インタビュー

松山さん・山内さんと考える、「ゲーム×地域」の話(1)

松山さん、山内さんと考える「ゲーム×地域」の話2014.01.31(fri) up

新しいアソビの見つけ方 #00 はじめに

〈ゲーム×地域〉というテーマを掲げて開催された今回の対談では、娯楽としてのゲームを広義で捉え直し、「今、ゲームは地域社会とどんな形で関わることができるのか?」についてお話が展開されました。
多数のゲームイベントにゲストとして登場している松山さんですが、今回の対談ではこれまでとは違う新たな一面を覗くことができたのではないでしょうか。会場ではグッズ販売や、マスコットキャラクター「サイバーコネクトツーちゃん」も登場し、盛り上がりを見せた夜となりました。

松山 どうも~、今日は宜しくお願いします。
山内 宜しくお願いします。
松山 今日のお客さん、平均年齢高いっ! 普段私が講演するときは、ゲーム好きの子ども達が多いですから(笑)。
山内 ははは。あるいは共通の趣味を持った同士の集まり。
松山 そうそう。ゲーム好き、アニメ好き、漫画好きが集まってのトークが多いですね。
山内 今回、〈地域〉をテーマにしてトークイベントを開催するということで、世界に配信する人気ゲーム制作会社の代表である松山さんと、どんな展開ができるのか、僕自身もまだ見えていない面がありますが、すごく楽しみです。
松山 私は住まいも博多、会社も博多なので、本当は福岡でもっともっと活躍していきたいという思いは以前からあったんです。でも、トークイベントやゲーム関連のイベントは、どうしても東京が中心になってしまうんですね。そしたら案の定、地元のファンの方から「お前、東京ばっかやなあ。少しは地元で何かやれよ」と言われることが増えてきて。確かにその通りだなあと。このようなテーマというのも初めてですし、福岡でトークイベントを開くこと自体もなかなかありませんので。
山内 地元であることに加えて、今日は松山さんが〈地域〉についてどんなことを考えているのかということに興味を持って来られた方が多いと思います。そのあたりのお話もお聞きしたいですね。
松山 はい。ちょっと脱線が多くなるかもしれませんが、よろしくお願いします!それにしてもみなさん、見るからに職業も年齢もバラバラですね(笑)。

#01 子どもは新しい遊びを生み出す天才

山内 松山さんはやっぱりゲーム少年だったんですか?
松山 もうすぐ43歳になるんですが(2013年11月現在)、中学生のときに初めてファミコンというものが世の中に出たんです。一番ハマっていたのは「マリオブラザーズ」。スーパーじゃなくって初期のやつで、1Pと2Pで殴り合ってました(※)。「マリオ」が、我が家に初めてファミコンがやってきたソフトです。新しいソフトをたくさん買ってもらえる家じゃなかったので、2年間くらいは兄弟で「マリオ」ばっかりやっていました。ほかは友だちから借りてばっかり。「ドラクエ」とか「ゼビウス」まで借りちゃいましたから(笑)。※1Pと2Pで殺し合う:「マリオブラザーズ」は、1画面で2人同時にプレイできる画期的なゲームだったため、プレイヤー同士で競い合う遊び方が流行った。
山内 ロープレ(※)まで(笑)!※ ロープレ:ロール・プレイング・ゲーム(RPG)の略。プレイヤーが登場人物に扮して進めていくゲーム。
松山 「ドラクエ」は、持っている友だちがクリアして、もう飽きた! という頃に借りていたので、世の中より1年くらい遅れて遊んでたんですけどね。
山内 「マリオ」で、マリオ VS ルイージで殺し合うというのは、本来の遊び方じゃないですよね(笑)。
松山 そうなんですよ。
山内 本当はモンスターを倒していくというのが目的なのに、2人同時プレイになると殴り合うという。
松山 そうそう、お互いワナにはめるんですよね。
山内 ゲームクリエイターが想定していなかった別の遊び方を独自に編み出すパターン(笑)。
松山 2年も同じゲームやってるとそうなりますよね(笑)。

山内 飽きてしまったゲームとか、いわゆる”クソゲー”と言われるようなゲームでも、始めたからにはとにかく楽しむ。そうして色んな遊び方を自分なりに開発していく中で、裏ワザが生まれていく。僕もそういうゲーム世代だったので、その独特な〈遊び方〉や感覚はすごく分かります。
松山 プレイヤーはすごいですよ。
延べ数千人の規模でソフトを作っているのに、毎回想定していない遊びを発明されちゃうんですから。
山内 なるほど〜。それは制作者泣かせですね(笑)
松山 ソフトの開発から発売までに色んなプロセスがありますが、QA(Quality Assurance=品質保証)という作業を後半の数ヶ月にわたって延々とやるんですね。目的は、ソフトのクオリティを保証するために不具合を全て取り除くことです。開発時点で想定している遊び方はもちろん、想定していないバグを含めて、数百人で繰り返しプレイして確かめる。その上で「よし、完璧!」とようやく世の中に出せるんです。ところが発売されると、我々が思ってもみなかった新しい遊びや裏ワザが生まれていくんですね。いくら制作側が数千人で作っていようが、遊ぶ人は、さらに多人数。何十万人もいますから当然ですよね。弊社で開発を担当している「「NARUTO-ナルト- ナルティメット」シリーズ」は、世界で1,200万人の人たちが遊んでいますが、熱狂的なファンの手にかかれば、我々の苦労も関係なく、ゲームを丸裸にされてしまいます。
山内 ははは。それはいい話ですね。〈遊び方〉がある程度決められていても、新たな〈遊び方〉が生まれる、それに松山さんも驚いているという状況。
松山 はい、驚いたり困ったりしています(笑)。

山内 ゲームでなくても、特に子どもはどんなことでも遊びに変えてしまいますよね。
退屈でもなんとか楽しもうとして、色んなことを考える。そこにヒントが詰まっているように思いますね。
松山 子どものときって、自分たちで〈遊び方〉を生み出していたと思うんですよ。我々の世代はビデオゲームなんかありませんでしたから、ボールとバットを持って公園に集合して「さて今日は何する?」というところから始まっていた。
山内 大人は考えつかないような、というか、大人から怒られるような〈遊び方〉もいっぱいしていましたよね(笑)。
松山 しましたね~。スーパーのゴミ箱からコーラの瓶を持って帰って来て、公園の滑り台の下にボーリングのピンみたいに並べて上から岩石転がす。どんだけ割れるかっていうのをやっていましたよ〜。たぶんその後怒られたんでしょうね(笑)。
山内 はははは。
松山 今の子どもは分かりませんが、色んな〈遊び方〉が一時的に生まれたり、自分たちの先輩から代々受け継がれたりしていましたよね。ボールひとつで無限の〈遊び方〉を考えますからね。同じ遊びでも、時代の経過とともにルールがちょっとずつ変わったりすることもあるでしょう?ゲームって新しいルールが追加されながら進化していく。このことを我々は“ゲームデザイン”と呼んでいます。
山内 なるほど。実際にゲーム制作の現場でも、そういった考え方が反映されているのですね。ちなみに、最近の子ってどうなのでしょうね? 〈遊び方〉って変わってきているのかな。

松山 確かに、「最近何やって遊んでるの?」って聞いても「マリオ」って(笑)。「じゃあDSがなかったら何やってるの?」って聞くと「塾」(笑)。でも学校にはゲーム機を持って行けないから、休み時間に何してるのかは聞いてみたいですね。
山内 松山さんがそこに関心を持っているというのはすごく面白いですね。
だってゲームを作っている立場の方ではないですか。
松山 ええ。ゲームができない環境の中でも、子どもたちは自分たちでより楽しい〈遊び方〉を生み出せるわけですからね。今の子どもたちがどんな風に“遊び”を捉えているのか、考えているのかを聞いてみたいですね。
山内 その発想が、新しいゲームにつながるかもしれませんね。
松山 そうなんですよ、実際に子どものときにやっていた遊びが発想の元になって生まれたゲームもあるんですよ。
山内 へぇ〜!
松山 例えば仮面ライダーごっこをやると、子どもはみんなライダーになりたい。誰だって怪人はいやなんですね。だから、登場人物を全員仮面ライダーにしてしまったのが「仮面ライダー龍騎」です。
ライダー同士が競い合って、最後の生き残りを決めるという。
山内 なるほど、その根っこには、子どもの“遊び”がヒントになっているということですね。
松山 そうなんです。今の子どもたちを今の親が観察して、新しい世代の仮面ライダーが生み出されているっていうのはすごく面白い。大人たちは子どもたちが困っていることを常に解決してあげたいって思っているから、みんな主役がやりたいんだったら13人のライダーで競い合ったらいいじゃないか、という(笑)。素晴らしい発想だと思います。
山内 「龍騎」をその観点で語る人を初めて見ました(笑)。
山内 ははは。

会場に設けられたサーバーコネクトツー商品の物販スペースでは、会社のマスコットキャラクター「サイバーコネクトツーちゃん」のキーホルダーや、もともとは社内用の手帳を一般向けにした特製手帳も。

もくじ

対談者プロフィール

博多にある元気なゲーム制作会社サイバーコネクトツーの代表兼ディレクター。開発の傍らで毎月、60冊の漫画誌を読んでいる大の漫画好き。アニメや映画、もちろんゲームも漫画も幅広く、こよなく愛している。
非常に“濃く”“熱い”人間である。
代表作は「.hack」シリーズ、「NARUTO−ナルト− ナルティメット」シリーズ、「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」、「アスラズ ラース」など。アクションと映像演出に特別なこだわりを持つ作品づくりが特徴。

最近では「ギルティドラゴン 罪竜と八つの呪い」や「死神メサイア」「フルボッコヒーローズ」などスマートフォンゲームの開発も手掛ける。 また、ゲーム制作会社だからこそ発揮できる能力を最大限に生かし、福岡県の「消防・防災・安全」のイメージキャラクター「まもるくん」のキャラクター・世界観デザインを制作。

九州大学芸術工学府博士課程修了(芸術工学博士)。
ドネルモは、「もっとこうだったらいいな」と思うつながりを作ろうとする人たちを応援する団体で、現在は「コミュニティで創る高齢社会のデザイン」など、これからの地域モデルを開発する仕事を中心に活動中。
ゲームは小学1年のファミコンから。
最初のカセットはレッキングクルー。
一番やり込んだのはウィザードリィ(ファミコン版)とジンギスカン(光栄)。


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