アナバナチャンネル

大牟田市の德永農園さんとじゃがいも収穫レポート。德永さんオススメの食べ方やお気に入りのホクホク系「長崎黄金」もご紹介します。

毎回、異なるテーマ素材を設定し、その素材をつくる生産者さんをゲストに招き、料理家さんが提案するお料理を味わいながら交流する、1DAYレストラン『穴バー』は、感染症拡大防止のため、ただいまお休みしています。
お休み中も、生産者さんや料理家さんのことは気になるし、お話を聞きたい欲求がどんどん膨れてきています。
そんな編集部の欲求を満たすべく、生産者さんや料理家さんをはじめ、地域を盛り上げる活動をしている人などを訪ね、お話を聞き、そのようすをライブ配信する『アナバナチャンネル』をはじめました。
配信のようすは動画とレポートでアーカイブしていきたいと思います。お楽しみください!

アナバナチャンネル初回は、德永農園さんとじゃがいも収穫

アナバナスタッフ(以下、アナバナ):アナバナチャンネル記念すべき1回目のゲストは、福岡県大牟田市で農業を営んでいる德永農園の德永さんです。今日はよろしくお願いします。

德永さん(以下、德永):よろしくお願いします!

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ゲストは、大牟田で農業を営む「德永農園」德永紘一さん。農薬・化学肥料不使用で、年間30〜40種類の野菜を栽培しています

アナバナ:実は5月の「穴バー」では、徳永さんのじゃがいもを使ってじゃがいもバーを開店する予定でした。じゃがいもにはいろんな種類があると思いますが、德永さんはどんな品種を育てていますか?

德永:「穴バー」では4種類のじゃがいもを紹介する予定でしたが、今年はサプライズでもう2種類、全部で6種類を育てていました。ちょっとここで紹介していきたいと思います。

まずオーソドックスな「メークイン」です。スーパーでもよく見かける品種で、一年間見る機会が多いと思います。どちらかというとしっとりとしているので、煮物やカレーにもぴったりのお芋です。

次に、これがメークインよりも丸い形の「キタアカリ」という品種です。男爵いもと同じでホクホク系のお芋で、別名“栗芋”と呼ばれています。粉質を生かした料理に使われることが多くて、粉ふきいもなどにおすすめです。

そして、「メークイン」より小ぶりでずんぐりしていて、「キタアカリ」より長くて平たいタイプが「ながさき黄金(こがね)」です。切ると中は綺麗なオレンジに近い黄色をしているお芋で、ここ数年で栽培が始められた新しい品種です。こちらも粉質なので粉ふきいもとかポテトサラダにもバッチリです。

アナバナ:ちなみに「ながさき黄金」は、昨年10月に開催したイベント『皿の上の九州』でも徳永農園さんに出品してもらったんですよね。

徳永:はい、これが本当に美味しいんですよ。これのおじいちゃんおばあちゃんの代にあたるのが「インカのめざめ」という品種です。「インカのめざめ」は東北の寒い地域で作られる芋なのですが、九州の暖かい場所でも美味しくできるように品種改良を重ねて作られたのが「ながさき黄金」です。

次も珍しくて、皮が赤く中はクリーム色。「アイノアカ」という品種です。長崎県の愛野という場所で作られたお芋で、私はロマンティックにアイラブの「愛」と紹介しています(笑)。形が大きく、しっとりとした上品な味をしていて、煮崩れしづらいので煮物とか肉じゃがやおでんにもおすすめです。

この4種類の他に、紫色の芋もあります。これも最近の品種で「紫月(しづき)」という九州ではまだ珍しい北海道の品種です。それと、「キタアカリ」に似ている「さんじゅう丸」という珍しい品種も育てています。じゃがいもは品種によって質感とか味が変わってくるので、そこを生かした食べ方を楽しむことができます。

アナバナ:今日は取材も兼ねて、じゃがいもの収穫のお手伝いもしようと思っています。どんな風に収穫するのか教えてもらえますか?

徳永:はい、(畑の方へ移動して)ここのウネはすべて「キタアカリ」です。葉っぱが枯れてもう何もない状態ですが、残っている茎がある辺りを掘るとお芋が出てきます。クワを使って掘ることが多いのですが、この畑は土がサラサラなので手で掘ることができます。

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アナバナ:実はこの畑、元々お茶畑だったんですよね。さっきじゃがいもの畑からお茶の小さな芽が出てきていました。
あ、(じゃがいもが)出てきた出てきた!

德永:今回植え付けしたのは2月末頃で、大体じゃがいもは植え付けから3ヶ月~4ヶ月くらいで収穫です。2月に植えて5月に収穫する春植えと、9月に植えて12月に収穫する秋植えの年に2回育てることができます。

アナバナ:同じ畑に植えていいのでしょうか?

德永:同じ畑に植えることもできますが、じゃがいもは続けて同じ畑で作ると、害虫だったり、病気が出やすいので、ちょっとずらして何年かまわしながら育てています。

アナバナ:ちなみに德永さんは、お家が農業をしていたわけではないんですよね。農業を始めたのはいつからですか?

德永:德永農園を始めて丸9年目になります。開園したのは8年前ですが、その前に2年ほど大牟田のみかん農園でお世話になっていて、そこでみかんと野菜の栽培を行っていました。

アナバナ:独立されて8年間で色々あったと思うのですが、特に忘れられないことはありますか?

德永:今はじゃがいもをちゃんと育てられるようになりましたが、何キロも植えたのにひとつも芽が出ない時もあって、耕して、準備して、植え付けてという作業も全部無駄になってしまいました。春じゃがを作る時は、半分に切ったじゃがいもを種芋として植え付けます。切った断面に灰をまぶすんですけど、その時は灰をまぶす理由がわかってなかったんです。粉っぽいものなら何でもいいだろうと米ぬかを使ったのですが、それがだめだったみたいで…。

灰をつける理由は断面を乾燥させるためというのもありますが、菌が入り込まないように殺菌するためなんです。米ぬかだと土に分解されちゃうんですよね。それを初めて知ってからは灰をまぶすようにしましたが、そうするとちゃんとうまく育つんです。昔の人がやっていたことは紐解いていくと科学的にもちゃんと意味があることなんだなと。まぁ、そこからはうまく作れるようなったので良い勉強だったと思っています。そんなトライ&エラーをずっと繰り返しながらの8年です。

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乾燥を促すことと殺菌のため、切った断面に灰をつけた種いも

德永:あとは、この8年間で異常気象じゃなかった年がないですね。毎年異常なんですよ(笑)。一年として同じことはありません。それでも育つものは育つんですよね。そこを諦めるのではなく乗りこなしていくような感覚は身につきましたし、一喜一憂することなく「しょうがないね、じゃあ次はどうしようか」と考えるようになりました。

アナバナ:その場その場で対応する、日々そういうのの繰り返しという感じなんですね。ちなみに今年の出来はどうですか?

德永:農家さんによってそれぞれですが、うちの春じゃがに関しては良かったです。大きなものが取れてすごく豊作です。

アナバナ:美味しいじゃがいもを作る秘訣って何でしょう?

德永:土と植える時期だと思います。一週間ずれるだけで大きく育ちきらなかったりするので、ちゃんとぴったりの時期に植えること。じゃがいも自体は草取りをずっとする必要はないし、あまり手がかかりません。特に今回育てた春じゃがはまだ草が少ない時期なので手間が少ないです。種芋を1つ植えて、うまくいけば3ヶ月で20個くらい収穫できます。

アナバナ:ところで、德永さんが一番好きなじゃがいもの品種は何ですか?

德永:「長崎黄金」が好きです。ホクホク系の芋なのでレンジで加熱して、皮をむいてバターで食べると最高です。素揚げしたニンニクを合わせて、居酒屋風にガーリックバターにするのもいいですね。

アナバナ:視聴している方からコメントが来ています。「小学校の頃に理科の授業にじゃがいもを半分に切って植え付けしましたが、灰はつけていなかったな」ということですが…。

德永:必ず灰をつけないといけないわけでないですが、成功率は高くなります。人でいうと傷口を“かさぶた”のようにしてしまえばいいので、切って数日置いて表面を乾かせばそのまま植えても大丈夫です。でもそれは春じゃがの話で、秋じゃがを植える9月は気温が高いので、そのまま植えると菌が入りやすく、かなりの確率で腐ってしまいます。なので、秋芋は小さめのお芋を種芋として切らずにそのまま植えますが、ホームセンターとか苗屋さんで手に入れた方がいいと思います。

アナバナ:普通に売っているじゃがいもではだめですか?

德永:じゃがいもは疫病(ウィルス)による病気が多いので、ウィルスがついていないと証明されたものを植えた方が確実です。でないと、畑のじゃがいもが全滅してしまうこともあるので。

アナバナ:「話を聞いていたら食べたくなります」というコメントが来ています。
なんと今日収穫したじゃがいもは販売します!4種類の品種を500gずつをセットにして2kg2800円(限定20セット・送料込み)で用意しますので、名前、住所、電話番号、セット数を書いてメール(imo@tokunaga-nouen.com)で送ってくださいね。なんだか通販番組みたいになってきました(笑)。

今から德永さんと一緒に20メートルくらいある畝(ウネ)を3つ掘っていきたいと思います。今日はみなさんありがとうございました!そして、德永さんありがとうございました。

次のライブ配信は、SNSでお知らせしますのでお楽しみに〜!

ライブ配信を終えて

じゃがいもの種類と性質に合う料理や德永さんオススメの食べ方など、じゃがいも料理を味わうヒントや、じゃがいもを植える時断面に灰をつける理由、といった栽培のコツなど、幅広くお話ししていただきました。
普段何気なく食べているじゃがいものことを、もっと知りたくなりました。
いつの日か開店する「じゃがいもバー」では、じゃがいものことをもっと深掘りしたいと思います。

次回のアナバナチャンネルは、德永さんのじゃがいもファンのお一人、「四季食彩しみず」の清水良生さんに和風ポテサラの作り方を教わります。

ライブ配信動画は、YouTubeのアーカイブでもご覧いただけます。
https://youtu.be/88QsV3NhicY

(取材:編集部、文:ライター/板谷由美)


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