穴バー

【特別企画 穴バー70回記念】“九州の生産者とつながる一夜かぎりのレストラン” 一番楽しんできた私たちが語る「穴バーのこれまでとこれから…」

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毎月第3金曜日の夜、博多区千代の片隅にある編集部がレストランと化します。
ここで味わえるのは、九州の生産者と料理家によるここだけの料理と食材にまつわるお酒、そして、好奇心旺盛なゲストの深く人間味溢れるお話と楽しい会話。「穴バー」はそんな一夜限りのポップアップレストランです。

その始まりは2013年。私たちアナバナ編集部と親しい仲間のような存在の方々と、こぢんまりと開いたことがきっかけでした。仕事を通じて知り合いが知り合いを呼び、そのうち“ちゃんとした”イベントとして開催することに。
始めは九州という大きなテーマで開店していましたが、地域の背景や暮らしを切り取る時に、必ず関わりのある「食」にテーマを絞ります。より広くわかりやすく、伝えていこうという方向転換期もありました。
おかげさまで毎回、参加者が満員御礼の50名に到達することも増え、さまざまな九州の食を“再編集”するバーとして70回を超えることができました。
日頃のご愛顧に感謝いたしまして、今回は番外編をお届け!
編集長曽我、ディレクター都甲、デザイナーの佐藤、司会を務める天野、が今までを振り返り、今後の活動への思いを語り合います。
インタビュアはいつも取材を担当してくださっているライターの大内さんです。

(ここから大内さん進行)

…なんて、堅苦しい事は置いといて、
思い出だらけの“穴トーーーーク”のはじまりはじまり!

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左から、曽我、都甲、天野、佐藤。今までのタイトルが並ぶデータとチラシのファイルを前に、思い出話8割、脱線2割で話は進む。

「月に一回、ここで何かやってる」が大事
迷い迷ってたどりついたテーマは“九州の食”

穴バーが開催されるようになったのは、九州のワクワクを掘りおこす活動型ウェブマガジン「アナバナ」が発足した後のこと。

曽我
「ウェブサイトはあくまで情報をストックする場所だから、人が集まる場所を作りたいって思ってたんよね。編集部のキッチンを使って、せっかくならお酒を飲みながらゆるやかに人が集まれる場所にしようと。会社がある千代町って、県庁とか大きな企業があるから昼の人通りはあるけど、中心部からも少し距離があるイメージがあるから、あんまり関係者以外立ち寄らない場所というか。博多部の下町の面影の残っててちょっと不思議なまちなんですよね。穴場的な。だからいきおいで“穴バー”って付けたら面白いかなと。ネーミングはそんなものです…」
天野
「第一回目は、占いバーでしたっけ?」
曽我
「そうそう。吉田ゆかリーヌっていう謎の占い師がいまして。お酒を飲みながら占いをやるという。けっこう人が来てくれました。そこから、自転車バーとか毛筆バーとか、いま気になってるテーマを提案し合って、手探りで進めてたんよね。一つだけ決めていたことは、毎月同じ日に開店するってこと。AKBの“週末会いに行けるアイドル”を参考にね。毎月同じ日になんかやってるという。テーマを「食」に絞ったのは2015年やったね」
都甲
「私はそのあたりから参加してるっちゃんね。まだ料理はスタッフが作ってたな。そういえば包丁を握ったことないみたいな人を呼んで、皆でその人の料理を食べるとか、なんかすごいテーマもあった(笑)」
曽我
「そうそう。あれは編集部外の人をゲストに迎えて一緒に開催した初めての回やね。なんか一緒にやりたいっても企画を持ち込む人が出てきたことと、わかりやすく、広く発信するために、テーマを絞ろうとなって。“食”に絞りました。食を知るとその土地の背景とか暮らしを深く知ることにもつながるし、アナバナで出会った食材が、どんな人の手によって 作られているのかという背景を知りたかったし。自分たちが好きで、応援したいと思う生産者のことをテーマにして、それが共有できたら楽しいやん、というのが根っこにはあるなあ」
都甲
「2015年からは演出も意識し始めたよね。『角打ちバー』の時は、近所の酒屋で使ってたカウンターをもらってきて角打ちを再現したり。『博多の街を掘り起こしバー』も山笠の男衆を招いて解説してもらって…」
曽我
「そう、そのあたりから今の形に近い状態になりましたね。毎回テーマごとに会場演出含めて企画を練って、事前の取材をしっかりしてアーカイブを丁寧にストックしていくという流れ。ただ、どうしても食とか地域をテーマにすると、“真面目”、“意識高い”印象になりがちなので、普段そういうの意識していない人が一人でも気軽に来れるような、楽しみながら知ってもらう感じにしたいので、タイトルをちょっとふざけたり、デザインもそこを意識した表現にして」
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第一回目の占いバー。まるでコントのようなゆかリーヌの占い師ファッションですが、結構当たると評判に。

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「山笠バー」では、千代流の若衆がイチから解説。福岡在住でも知らないことが多かったので、参加者も興味津々。

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角打ちセットを再現した「角打ちバー」。角打ちに興味はあるけど入りにくいという女子にとって、ハシゴ酒のきっかけになったようです。

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角打ちバーでは、福岡で人気の「とどろき酒店」の協力もあり、おいしい日本酒を囲みながら和やかに進みました。

生産者だけじゃない!
苦労の数だけ“ANB”仲間は増えにけり

2013に始まった穴バーは紆余曲折を経て、生産者と料理家を招いて料理とお酒を振る舞う現在の形に落ち着いてきたのが2016年ごろ。その間にデザインを手がける佐藤や司会を務める天野が参戦し、現在の“チーム穴バー”が出来上がりました。
まずは毎月の穴バーはどのように企画、運営されているのか、その流れを紹介しましょう。

曽我
「穴バーは基本的に『つくる』『ひらく』『のこす』の3つの構成でできてます。最初に私たちでテーマに沿った生産者や料理家を選定して、企画を『つくる』から始まるよね」
都甲
「で、選定後は生産者さんのところへ出向いて取材やね。これも今では『生産の現場を見たい』って、料理家も取材についてきてくださるようになったもんね。それから料理家と一緒にメニューを詰める」
曽我
「そうですね。で、次の『ひらく』は当日お客さまと生産者、料理家が交わる場の運営。開催後はアーカイブとして取材や当日の内容を通した気づきと発見をウェブサイトに『のこす』。参加できなかった人も、読むだけでその食材について知ってもらえるように」
都甲
「開催日当日のトークや体験、演出まで、食材をどう切り取るかは毎回悩む〜。やっぱりご自身の言葉を聞きたいよね。私たちが取材で見つけたポイントを生産者さん本人にもお伝えして、毎回トーク内容まで打ち合わせしてね」
佐藤
「あと、食材の新しい価値に興味を持ってもらうためには、どう編集するかも大事ですよね。例えば、根菜人の森光さんを招いての『かぶバー』の時とか」
天野
「森光さんの野菜を使ってイベントしていた山口さんに料理をお願いしましたよね」
佐藤
「そう。山口さんはスイーツプランナーとして活動されてるから、“見た目はスイーツっぽいかぶ料理”をテーマにして作ってもらって。あの時、食材だけじゃなく、料理家さんを掘り起こすのも大事な視点だって気づきました」
都甲
「確かに、料理家さんが入ることで素材の魅力をもっと引き出すことができるよね。生産者にとっても新鮮な視点だし、お客さんにもより深い情報がお届けできるから大成功だったと思う」
佐藤
「私たち4人というより、生産者や料理家の方々と一緒にやっていくスタンスになってきましたよね。お互いに組んでみることで新たなアイデアが飛び出して、それを実践できるのが“穴バー”。そこにお客さんが絡んで、九州の面白い人たちがどんどん繋がっていく場にしたいですね」
天野
「当日手伝ってくださるスタッフさんも大事な仲間ですね!嬉しい繋がりが増えましたよね」
都甲
「そう!最初は人手が足りなくて、常連さんやSNSなんかで興味を持ってくれた人が運営スタッフとして来てくれるようになったんよね。その人達は今でも来てくれてる 」
天野
「私も最初はドリンクスタッフから入ったのですが、みなさんいつも楽しそうですもんね。『たけのこバー』の時とか、スタッフさんが生産者さんを紹介してくださったり、今では欠かせない存在です」
都甲
「そうだね。一緒に生産者のところに遊びに行ったり、イベントに呼んでもらったり」
天野
「『ネギバー』の時は開催前にスタッフさんと一緒にネギの種植えのお手伝いに行ったんですよ。穴バー当日だけの関わりじゃなくて、一緒になって楽しんでくれてたのが嬉しかったな」
佐藤
「いつの間にかアルバイトとスタッフの枠を超えて、私たちアナバナ編集部員の一員になってくれている感じですよね」
曽我
「回を重ねるごとに着実に仲間が増えてるんだよね。会いに行けるアイドルAKB方式が効いたのかも。いやANB48か…」
天野
「曽我さん、なぜかAKB方式好きですよね(笑)」
佐藤
「48どころか、今や70回になっちゃってますけどね」
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スタッフに紹介してもらった「たけのこバー」の取材。紹介してくれたスタッフが同席して、より深いネタを引っ張り出してくれました。

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編集部とスタッフでねぎの種植えに挑戦。手を動かしながらワイワイおしゃべりする中で自然と身に付いたネギ知識は、後日開催された「ネギバー」の打ち合わせや参加者への説明にも役立ちました。

視点を変えたら新たな目的も見えてきた
どうなる?71回目からの穴バー

生産者、料理家、スタッフ、そして参加者と多くの仲間たちがつながった穴バー。ご縁が増えるたびに、編集部スタッフもどんどん刺激を受けているのです。
「ああ、あのテーマもやりたいし、この食材も気になる!」なんて、今までとは違った意味で、悩ましい日々を過ごしています。

佐藤
「実は、私、穴バーに関わるまで食に興味なかったんです。実家は杵築でお茶農家をやってるのに。でも穴バーに50回も関わってみると 、九州で食を真剣に向き合っている人たちってかっこいいし、そんな人が作る食材はやっぱりおいしい!70回目の穴バーは 、自分の父が作った杵築茶なんですけど、父の仕事を改めて見つめ直すことができた気がします。穴バーを通して父も刺激を受けたみたい。これからのお茶作りに生かせるといいな」
天野
「お父さんと一緒に仕事するってすごいですよね。私も佐藤さんと似てて、最初は食に関心があるわけではなかったんです。でも取材でいろんな食の面白さを知って、それを伝えたいと思うようになりました」
佐藤
「天野さんちも農業されてますよね?」
天野
「そうです!私も実家がお米と野菜を作っているのですが、穴バーをやり始めてから実家に帰って田植えを手伝うようになったんです。いつか自分の地元と一緒に穴バーで何かやりたいな」
曽我
「自分のルーツにもヒントがありそう」
天野
「そうですね。それに福岡という土地にも。私は、県外の人に『福岡に行くんだけど、地元の人しか知らないスポットがある?』と聞かれた時に『穴バーがあるよ』って言ってもらえる存在にしたいんです。穴バーに行ったら九州の個性的な生産者に会えて、めっちゃ美味しい料理が味わえる。観光名所よりもっとローカルで面白い場所って思ってもらいたい」
都甲
「月一回しか開催されないレアさが喜ばれるかも」
曽我
「穴バーは『一夜限りのポップアップレストラン』と最近呼んでいるんだけど、ありがたいことにそれを面白がって集まってくれる人が増えたね。ただおいしいものを食べたいって人もいるし、ここで会う人が面白いから来るって人も多い。お一人で来る方がここで気の合う仲間と出会ったとか、毎回楽しみにしていますって声をかけてくださる方もいて、続けてよかったって思います」
都甲
「生産者や料理家の皆さんと、開催後も交流できる間柄になったのは本当に嬉しい。穴バーを実施した後に、あらためてもっとたくさんの人に知ってほしいと思うようになったもん」
曽我
「2016年から始まった『皿の上の九州』という企画はまさに穴バーで得た感動から生まれたもんね。バイヤーとのマッチングで新たな仕事やプロジェクトに発展させようという試み。まだまだ模索中だけど、人の輪がさらに広がっていく手応えは感じますね」

そう、今はまだ旅の途中。

毎回、どんな発見をお伝えしようかと知恵を絞り、様々な準備に追われている編集部一同ですが、一番側で抱くのは「やっぱり、穴バーは楽しか〜!」という思いなんです。
皆様と私たちの間で“食と人への関心”が尽きない限り、
穴バーはこれからも続きそうです。

九州が好きで、食べることが好き。
私たちと同じ匂いを感じたら、次の第3金曜日に千代町で待っとーよ。

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