コトバナ

これからの福岡はもっとおもしろい! 暮らしをワクワクさせる種探し 〜前編〜

VOL.012 「これからの福岡はもっとおもしろい! 暮らしをワクワクさせる種探し」

2015.06.03(水)

あたらしいライフスタイルを実践し、魅力溢れる地域づくりにはげむ方々をお迎えし開催中のトークイベント「コトバナ」も、半年のひと区切り。今回は、これまで盛り上げてくださったモデレーターのお三方をゲストに迎え、トークの内容を振り返りながら、暮らしをワクワクさせるテーマについて、ざっくばらんに話し合いました。打ち合わせなしの即興セッション、どうぞお楽しみください。

モデレーター 白石洋一
「コトバナ」ディレクター。1977年生まれ。福岡市中央区出身。久留米大学卒業後、セールスプロモーションの制作会社にて、広告代理店のパートナーとして各種企業の企画運営業務を行う。2011年よりダイスプロジェクトに所属。イベント現場経験と好奇心を生かした、セールスプロモーション領域の企画運営を担当している。
ゲスト 山内泰
「自分たちの求めるものを自分たちでつくる」文化的な社会を目指して、コミュニティデザインや文化事業に取り組むNPO法人ドネルモの代表理事。
ゲスト 三迫太郎
1980年北九州生まれ。アート・デザイン・暮らしに関わるデザインの仕事と平行して、ひとりWebマガジン「taromagazine」、「prefab」の運営など、街と人を繋ぐメディアの在り方について試行錯誤中。
三好剛平
LOVE FMで営業・企画、Web「天神サイト」、イベントなどを担当。「10zine」への運営参加のほか、フリーペーパー「シティリビング」での連載「DVD耽溺ガイド」(2011~)、不定期のDJ活動など、映画・音楽・アートの分野で活動中。

変化する時代の、変化する働き方

白石 今回は、コトバナが始まって半年を迎える、節目の回です。これまでの11回で、さまざまなジャンルの方々に、示唆に富んだ話をしていただきました。人が集えるカフェであり、書店という知の集積地でもあるSolid & Liquidさんで、このようなイベントを半年間続けてこられた事をとても嬉しく思っています。そして、本日のゲストは、これまでモデレーターを務めていただいたお三方! 僕の中でのスタートリオでもあります、山内さん、三好さん、三迫さんです。皆さん、あらためて自己紹介からお願いします!

山内さん(以下、山内) こんばんは。ドネルモは、人と社会の間に新しい関係を見つけ出すことで、「あったらいいな」をかたちにしていくNPO法人で、現在は2030年代に向けての準備が活動のテーマとなっています。といっても、わかりにくいと思うので、具体例を出して説明しますね。

白石 はい、お願いします。

山内 これから日本の社会は超高齢化に向かって突き進んでいきます。2025年には団塊世代が後期高齢者に、2035年には子どもの少ない団塊ジュニアが高齢者になります。社会全体の4割が一人暮らし、3割が結婚しないと言われていて。いきなりなにを話し始めたんだって思いますよね(笑)

三好 でもこうやって数字を聞くと、事態は深刻なんですね…。

山内 そうなんですよ! こういう社会が到来したら、当然個々人が結びついて助け合っていく必要がありますよね?

白石 確かに。でもどうやって?

山内 そこなんですよ。今までしたことない人たちが、突然できるようになるわけがない。だから、人と人とがどう助け合っていったらいいのか、いまから模索していく必要があるんです。ドネルモでは、さまざまな場づくりやプログラムづくり、ワークショップを通じて、社会の担い手を育成し、社会が必要としていることを形にしていこうとしています。


九州内4か所で実施された、「超高齢化する「これから」を考えるワークショップ」プロジェクト。「住まい」「働き方」「オタクライフバランス」「メンタルヘルス」などのテーマについて検証した。レポートはダウンロード可能

白石 ありがとうございました。続いて、三好さんお願いします!

三好さん(以下、三好) 多言語ラジオ局『LOVE FM』の三好です。僕はラジオ放送そのものの仕事は割と少なくて、営業企画やウェブ「天神サイト」、イベントなどを担当しています。

白石 プライベートも本業と同じくらい精力的に活動されてますよね。

三好 そうなんです。熱量があり余ってまして(笑)ブックオカに関わったり、シティリビングのフリーペーパーでDVDレビューをしたりと、アートやサブカルの周辺をうろうろしながら活動しています。

三迫 一緒に「10zine」というzineのイベントも開催してますよね。

三好 そうそう。あれは楽しい集まりですね。


福岡天神のファッション・グルメ・イベント等を扱う総合情報サイト。天神のトレンドを知りたいなら、ココをチェック! 三好さん入魂の記事も読める

白石 本当に幅広いですよねぇ。活動の共通点はあるんですか?

三好 あえて言うなら、自分の働きかけによって、他人の主体性や当事者意識をくすぐり、「その気にさせたい」ということでしょうか。面白く作り、伝えること。それを繋いで出会わせ、広げていくこと。このフローを、さまざまなフィールドで延々と繰り返している感じです。

白石 なるほど。いつも忙しそうですが、どこに行けば会えるんですか?

三好 あらヤダ、会いたいなんて嬉しい(笑)。主任を務めるはかた伝統工芸館には、週に一度はいます。暑苦しいぐらい熱く解説しますんで(笑)

白石 皆さんぜひ会いにいってみてください。では、三迫さんお願いします。

三迫さん(以下、三迫) フリーランスのデザイナーをしています、三迫です。お二人のように組織に所属しているわけではないので、どんな仕事をしているかを少し話しますね。

白石 お願いします。

三迫 もともとはWebやグラフィックのデザインが専門で印刷物などのデザインをしていますが、最近は仕事の領域が少し変わってきました。ちょっと図で説明してもいいですか?

白石 どうぞ。

三迫 全体の業務フローを見ると、まずリサーチをしてそれを編集し、企画化する。その後に、一般の人に思われているいわゆる“デザイン”という、形を整えてアウトプットする作業があるんですね。さらに、それを公開し、運営していく。運営を続けながら、新しいリサーチと企画を立ち上げていく。このサイクルのあらゆる場所に関わる機会が増えてきました。最近は、イベントの企画や観光リサーチなど、デザインしない仕事も増えています。

山内 そういうスタイルで仕事をするデザイナーの方が、最近増えてきていますよね。

三迫 そうかもしれないですね。自分で意識したつもりはないんですが、周りの流れに乗っている感じです。


「いわゆる“デザイン”」の前行程と後行程を含む全サイクルに関わることが増えてきたという三迫さん。4月から福岡デザイン専門学校の講師も務め、次世代の育成を担っている

白石 ちなみに今日のそのかわいいTシャツも、三迫さんデザインなんですよね?

三迫 そうです。コトバナでもお話させていただいた、写真屋さんALBUSで販売予定です!

白石 この夏のTシャツは、これでキマリですね!(笑)

山内 そう、さっき言い忘れたんですけど、三好さんはドネルモの理事なんですよ。三迫さんはドネルモのホームページができた時に最初に褒めていただいたり、トークイベントに参加して頂いたりと、お二人にはいろいろとお世話になってます。

白石 みなさん、気心の知れた間柄なんですね。

これからの時代の生産と消費のあり方

白石 ご自分が関わった回の中で、特に印象的だったものはありますか?

山内 どの回も印象に残っていますよ。例えば、「コーヒーから考えるこれからのライフスタイル」では、ONIBUS COFFEE坂尾さんを招き、東京で新しいサードウェーブコーヒーシーンを作ろうとしているお話でした。福岡は10年以上前からサードウェーブコーヒー店がたくさんあり、坂尾さんは戦々恐々として来たらしいんですが、実際にはスタバもすごく多いことに驚いたとおっしゃっていて。

白石 福岡は、HONEY COFFEEやmanu coffee、REC COFFEEなど、バリスタチャンピオンシップで日本一となったような人たちの店が多くある一方で、スタバもどんどん増えていますね。

山内 坂尾さんが留学していたオーストラリアは、サードウェーブコーヒーの台頭でスタバが撤退を余儀なくされたんですよ。

三好 撤退? どういうことですか?

山内 市民の消費に対する意識が高く、スタバよりも独立系のコーヒー店にお金を落としていくそうです。

三好 先進的ですね。

山内 それで、坂尾さんたちも東京でそれを広めよう、つまりコーヒー単体ではなくコーヒーを通じたライフスタイルを広めようとしているんですが、福岡のコーヒー店では、あまりライフスタイルという話は出なかったと。この東京と福岡の違いは何なのかは、トーク後も考えるべき課題として残りました。

三迫 うーん、興味深いですね。

白石 これからの時代の生産と消費のあり方を考えるというのは、このトークイベント全体を貫くテーマのひとつでもありました。

山内 「愉快な物語から見えてくる、これからの『福祉のしごと』」では、障害がある人たちの暮らしを良くしていく時に、従来の寄付だけでなく、彼らの能力を生かした商品を作り、物を買うことを通じて支援ができる仕組みを作っている。これも、エシカル消費(環境や社会に配慮した製品やサービスを自ら選んで消費すること。エシカルとは、倫理的・道徳的の意)の一種といえます。


日々のてまひまブランドで販売している人気商品「糸島生まれの彩りパスタ」。福祉施設「MUKA」で全て自然素材の元手作りされる

三好 私が担当した「食から始めるart de vivre(アール・ドゥ・ヴィーヴル)」の井口さんは、料理のおもてなしやパーティーの楽しみ方など、料理を通じた美を日常に持ち込むという提案でしたし、「“あるもの編集”でみえてくるローカル観光再発見」の西村さんは、気心の知れた友人に福岡を案内するような、マニアックで私的なイチオシが満載の本を自分で作っていて。

白石 おふたりともパワフルでしたね。

三好 ええ、自分たちの生活に足りないものは、自分たちの手で作ってしまおうという気概を感じました。

私の一冊

三好:
冨田 恵一「ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法」

ドナルド・フェイゲンという人が82年に残したポップスの金字塔アルバム「ナイトフライ」を、実証的な態度で徹底分析し、音楽の魔法を解き明かしていく本です。そして、この本に触発された細馬宏通さんが、「うたのしくみ」というweb連載で更に細かく掘り下げています。非の打ち所のない傑作として知られるこのアルバムを、独自の視点で光を当ててマニアックに掘り下げ、面白がっていく姿勢に感服しますね。

三迫:
椿 昇、多田 智美、原田 祐馬「小豆島にみる日本の未来のつくり方」

瀬戸内国際芸術祭というアートプロジェクトのドキュメントです。これまで、地方の芸術祭はその地方の風土や環境や産物を生かした観光的な要素が強いものでした。ここでは、「観光から関係へ」というキーワードを打ち出し、アート作品を見たり生み出すだけでなく、人と人との関係性をどうやって作り維持していくかを、考えています。今興味のあるテーマだったこともあり、興味深く読みました。

山内:
ジョルジュ・バタイユ「エロティシズム」

今日のテーマに繋げるには、ちょっと無理矢理な感も否めませんが、Solid & Liquidで見つけたので(笑)。山口百恵の「美・サイレント」という曲に、「あなたの○○が好き」という歌詞がありますね。もしベッドの中でこうささやかれたとしたら、この◯◯には何が入るのか。それは、例えば性器の名称かもしれない。このような、おおっぴらにできない社会的なタブーを召還することによって、二人は燃え上がるような奇跡を起こす。つまり、どんなに密室の関係性においても、人と人との間には必ず社会が関係してくるということを、20世紀のフランスの思想家バタイユが指摘しています。プライベートに思えることでも必ず何らかの形で社会と関わり、社会に支えられている。その糸口を見つけ出す想像力が、これからますます重要になってくるのではないでしょうか。

コトバナのトークイベント情報はこちら

POPULARITY 人気の記事

PAGE TOP