械を駆使してやってみようと思っています。実際にやってみないと、できるか分からないけど」。

『菌ちゃん農法』を〝農業〟とする壁はやっぱり高かった!

それにしても、マナブさん、マナミさん。これらのトラブル、はじめる前に想定がつかなかったのですか?なんて、ちょっと意地悪なツッコミを入れると…。「アホなんですよ、私たち…。ざっくりイメージして、あとはやりながら考える、はた迷惑なタイプなんですよね。詰めが甘い!詰めきれたことがないんです!」とマナミさん。…と大変な状況を焦りながらもこんなふうに笑う山下夫妻なのですが、実際に今回の取り組み自体が手探り状態なのも確かです。

というのも、やました農園が行っている草を入れての〝土ごと発酵〟は、農薬や化学肥料を使わずに、元気な野菜を育てる土作りの手法のひとつ。これは『大地といのちの会』の代表である吉田俊道さん(愛称『菌ちゃん先生』)から学んだ方法であり、家庭菜園や市民農園を中心に全国的に広まりはじめているものの、大規模に取り入れている農家の例を山下夫妻も知らないのです。「〝○○農法〟という手法には、こだわりはないのですが、土ごと発酵には大きな可能性があると思うんですよね。私たちの課題は、農薬や化学肥料を使わないことはもちろんだけど、たくさんのいちご農家がやりやすい栽培方法を探すことなんです。農業を生業としている農家が、思い切って無農薬に転換できるようにするためには、他の農家と機械を共有できたり、情報交換したり、作業もみんなで協力できるようなシステム作りが必要だと痛感しました。やってみないと分からないことは、ある!ただ、やました農園、それが多すぎる!」。

今回のお話で改めて彼らが挑んでいる壁は高いものであることが分かり、そして本人達の〝誤算〟も含めて、トラブル続きのやました農園。「さてさて、どうなることやら…」と、文章を締めくくろうとしたその瞬間、ケータイがプルルと勢い良く鳴り響きました。

「すみません!もっと大変なことに気づいちゃった!!!高畝にすると畝の幅がいつもより広くなって、畝の数が減るんだけど、そうすると植えられる株の数が相当減るなぁと…。うちはただでさえ株の間隔が広くて株の数が少ないのに、その上、畝が減って株の数も1/6も減るんです。具体的に計算してびっくり!少なすぎる〜、ど〜しよ〜、これは、これは、解決できそうにない!!」。 さてさて、本当にどうなることやら…。

○初夏の畑レポート!

問題大発生のやました農園ですが、畑では作業が順調に進んでいました!

菌の宝庫!

土やぼかし肥料、薫たんした籾殻などを入れたポットが数日後には菌の宝庫に!表面の白いものがその証拠です。

子株も元気!

2ヶ月前に地植えした親株がすくすくと成長して、たくさんの子株を付けていました。

苗差し中

ポットに苗差ししている様子。数ヶ月経つと根が付いて、親株から切り離します。

取材・撮影・文/ミキナオコ

【予告】7月のイチゴ(15)の日は…?!やました農園の〝カミさん〟による『やました農園日記 vol.3』をアップ予定!

只今、梅雨本番!雨の日はなかなか作業ができないなか、農家の人は何をしているの?畑は大丈夫なの?そんな雨の過ごし方をレポートいただきます!
*変更となる場合があります。


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