インタビュー

仕事を続けながら、島暮らしを楽しむ 人気急上昇の五島市で聞いた移住のリアル

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「都会でバリバリ働きたい」「自然の中でのんびり過ごしたい」
相反する生き方のようで、実は両立できることをご存知でしょうか?
その二つが繋がるのは、「離島移住」という暮らし。
平日は現在の拠点で働きながら、オフには美しい海や緑に囲まれてリフレッシュ。リモート中心の仕事が可能なら、完全な島暮らしも叶います。
今までのワークスタイルを崩さずに、自然の中でゆったりと生きることは、それほど難しいことではなくなったのです。 

さらに嬉しいことに、移住を受け入れる離島サイドでも多種多様なサポートが用意されています。中でも特に熱心なのが長崎県五島市。なんと3年連続で年間200名もの人々を迎え入れてきた実績を持つ“移住の聖地”なんですって。
そこで、今回は五島市の取り組みやリアルな移住者の声を集めてみました。
これからの人生に、“離島で暮らす”という選択肢を加えてみませんか?

さまざまな角度で関係人口拡大を図る
五島市役所のアプローチとは?

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穴バーで五島市のプレゼン中の松野尾さん。愛あふれる熱弁のおかげで、会場にも五島市ファンが急増したよう

最初にお話を伺ったのは、移住促進の音頭をとる五島市地域協働課・松野尾祐二さん。この日は五島産のクエが主役の穴バー「五島のクエを味わう会」に参加して、島の魅力をプレゼン。会場を大いに沸かせていました。五島市では、こうしたイベントをきっかけにワーケーションや移住を考えて欲しいという狙いがあるそうです。

 「移住はもちろんですが、その手前の入り口作りも私たちの目標です。今日の穴バーも、移住未満、観光以上の『関係人口』の枠に引き上げるための新しい取り組みの一つ。五島といえば、なんと言っても食の多様性が魅力ですよね。福岡に住む情報感度が高い方に向けて、五島の可能性を知ってほしいと思います」

 なるほど。最初は観光で訪れて、そこから福岡市と五島市を行ったり来たりの二拠点居住を呼びかける。段階を踏むことで移住のハードルはグッと下がります。

 「五島は飛行機を使えば40分くらいで福岡に移動できるんです。意外にアクセスがいいでしょう。島には病院もあるし、地域で子どもを育てるという風潮が残っているので育児もしやすい。それに、“国境の島”である五島は、国防・国益上の理由から無人化を防ぐため国や自治体の支援が特に手厚いんです」

 さらに、誰もが顔見知りになれる島ならではの温もりは、ワーケーションにも生かされています。

「五島市では“心のかようワーケーション”というテーマを掲げ、地元の人たちとの交流にも力を入れています。ITなど離島に不足している分野で移住した人に協力してもらう。地元の人と移住者がコラボすることで地元の産業も活発になるし、お互い刺激を受けることができるのではないでしょうか」

 実際に東京からリモートワーク体験の参加者を募ったところ、交通費など全て自己負担にも関わらず、50名枠に80名の応募者が殺到したそうです。しかも参加者の中で6名が五島で事業をスタートさせたとか。

「都会に比べてまだ企業が参入していないサービスはたくさんあります。そういう意味では、離島には余白がたくさんあるんです」

心を動かしたのは現地での交流
意外と起伏に富んだ島暮らし

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アクセスも良く、人情も厚い。さらに移住者サポートも充実している。五島での暮らしはいいこと尽くしのようですが、実際に移住された方はどんな感想を抱いているのでしょうか?
福岡県から移住した白石さんと宮崎県から移住した玉井さんにお話をお聞きしました。

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福岡で働く同僚と参加していた白石さん(右)。この日は飛行機で福岡へ

福岡市内の会社で地域活性化や企業案件などを手がけていた白石さんが家族で五島へ移住をしたのは2年前のこと。今では福岡での仕事を続けながら、五島市の皆さんと一緒に地元の課題解決に取り組んでいるそうです。

白石さん
「最初は移住なんて全く考えていなかったんです。たまたま五島に観光に行ったら一日目で友達ができたり、子どもと散歩していたら現地の人がアイスをくれたり、そこで知り合った人と一緒に飲んだり。出会う人はみんなフレンドリーで居心地が良くて。それからやりとりを続け、夏に1ヶ月ほど滞在したんです。その時に空き家がたまたま見つかって、住んでみようかなと。
今はリモートで仕事を続けながら、月に2回ほど福岡市に行くという生活です。五島は家賃が安いので飛行機の交通費をプラスしても、以前の福岡市のマンションと同じくらい。移動時間も短いし、島では子育てがのびのびできるのがいいですね。それに情報がうるさくない。オフの日は完全にシャットダウンできます。あとは、肉魚野菜と食材がなんでも美味しいので、料理が好きな方にとっても天国だと思います。毎日何を作ろうかと考えるのがすごく楽しいです」

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穴バーのゲストとして登場した鯛福の永田さん(左)とYouTube撮影で同行した同じく鯛福の玉井さん(右)

宮崎県日向市で介護福祉士として働いていた玉井さん。同僚が五島市内に介護施設を開設する際に誘われて現地へ。鮮魚の仲買をおこなう鯛福では、介護の知識とは別に身につけた動画の撮影やYouTubeのチャンネル制作などのスキルが大いに役立っているそうです。

玉井さん
「水産業を営む鯛福さんのYouTube動画を制作していたら、従業員としてスカウトされまして、今は水産業&動画制作に携わっています。島では移住者同士の交流も多くて心強いですし、いろんな場所からいろんな習慣を持った人と出会える。そのつながりで仕事が生まれることもよくあるので、移住前に比べると仕事の幅が広がった気がします。意外に刺激が多い毎日で、退屈しないですね」

生まれ育った島と外に出てからの視点
Uターン経験者が移住の架け橋に

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穴バーの参加者のために、とれたてのスマガツオを持って登場した永田さん。五島ならではの食べ方も披露してくれました

自治体では若い世代に対してUターンも推奨しています。五島の特産品である新鮮な魚介を扱う「鯛福」の3代目・永田さんもその1人。
大学卒業後は別の場所で就職を決めていましたが、お母様の看病で帰省して家業を手伝っているうちに水産業の楽しさ、地元の魅力に気が付いたそうです。
市外で暮らしていた経験があるからこそ、移住を決めた人へのサポートについても親身に考えているのだとか。 

永田さん
「市役所の皆さんが移住促進に取り組んでいるのに、その動きに協力できる地元企業はまだまだ少ないのが課題です。実際に移住者の皆さんと交流するのは僕らですから、こちらの受け皿がしっかりできていればもっと暮らしやすいと思うんですよ。水産業も高齢化が進んでいるので、将来のために若い人を招きたいと思っていますが、業界の中だけで頑張るのは限界があります。他の産業の方や五島市全体で取り組むべきではないでしょうか。
例えば、観光で島に関心を持ってもらうために、釣りを楽しんだ後に釣った魚を実際に競りにかけるとか。僕たちだからこそできる体験型観光なんかも提案したいんです。業界や地域が盛り上がれば、いずれは自分にも返ってくるわけですから、地元にも大事なことだと思うんですよね。五島の楽しさを感じて、その中で移住した人がいて、さらにその中に水産業に従事する人がいてくれたら大成功。そう思って活動を続けています」

永田さんは、YouTubeで魚市場の様子をレポートしたり、料理動画を配信したりと、現代のツールを活用して五島の情報発信を続けています

 ▽たいふくTV
https://www.youtube.com/channel/UClKa0P1XX7ML1eJ5g56HgCw

官民一体となった移住促進の取り組みが少しずつ効果を表し、昨年ついに転入者が転出者を上回ったという五島市。離島でこの結果はかなりのビッグニュースです。これも、地元の方と移住の先輩、さまざまな動きがリンクした成果なのかもしれません。 

松野尾さん
「永田さんの“業界を超えて移住促進に取り組もう”という言葉を聞いて、とても嬉しく思いました。五島市ではワーケーションを体験できる施設など民間の環境整備も進んでいます。移住といえば、一昔前はリタイア後にのんびり畑を耕しながら…という生活でしたが、今は若い世代が仕事を変えずに働く。そして空いた時間に魚釣りやマリンスポーツを楽しむ。そんな暮らしを支えて、五島市の将来につなげたいと考えています」 

仕事が一息ついたら、外で青い海を望みながらボーッとする。
福江島の名所・鬼岳もオフシーズンなら貸切状態。子どもとピクニックに出て、頂上でのんびりお弁当を食べる。
…などなど、大人になってからの“島暮らし”には、こんな贅沢な時間が用意されています。

少しでも心の琴線に触れたならば、次の休日はぜひ五島市へ。
いつもより広く見える青空に、理想の生活を描いてみてはいかがでしょうか。

移住のご相談は、こちらの流れを参考に。
五島市ウェブサイト「移住までの流れ」
https://www.city.goto.nagasaki.jp/iju/130/20210309111120.html#STEP1

(取材:編集部、文:ライター/大内理加、写真:カメラマン/勝村祐紀)


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