2015.05.13(水)
新しいライフスタイルや面白いコトの実践を通して、いまの時代をいきいきと生きる魅力的な方々を招いたトークイベント「コトバナ」。今回のテーマは、「ベッドひとつで世界とつながる 暮らしと旅の新たな関係」です。従来の旅行や国際交流のあり方を変える、話題のサービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」について、またAirbnbサプライ・スペシャリストとして活躍する加藤美帆さんの魅力的なライフスタイルについて迫った、あっという間の2時間となりました。
- 「まちとひとの未来の発明」をテーマに、多様な切り口で商品やサービスを翻訳、再編集するフリーランスディレクター。東京でNPO支援のベンチャー企業を経て、2011年より福岡で独立。「Future Studio 大名+」の代表を務める。
- 東京生まれ。中高時代をニューヨークの田舎で過ごし、帰国後は獣医師として勤務。その後サンフランシスコでITベンチャー企業に勤務。自然と街のバランスがとれた中で、人が自由に生き、発想し、繋がり、新しいものが生まれる環境に感動し、日本で一番サンフランシスコらしい場所に住みたいと福岡県糸島市に夫婦で移住。今はAirbnbのサプライ•スペシャリストとして、福岡のairbnbコミュニティを盛り上げるべく活動中。
暮らすように旅をしよう
下野さん(以下、下野) さて本日は、従来の旅のスタイルを一変させる注目の新サービス「Airbnb」がテーマです。まず、会場の皆さんにAirbnbの認知度を聞いてみましょう。Airbnbのサービスを知っている人、手を挙げてもらえますか?
(8割程度手が挙がる)
下野 ゲストとして利用したことがある人は?
(1割程度)
注目度の高いサービスとあって、来場者の認知度も高い様子。「ゲスト経験がある人がこんなに多いのは、全国でも珍しいですね」と加藤さん
下野 ありがとうございます。加藤さん、よろしくお願いします。
加藤さん(以下、加藤) 皆さんはじめまして。Airbnb Japanサプライ・スペシャリストの加藤美帆と申します。今日はよろしくお願いします。
下野 ではさっそくですが、はじめに、Airbnbの紹介をしていただけますか?
加藤 はい。Airbnbとは、地元に遊びに来てほしいと思っている人と、地元を味わう旅をしたい人をマッチングするサービスです。ホストとして空いている部屋をインターネット上に登録し宿として提供したり、ゲストとしてそこに滞在することもできます。物件のことは、リスティングと呼びます。2013年に日本語サイトがオープンし、2014年には日本法人を設立。現在私はその日本法人で、福岡・沖縄でairbnbの認知を広め、コミュニティを作る仕事をしています。
下野 元々、どのように始まったサービスなんですか?
加藤 Airbnbは、2007年にサンフランシスコで立ち上がりました。創業メンバーの家のリビングにエアベッドを置き、朝食を提供してゲストを泊めたことがきっかけです。
下野 なぜサンフランシスコだったのでしょう?
加藤 サンフランシスコは福岡のようにコンパクトにまとまった住みやすい街なんです。福岡にすごく雰囲気も似ているんですよ。ただ、例えば大きなコンベンションが開かれる際は、世界中から人が集まるので宿がいつも不足するんです。
下野 なるほど。
加藤 それで、創業メンバーたちは「滞在先がみつからなかった人たちのために部屋の一室を貸してみよう」と考え、告知のサイトを作ったらすぐに連絡が来て、とても喜ばれました。ここには大きな需要があると気づいたんです。
下野 すぐに軌道に乗ったんですか?
加藤 いや、初めのうちは「知らない人に自分の家を解放するなんて、受け入れられるわけがない」と言われたぐらいで。でも、サンフランシスコという街が持つ、新しいサービスへの興味や人と人とが繋がりやすい自由な雰囲気が後押ししてか、次第に受け入れられて、いまでは累計ゲスト数約2500万人、泊まれる国は190カ国にまで広がっています。2014年のワールドカップでブラジルに行った約60万人のうち、約12万人がAirbnbを利用したというデータもあるんですよ。
下野 それは驚きですね! サービスが広がったポイントはどこにあるんでしょうか?
加藤 これまで泊まることなど考えられなかった、世界中の面白い場所に泊まれることが注目を集めました。例えば現在では、泊まれるお城は4000戸、灯台は500件、ツリーハウスは2800戸、ヨットは9000隻もあります。
下野 そんなに!? ヨットに泊まれるなんて、ワクワクしますね!
加藤 姪浜港にも泊まれるボートがあるんです。Airbnbが選んだオススメリスティングがHPに載っていますので、それを眺めているだけでも楽しいですよ。
見知らぬ人がいなくなれば、世界はもっと身近になる
下野 Airbnbの魅力は、地元で暮らすホストの人と出会えたり、街の生活を身近に感じられたりする点もあげられますね。
加藤 そうなんです。ガイドブックには載っていないローカルな場所や情報に触れて、観光スポットを巡る旅とは違った、街の魅力を感じることができます。
下野 自分の関心領域に近いホストと出会えれば、満足度の高い旅ができそうですね。
加藤 そうそう。だからこそ、滞在先を探す時には、ぜひホストのプロフィールをよく読んでほしいと思います。私たちは「One Less Stranger」という言葉で、「見知らぬ人(Stranger)がいなくなれば、この世界がもっと身近になるはず。」というメッセージを伝えています。
下野 旅行者と滞在先の単なるマッチングではない、付加価値ですね。
加藤 ホストとゲストとして出会い、意気投合して一緒にビジネスを始めた人もいますよ。
下野 へえ! 加藤さんも初めはいちユーザーだったんですか?
加藤 ええ。カリフォルニア大学に留学した時にAirbnbを利用したんですが、その時の体験が忘れられなくて。年代も近いメンバーが集まっていたので、フランクにいろんな話を語り合ったり、クラフトビールを飲ませてもらったり。それからはどこに行くにもAirbnbを利用していました。
下野 なるほど。僕はまだ利用したことはないんですが、今度ぜひ利用したいと思っているんです。
加藤 ええ、ぜひ! 今回のタイトルにもありますが、まさに「ベッドひとつで世界とつながる」ことができるのが、Airbnbの魅力です。思わぬ出会いがあることもありますし、自宅に居ながら刺激的な体験がいくつもできる可能性があるんです。
下野 面白いですね。海外に行かなくても国際交流ができるという、かつてないサービスだから、これだけ注目を集めているのでしょうね。
私の一冊
パウロ・コエーリョ「アルケミスト-夢を旅した少年」
何度も読み返している、私のバイブルです。かつての私は、正しい人や偉い人が考える”正解”を勉強して、その”正解”に自分をなぞらえないといけないと思っていました。でもこの本を読んで、「”正解”は外に探しにいくものではない」「幸せは、汗水垂らして頑張って手に入れるものではなく、いまこの瞬間に感じるもの」と思うようになりました。自分の心の声を聞く方位磁針のような、大切な本です。
Maho & Naho「EARTH GYPSY(あーす・じぷしー)」
アメリカ滞在時に出会った、双子姉妹が書いた本です。自分の心の声に従って、わくわくするものに向かって突き進んでいく彼女たちの姿勢から、大きな刺激を受けました。例えばカフェでお茶を頼む時、お金も時間も関係なく、心が一番”ルンッ”と躍るものを選ぶこと。それを1週間続けるだけでも、生活は変わっていくのではないでしょうか。
グレッグ・マキューン「エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする」
エッセンシャルとは本質的なという意味で、日々のタスクの中から、いかにエッセンスだけを抜き出して、100%の成果を出していくかを簡潔にまとめた本です。自分のやりたいことをやっていくために、本当に必要なことは何か、それを毎日の生活の中にどうやって落とし込んでいくかの参考になりました。時間を有効に使いたいビジネスマンにも、おすすめです。