みやまの恵みと“ありがとう”をつめ込んで みやま高校生お弁当プロジェクト

コロナ後、初めての食物部活動は 地元の特産物を使ったお弁当づくり


福岡県みやま市で立ち上がった「みやま高校生お弁当プロジェクト」。アナバナではこの取り組みを追いかけていきます。

プロジェクトの詳細はこちら。今回は特集記事の第1弾です。

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プロジェクトを立ち上げたのは、みやま市と地域企業が運営する「みやまスマートエネルギー株式会社」。こちらは「電力の地産地消」をスローガンに再生可能エネルギー販売事業に取り組んでいます。自治体が公共エネルギーサービスに取り組むのは、なんと全国初。地域資源の新たな活用モデルとして、日本各地から注目を集めているそうですよ。
実は、今回のお弁当プロジェクトは、「みやまスマートエネルギー株式会社」が目指すもう一つの“地域循環”なのだとか。
電力会社×高校生 という異色の組み合わせがもたらす化学反応は、みやま市にどのような未来をもたらすのでしょうか。
まずは、「みやまスマートエネルギー株式会社」地域づくり推進部の高口さんにお話を聞いてみましょう。

 

ふるさとへの想いを胸に
人と人の交流を支える事業を

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そもそも電力会社である「みやまスマートエネルギー株式会社」が、なぜこうした取り組みを始めることになったのでしょうか?

高口さん 私たちが提唱する地域循環は、電力に限った話ではないんです。地域交流への貢献も当社の重要なテーマなんですよ。それも、私たちが主体となって行うのではなく、ノウハウや場所を提供しながら皆さんの活動を支えるサポート役として。地域のために動く“当事者”を増やすような事業にしたいんですよ。

アナバナ こうした事業は地元企業や社会人が対象なのでは?どうして山門高校の食物部と組むことになったのでしょう?

高口さん 当初は大人の方とワークショップを開催していたのですが、学生さんもちらほら参加いただいてたんですね。高校卒業後は進学や就職でみやま市を離れるかもしれない。でも、ふるさとのために何かしたいんだと。折しも山門高校のひとりの学生さんから『みやま市がすごくいい所なので、たくさんの人に知ってほしいし、せっかく地域にみんなが集まれるさくらテラスがあるので、地域の良さをアピールできることを何かしたいです。地域の良さというと道の駅みやまに代表される農産物だから、高校の食物部のみんなと一緒に何かできれば』とその声が今回プロジェクトのきっかけなんですよ。
そうしたら、うちも飲食業(さくらテラス)に携わっているので、そのつながりで何かできないかなと。早速、山門高校の先生にお話ししたら、体育部はいろんな大会があるけど、文化部は発表する機会が少ないという話もあり、そのような場を提供していただけるのは大変ありがたいと快く引き受けてくださったんです。ただ、コロナ禍ということもあって、テイクアウトできるお弁当にして今回は取り組みますが、高校生レストランとして定着させたいですね。

アナバナ 食物部員の皆さんが開発や調理、販売、会計管理まで担当するそうですね。

高口さん そうなんです。山門高校では原則アルバイトは禁止されていて、なかなか実社会の経験をできることが少ないことと、学業だけでは体験できないような取り組みにして、学生さんが入試や就職の時にでも胸を張って取り組んだことを言える事業にしたいんです。だから、アルバイトではできないようなところまで経験してもらえたらと。大人になって起業をしたいと思った時にも役に立つでしょうし、もしかしたら、みやま市に戻ってきてくれるかもしれないでしょう。少子高齢化への解決策にもつながるのではないかと。

アナバナ さまざまな期待を寄せていらっしゃるんですね。ちなみに、高口さんの高校時代はどんな学生さんだったんですか?

高口さん 私も趣味で料理を作っていたんですよ。それに今考えればですが、もっと早いうちにお金のことを学んでおきたかったなと。事業を行うのに何がいくらかかるのかなんて、授業では出なかったから。そんな思いもあって、今回は全てお願いすることにしました。

ワークショップの時の高校生の言葉、そして自身の思い出もこのプロジェクトにつながっているようです。プロジェクト発足後、時にはおいしいさくらテラスオリジナルのみかんケーキを差し入れながら、少しずつ学生さんとの距離を縮めてきたみやまスマートエネルギーのメンバー。
そのアンサーとも言える、食物部「おかず案プレゼン」の日を迎えました。

地域よりもっと身近な存在へ
感謝を込めて届けたいお弁当とは

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おかずプレゼンは、みやまの特産物を集めたコミュニティスペース「さくらテラス」で行われました。メンバーは、みやまスマートエネルギーの高口さんと野村さん、渡辺さん、料理担当の野田さん、そして山門高校食物部と顧問の川口先生です。 
用意されたプロジェクターにスライドが次々に映し出されます。この資料も発表内容も全て部員によるもの。
プレゼンの冒頭、部長の岡さんと副部長の松尾(あ)さん、松尾(か)さんからこんなご挨拶がありました。

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岡さん 食物部は、食べること、相手を大切に思いながら作ること、おもてなしの心と感謝の心を学ぶ部活動だと考えています。その学びと感謝を伝える取り組みとして、文化祭で在校生や地域の方と子どもたちに手作りのお菓子を提供できる場を楽しみにしていました。でも、私たちが入学した頃に新型コロナウイルスが拡大して、調理活動は全て中止となってしまったんです。そんな状況の中でこの取り組みが始まりました。今回のお弁当で、私たちの感謝の思い、みやま市の食材の美味しさ、作る楽しさをぜひ伝えたいと思います。

松尾(あ)さん 最初は“やっと本格的な部活動ができる”と喜んでいましたが、 次第に“みやま市の特産品でなんば作ればいいと?“と不安でいっぱいになりました。お母さんに聞いたり、ネットや本で調べたり、それぞれ考えましたが、作りたい料理と作れるもの、お弁当向きのおかずなど、迷ってなかなかメニューが決まりませんでした。その間にも、テストや講座がありますし。各自が家で作ったメニューを写真に撮って先生に送って検討を重ねました。

松尾(か)さん 作っているうちに、セロリやみかんなど、みやま市の特産品を使いたいとか、おいしいお弁当をたくさんの人に届けたいという思いが強くなりました。メニュー案は、さくらテラスの野田さんにも助言をいただきながら20種類考えて、3つの盛り合わせにしました。今から紹介します。

食物部の皆さんの真摯な思いに、この時点でもう目頭が熱くなってしまう大人たち。続けて発表されたレシピの完成度にも胸を打たれました。
では、気になるその中身をちょっぴりご紹介しましょう。

 

メニュー案1「バラエティセット」1年高椋さん、2年河口さん

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ほうれん草のナムルとポテトサラダ、ちくわのチーズ海苔巻きなど。
じゃがいもの固さにこだわったポテトサラダ、子どもでも簡単にできるちくわのおかずなど、食感や作り方にもこだわりました。

メニュー案2「彩りセット」2年江口さん、田島さん

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ブロッコリーとタコのバジルサラダ、きんぴらごぼう、なすのしそチーズ豚巻きなど。
噛むほどに旨味の出るタコや食感のよい野菜などは、切り方に苦戦したそうです。緑と黄色、茶色のカラーリングは、みやま市のイメージにもぴったり!

メニュー案3「行楽セット」2年田村さん、平川さん

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ネギの二色巻き、ツナチーズ揚げ、野菜炒めなど。
ネギの二色巻きは、卵の白身と黄身を分けて焼くアイデア。差し色としても効果的です。油を多めにカラッと揚げたツナチーズも食欲をそそります。

メニュー案 デザート「みやまのみかんカップケーキ&バナナマフィン」

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見た目にもテンションが上がるスイーツは、お母さんに試食してもらって改良を考えているそう。バナナマフィンは先輩から受け継いだ秘伝のレシピ。文化祭で完売するほどの評判なんですって。

さらに、2年の江崎さんがお弁当告知のためのチラシデザインも考えてくれました。なんとスマホ一つでイラストまで手がけたんですって!さすが現代っ子!

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江崎さん このチラシは、幅広い年齢層に受け取ってもらうことを考えてデザインしました。若い人はあまりチラシを見ないイメージがあったので、ハッキリとした原色で目にとまりやすいように工夫したんです。テイストは少しレトロにして、いろんな人に親しんでもらえるようにしています。インパクトを重視するために、表面はシンプルに、詳しい内容は裏面に記載しようと考えています。

それぞれのおかずもチラシも、そのまま商品化して申し分ないくらいの出来栄え。どうやら、レシピができるまでに“見えない協力者”がいたようですよ。
そう、いつもお弁当を作ってくれるお母さんやおばあちゃん、ご家族の皆さんです。美味しいおかずを考えた時に、まず思い浮かぶのはやっぱり“うちの味”なんですよね。
今回のプロジェクトの話をした時には、「あんたにできるとね?」「これも使ってみたら?」なんて、心配やアドバイスをたくさんもらったとか。

中には、「お弁当出たら買うけんね」と予約してくれたお母さんもいらっしゃいました。
だからこそ、「完成したら一番最初に誰にたべてほしいですか?」の問いかけには、皆さん口を揃えて「家族」という言葉が出てきたのかも。
それを聞いた高口さんをはじめとする大人一同は、心なしか目がウルウル。
地域活性の取り組みのはずが、知らない間にもっと深く、もっと身近な“家族”の絆を育んでくれたようですね。

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部員一人一人がまとめたレシピノート。もともと口を出さないと決めていた高口さん達は、これを見て成功を確信したそう

この取り組みのゴールについて、最初は“みやま市のPR”や“企業としてのイメージアップ”が期待されていました。高校生にとっても進学や就職でのアピール材料になると。けれども、今日のプレゼンの雰囲気はそういったビジネス的なwin-winの関係を軽々と超えてしまったのではないでしょうか。

「美味しいお弁当で感謝を伝えたい」という血が通った熱意と真剣さで、高校生と元高校生である大人達が一つになった。そんな気がするのです。
お弁当のパッケージや販売方法など、まだまだ考えるべき案件は山のようにあります。けれども、このメンバーならきっと楽しみながら乗り越えられるはず。
初回から素敵な化学反応を目の当たりにすることができました。

 次回は材料となる特産品についてもっと深掘りするために「道の駅みやま」の方との意見交換の場。乞うご期待!
アナバナでは今後もこのプロジェクトを追いかけて参ります。

(取材:編集部、文:ライター/大内理加)


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