渋み少なくまろやか。海外産とはひと味違う和紅茶

[出品者情報]

天の製茶園
熊本県水俣市

[商品]

  • 紅茶(加工品)

渋み少なくまろやか。海外産とはひと味違う和紅茶

「お茶といえば緑茶」が日本では一般的だが、かつては日本でも紅茶が盛んに栽培されていたのをご存知だろうか。明治初期、インドから持ち込まれたその栽培法が全国に広まり、明治期から戦後にかけては重要な輸出品でもあった紅茶。昭和46年の紅茶の輸入自由化以降、生産量は減少したものの、実は今、国産の紅茶は、栽培・消費量ともに、少しずつ広まりつつある。

理由は、日本の食文化にあった和紅茶ならではの風味。天の製茶園の紅茶もまた、海外産に比べると苦味・渋みが少なく、まろやかな味わいが特徴だ。羊羹など和菓子の甘みをより引き立ててくれるやさしい風味は、和食との相性も抜群。これまで飲んできた紅茶とはまた違った魅力だ。

天の製茶園では、すべて無農薬・無化学肥料で育てられたお茶の葉を使用。摘んだ茶葉は、傷がつかないよう新鮮なうちに工場へと運び、葉をしおれさせて成分変化を起こす「萎凋(いちょう)」、揉むことで茶葉の組織を破壊して空気に触れさせ、酸化発酵を促す「揉捻(じゅうねん)」、温度・湿度を管理しながら木箱のなかで静置する「発酵」、炉で加熱することで発酵を止めて、最後は乾燥させれば完成だ。製造工程は時間との戦い。揉みすぎや、発酵が進みすぎると風味が大きく変わってしまうため、温度や湿度の変化に加えて茶葉の“香り”を手掛かりに丁寧に仕上げていく。

紅茶から、緑茶、ウーロン茶、ほうじ茶、季節による限定品まで、多様な茶葉をつくる天の製茶園。その中から今回は、口当たりがよく和菓子によく合うスタンダードな「天の紅茶」をはじめ、香りとコク、渋みが強い「天の上紅茶」、小花の香りにしっかりとした深みと味わいが楽しめる「サヤマカオリ」など、4種の紅茶が登場予定だ。海外産とはひと味もふた味も違う和紅茶のなかから、自分好みの紅茶を見つける楽しさをぜひ味わってほしい。

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天の製茶園を代表する「天の紅茶」をはじめとする4種の茶葉。それぞれに異なる味わいがあり、テイスティングしてみるのもおすすめ。手軽に淹れられるティーバッグも人気の商品だ。

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摘み取った茶葉の大きさが揃っていることは、加工過程にバラツキが出にくいため良いお茶ができる。天の製茶園では、一部の商品に手摘みの茶葉を使用。「芯1本、葉2枚」に統一し、手際よく摘んでいく。

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加工過程の中でも、特に「発酵」の微妙な塩梅は香りで見極める。

「紅茶らしくない」のが持ち味

「渋みが少ないので、麦茶みたいにゴクゴク飲めるのが、うちの紅茶の良さ」と話すのは、天野浩さん。天の製茶園の3代目だ。戦後、食糧増産・農地再生を目的とした国策で、浩さんの祖父が開拓団として入植したのが茶園の始まり。2代目である父・茂さんが無農薬に転向した。その理由は2つ。病気の家族の健康のため。そして農薬を1人で撒くのが大変だからだった。

当時は緑茶だけの生産だったが、新茶と比べると二番茶、番茶は売れ行きが芳しくなく、番茶を活かす道を模索してたどり着いたのが紅茶だった。作ってみて分かったのは、「新茶よりも番茶のほうが紅茶に合う」ということ。以来、新茶は緑茶に、番茶は紅茶・ほうじ茶・ウーロン茶と、葉の生育段階に応じて作る茶葉を分けている。

海外の紅茶と比べるとあっさりとして飲みやすいことから、「紅茶らしくない」と加工を始めた当初は伸び悩むこともあったが、試行錯誤を繰り返しながら徐々に評判を呼び、今や老舗和菓子店「とらや」の紅茶羊羹にも使用されるほど。その味わいはクリアで角がなくまろやか、ゆえに自己主張しない。けれどしっかりと紅茶の味が堪能できる。“紅茶らしからぬ”紅茶だが、これが天の製茶園の紅茶として定着しつつある。

「海外の紅茶と同じものを作ろうとしても、風土も茶の木も違うから難しい。むしろ日本の地で育ったお茶だからこそ、日本の食文化にも合うし、舌にも合う」と、常に和紅茶の可能性を探り続ける。

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天野浩さんは、より身近なところでお茶を広めるために取り組む天の製茶園の3代目。

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加工場の扉には、水俣を象徴する「海と山」が「魚と鳥」となって交わるように描かれていた。

先人から100年つながり続けてきたお茶

熊本県の最南端に位置する水俣市からさらに山の奥に入った石飛(いしとび)と呼ばれる集落に、天の製茶園の茶畑はある。標高600メートルの高原地帯だ。山間部ゆえの寒暖差はお茶の旨味を生み出し、どこまでも広がるなだらかな斜面は風通しを良くし、お茶の大敵である霜をつきにくくしてくれる。お茶づくりに最適な地形だ。

この地に茶の木の種が根を張ったのは100年近くも前。以来絶えることなく育てられてきた茶の木を、浩さんは感謝の意を込めて「宝物のよう」と言う。品種改良を施された交配種を挿し木で育てて茶の木を増やすのが一般的な日本の茶園に比べると、「種から育っているから根の張り方も強いし、寿命も長い」。

土地ごとに根ざす茶の木に気づいてもらおうと、野生の茶の木を見つけては、木の手入れや茶葉の作り方、茶の淹れ方を教えるために、全国各地を回るという浩さん。その根底にあるのは、何よりも「日常の中でもっとお茶に親しんでほしい」という思いだ。そのために、国内の教育機関から研修生を受け入れて勉強会を開くなど、お茶の世界をより外に向けて発信し続ける。5年前からは、WWOOF(※)を通して海外からの農業体験希望者を受け入れる取り組みも始めた。

「お茶を身近なものにしたい」というシンプルな命題とともにあるのは、「今の水俣を見てほしい」という強い思い。「教科書で知る「水俣」も大切だけど、時間とともに変わり続ける水俣や、そこに暮らす人々がいるから」。かつて食による苦難を経験した水俣の地だからこそ、食によってその恵みを取り戻すことで、水俣の豊かな食を世界中に広めたい。お茶を飛び越え、水俣の食に対する浩さんの熱い眼差しは、どこまでもまっすぐだ。

※WWOOF(World-Wide Opportunities on Organic Farms)・・・有機農場で農業体験を希望する「ウーファー」が、世界中に登録されている「ホスト」を訪れ、金銭を介さずに「労働力」と「食事・ベッド」を交換する仕組み。

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茶の木の下に無数にころがる「こぼれ種」を手にとって見せてくれた。種からは、しっかりと根っこと新芽が生えていた。

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両手のひらに乗るほどの量を茶葉にすると、ちょうど家族全員が飲めるくらいの紅茶が出来上がる。その加工の工程を手製でレクチャーしてくれた。浩さんは、こうした取り組みを全国で行っている。

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