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目指したのは作り手と小売店が九州で出会うためのプラットフォーム  九州発信の合同展示会『thought』の役割とこれから


ReTHINK FUKUOKA PROJECT レポートvol.41

アナバナではReTHINK FUKUOKA PROJECTの取材と発信をお手伝いしています。

これまで2回にわたり、アナバナでインタビューをさせていただいている九州発信の合同展示会『thought』。第5回目の開催を前に、ReTHINK FUKUOKA PROJECTによるトークイベントが行われました。
1回目インタビュー:https://anaba-na.com/4126.html
2回目インタビュー:https://anaba-na.com/6071.html

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ブランドを持つ作り手と、バイヤーが出会う合同展示会『thought』をご存知ですか? 一般的な展示会が東京や大阪で開催されるなか、今までにない「九州発信」の合同展示会を開催しようと、5年前にスタートした『thought』。初回から計4回を長崎県波佐見町で開催し、第1回目から1000人の来場者が集まったことでも注目されました。次回第5回目は初めての福岡、それも格式ある太宰府の歴史的建造物を会場に開催するということで、更なる話題を呼んでいます。3/16(木)から3日間の開催を前に、実行委員の林博之さん、植村浩二さん、南久二さん、田浦尚子さん4人が、「自分たちでつくる展示会のこれから」をテーマに語り合いました。

わずか5人の実行委員のメンバーそれぞれが自らのブランドやショップを持ちながらも、80を越える出展者を集め、開催されている『thought』。始まりのきっかけやこれからのお話はやはり気になるところ。トーク内容を一部抜粋してお送り致します。

 

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もっと価値観に近いお客さんと出会いたい

古賀 今日はテーマが「自分たちでつくる展示会のこれから」ということで、九州発信の合同展示会である『thought』の成り立ちをお話いただきたいと思います。まずは田浦さんから、お願いします。

田浦 「Runo Labo」の田浦と申します。私は洋服の生地を使ったファイルをつくっていて、一人で企画から製造・販売・卸をやっているブランドをしています。もともとはグラフィックデザイナーとして仕事をしていまして、その関係もありthoughtではポスターですとかDMとか、デザイン関係を担当させてもらっています。

 僕は「flower adjustment」という名前で、押し花の額装作品をつくっています。アパレルの仕事もやっていて、thoughtのメンバー植村くんとブランドを立ち上げています。thoughtは第1回目からの立ち上げ運営スタッフとして入っていて、ウェブサイトを制作したり、基本的な出展者さんとのやりとりをしたりしています。

植村 僕は福岡市の今泉で「PARQ(パーク)」というお店を運営しながら、福岡発信として3つのプロダクトブランドを展開してます。ひとつは風呂敷を縫い合わせて生まれたあずま袋というのを新しいデザインで作ったバッグ「AZUMA(アズマ)」。2つ目は南と2人で立ち上げたブランド「fit」で、主に企画デザインを南が担当して、僕が生産管理で営業をやってるって感じです。3つ目は、年に2回あるコレクションの「thinq(シンク)」というブランドをやらせていただいてます。

古賀 植村さんはthoughtの中でどういった役割をされていますか?

植村 僕はSNSでの情報発信を主にしています。

古賀 開催が近まるにつれて、これまでの写真や活動をFacebookに頻繁に公開していらっしゃいますよね。Facebookをされている方は、フォローしてみると過去の様子やいろんな発信がみれておもしろいんじゃないかなと思います。ではもう1人、林さんお願いします。

 林と申します。「代行営業」という、あんまり聞き慣れないかもしれないですけど、ブランドの営業活動を代行して小売店さんと契約をする仕事をしています。昨年末から、糸島で自分のお店「GOOD DAILY HUNT」もオープンしまして、その運営もしております。今日用事で来れなかった藤戸も含めて、実行委員はみんな自分のブランドを立ち上げて発信をしてますけど、僕に関しては基本的には代理店と呼ばれる立場なので、ちょっとみんなとは角度が違う形で卸の活動をしていますね。

古賀 みなさんありがとうございます。4人のみなさんがそれぞれにお仕事がありながら、『thought』という合同展示会を立ち上げて運営されているんですね。そもそも展示会っていうのはどういう頻度で開かれるんですか?

植村 展示会は年に2回ありまして、大きく春夏と秋冬ですね。大体2,3月と9,10月に開催されていて、9,10月の展示会はその翌年の春夏の商材が見られて、2,3月にあるのはその年の秋冬の商品が見られるという感じです。

古賀 なるほど。そこでの収穫はどういったものなんでしょう?

 結局は出てみないとわかんないってやつなんですけど、なぜここに出展したいかっていうと「お客さんと出会いたいから」ですよね。多分、1人の発信で自分の事務所で自分の展示会やりますって言って人を呼べるのが一番理想なんですけど、最初からその力を持つっていうのはなかなか大変なことで。たくさんのブランドがある中でいかに自分の存在を知ってもらうかと考えたときに、今であればSNSとかいろんな手段があるんでしょうけど、そのひとつが合同展示会なのかなと思います。

古賀 1ブランドでそれなりに知名度があるところは単体で展示会をするんだけれども、やっぱり単体でとか去年から始めたばかりのブランドでというときは、知名度がネックになるので合同展示会に出店するという形をとられるということですね。

林 そうです。最初は本当に展示会屋さんがやる展示会にみんな参加してたんですけど、そこから少しずつ派生してって。最近では「もうちょっと自分たちのベクトルに合う人たちと一緒に開催して、その価値観に近い小売店に来てもらえる展示会をしよう」という流れがあって。そうやって展示会文化自体も変わってきているというか、小規模の展示会が増えてるんじゃないかなって思いますね。

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「誰も来なくてもやろう」
目指したのは作り手と小売店が九州で出会うためのプラットフォーム

古賀 今年は初めて、太宰府での開催ですが、来場されるバイヤーさんの人数とかの目標はあるんですかね?

 まあ、あんまりこうしたいとかっていう高いハードルはないんですよ。そもそも僕らがthoughtを始めたのって、出展者と来場者含め誰も来なくても僕らだけでやろうっていうところから始まってるんです。そうじゃなかったら多分やってないと思うんですよね。そこに目標を立てすぎると基本びびっちゃうから。

古賀 なるほど。「thought」が始まったきっかけを伺えますか?

植村 メンバーの藤戸と飲んでるときに、「そろそろお前も展示会とかやってみたらどう」っていう誘いがあったのが一番のはじまりですね。僕自身のプロダクトの、一番最初の発表の場がthoughtだったんですよ。最初は自分のプロダクトがどれだけ人に評価いただけるかっていうのも含め全てがはてなだったんですけど。「fit」というプロダクトも南と一緒にやっていたり、林さんとの出会いもあったり、あれよあれよで進み始めたというか。

古賀 いよいよ展示会の実現も具体化してきたと?

植村 そうですね。

 多分そのときは藤戸くんと植村くんの飲みの中で完結したままで、まだ進んではなかったんですよ。 で、僕は僕で5年前に千葉県から福岡へ移住してきて、ぐるぐる九州を3周ぐらいまわって営業をしたときにほとほと疲れて。これだけじゃまずいなって思ったんです。それで藤戸くんと話してるときに、「そもそも九州で合同展示会とかやってないの?」っていう話を投げたら「いや〜それ俺もやりたいと思ってんすよね、植村とも話してて」みたいなところからちょっと話が進み始めるんですね。そのときに、もともと南も藤戸ブランドの中で働いてた時期もあったんで、そういう関係性もあって必然的にこの展示会の話が伝わり始めるって感じですかね。

古賀 最初は藤戸さんと植村さん、そこに林さんと南さんという感じで、4人で始められたんですね。

 そうですね。展示会って、やっぱり東京からの中央発信なんです。僕らは業界にいて、それなりにその流れを見てきてるだけに、「九州でやりたい」っていっても誰が来るんだろうって思いもあったんですよ。ただ、僕らが最初に目指したのは「全国の人来てください」ってことじゃなくて。作り手側と小売店側がもっと顔を付き合わせるということで、そこに集まったのが九州地区のディーラーだけだとしても何かが始まるのかなって。九州ひとつとってもかなり広いんで、僕らがそのすべての小売店さんと出会おうとすると、結構な労力がかかるからお互いに出会いづらいんですよね。

古賀 それを一カ所でプラットフォームをつくって集約しようというのが、合同展示会の考え方なんですね。そもそも、『thought』っていうキーワードはどういう意味でつくられたんですか?南さんが考えられたのですよね?

 はい。『thought』って「考えること」なんですけど、ウェブサイトでは「衣食住のあらゆる分野において、主に九州内で活動するブランドやクリエイターが中心となっておこなう合同展示会」と言っていて。「衣食住」を語呂合わせで、衣を”移動”の移”、食を”触れる”、で住を”充てる”っていう言葉に変えて、それを考える展示会というふうに考えています。移動するっていうのはバイヤーさんや一般の方が来ていただくということ、そして実際にものに触れて、バイヤーさんたちがそれを自分のお店に充ててもらうっていうのを考える会っていうことですね。

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九州にいながらブランドを発信する機会を、
これからもつくり続けたい

古賀 これまで開催されてきて、みなさんが課題だなって思うことはありますか?

植村 課題はいつでもあるんですけど、やっぱりお客さまがどう求めているかとか、福岡らしいものづくりとは何なのかとか、自分がつくりたいものはなんなのかっていうこと。いつ展示会にでても、いい課題が見つかりますね。thought自体については南が言ったように結局「考える」ことなんで、みんなが考えているものがまた1つの集合体になってどんどんおっきくなっていくものです。「thoughtで何をしたい」というよりも、個々が考えてものを生み出していくって言うことを続けていくことが大事なのかなと思います。

古賀 なるほど。田浦さんはご自身の商品の発表のしかたや売り方がわからず困っていたという状態から、thoughtをきっかけに価格付けや販売をスタートしたとうかがいました。開催を重ねていく様子をご覧になって、変わっていく実感はありますか?

田浦 そうですね。バイヤーさんとだけでなく、出展者同士でも話をしてお互いに取引先が増えたり、面白い取り組みができたりしています。他には例えば福岡内の人も、ものづくりをしてる人がこんなに近所にいるのを知らなかったっていう方がやっぱり多いので、そこがつながれて単純に楽しいっていうのはありますね。

古賀 これからの展望はいかがでしょう?

 長く続けたいっていう思いの共有はあるんですけど、この先のことは正直それぞれがやってるブランドの状況によっても変わるのかなって。実行委員として決めた展望っていうのは正直ないんですよ。合同展示会に出る意味がなくなってくれば、もしかしたら実行委員を抜けて単独でやりますっていう人もでてくるかもしれないですし。

古賀 ここから派生していくのもウェルカムということですね。

 はい。九州にいながらブランドを発信するっていうことに対して、それなりのいい機会がつくれたんじゃないかなって僕ら感じてるんで、そういう意味では続けてはいきたいと思っていますね。中央発信じゃなくもっと土地土地に合わせた文化があって、洋服屋さんの売れてるものも違う、提案してるものも違うみたいな感じで、地域の色を出せていけたほうがおもしろいんじゃないかなって思うんです。そのためにも九州の小売店のみなさんと九州中心のブランドの人たちの出会える場所として、僕らがこの場を継続していきたいっていう思いはやっぱりあるんで、そこは守り続けていけたらいいなと思います。

植村 僕は新作発表の場でもありますんでうずうずしてますし、今回は記念すべき福岡開催なんで、みなさんもぜひ楽しんできてもらえればと思っています。

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「九州発信の合同展示会をつくろう」と、5年間から思いを形にし続けているthought実行委員のみなさん。その開催のしくみや展望のお話は、展示会の規模が連想させる大規模なものや派手なものとは全く違い、目的の一貫したとてもシンプルなものでした。
来たる第5回目のthoughtは太宰府という格式ある場所、そしてその中でも普段は一般開放されていない古く美しい建物・文書館が会場ということで、展示会に合わせて建物やまちの魅力も楽しめそうです。当日はぜひそちらにも足を運ばれてみてくださいね。

[thought開催情報]
会場:太宰府天満宮敷地内 文書館 及び 旧東屋
住所:〒818-0117 福岡県太宰府市宰府 4 丁目 7 番 1 号
開催日時:
 ・EXHIBITION(バイヤー及び関係者を対象とした展示会)
 3.16 (thu) 10:00~18:00
 3.17 (fri) 10:00~18:00
 ・MARKET(出展メーカーによる一般向けの物販)
 3.18 (sat) 10:00~17:00

HP  http://www.thght.jp/
Instagram  https://www.instagram.com/thoughtkyushu/
Facebook https://www.facebook.com/thghtjp/

 

ReTHINK FUKUOKA PROJECTについて
コミュニケーションや働き方、ライフスタイルに大きな変化をもたらしている福岡。新しい産業やコミュニティ、文化が生まれるイノベーティブでエネルギッシュな街となっています。
そのチカラの根底には、この街に魅力を感じて、自らが発信源となっている企業や人がいます。
ReTHINK FUKUOKA PROJECTは、「ReTHINK FUKUOKA」をテーマに、まったく異なるジャンルで活躍する企業や人々が集い、有機的につながることで新しいこと・ものを生み出すプロジェクトです。


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