こんばんは、アナバナ編集部のワタナベです。
2月の穴バーは、調味料マイスター神谷さんと開く「おにぎりバー」を開店しました。
おにぎりバーと言いましても、ただおにぎりを食べて楽しむだけのバーではございません。Facebookページ「ごはん大好き」で半年間に3,700人もの胃袋をつかんでいる神谷禎恵(よしえ)さん。毎日欠かさず更新される神谷さんのごはんの写真は、多くを語らずにして愛情が伝わってきます。
今夜の穴バーではおにぎりを通じて神谷さんの「食」への想いをひも解いていきます。
美味しいごはんを食べるのは大好きだけど、一人暮らしで、日常の食に豊かさを持ち込む事に難しさを感じる今日この頃。そんな私に語りかけるように「おにぎりバー」が開催されました。
いつものスタンディングと違い、今回は、神谷さんの「ごはんの時間は腰を落ち着けて味わってほしい」という希望から、座敷スタイルとなりました。
「私は料理が苦手です」
毎日何百人もの食欲をかき立てるFacebookページ「ごはん大好き」。食に精通する神谷さんから最初に出た一言が「料理が苦手」だなんて衝撃的でした。
「ごはんは、ほうっておいても炊飯器が炊いてくれますよ」
食事は毎日欠かせないものです。苦手を感じているからこそ、「どのように上手に食べていくか」という課題に対して、先人たちの知恵から学んだ神谷さんの知識をたくさんの人に知ってもらいたい。外食が増えている現代人の食生活に向き合うきっかけを「おにぎりを食べる」という方法で、伝えたかったと言います。
食べる事、料理する事への大変さを感じている私は、「神谷さんも同じなんだ!」と、一気に神谷さんの世界に引き込まれました。
麹蓋と畳
今回の料理は、皆で「麹蓋(もろぶた)」に入った料理の数々をつつき合いました。麹蓋は、地域によっては「餅箱」や「ばんじゅう」とも呼ばれています。
麹蓋で食事をした事がありますか?
私は初めてでした。今回参加のほとんどの方が初めての経験だったようです。
神谷さんが初めて麹蓋で食事をしたのは、高校生の頃、祖母のお通夜の時だったそうです。近所の人が集まり、麹蓋の中に栄養のバランスを整えた食材が「甘いもの」「しょっぱいもの」「辛いもの」などそれぞれの味覚を考えて並べられている。そして、華やかなごちそうでは無いにも関わらず、様々な人が時間差で食事を摂っても美しく減っていく様が強烈に印象に残っていると言います。
想いを込めて作られたものを、想いを受け止めながらいただく事の美しさを味わって欲しいと、麹蓋を囲い座敷スタイルで食事をいただきました。皆でひとつの麹蓋を囲み、つつき合いながら膝を付き合わせて食べる事は、ごはんをより楽しく食べる、美味しく食べるためのエッセンスのようです。
そこに華やかさが無くても良い、会話をしながら楽しく頂く温かいごはんは、この上なく美味しい。「個食」が主流となりつつある現代人へメッセージが込められていました。
「おにぎりは白いキャンバス」
麹蓋の中には、様々な食材が並んでいました。
九州初の調味料マイスターである神谷さん、味覚の重要性を言います。「一度の食事でも、それぞれの味覚(甘い、しょっぱい、苦い、辛い、酸っぱい、油っぽい、うまい)がそろうと味のバランスが美味しくなる」
より美味しく頂く為にごはんに変化をつけるため、おにぎりを白いキャンバスにみたて様々な味覚を合わせていただきました。
炊きたてのおにぎりを食べてほしい。と、会場では次々とごはんが炊きあがります。それをひとつひとつ神谷さんの手でにぎってくださいました。必ず神谷さんの手でにぎるには理由があります。
「人の手でにぎられたおにぎりには、にぎった人の想いや感情が込められます。」例えば、「一日元気に過ごせるようにと思いながらにぎられたおにぎりは、冷めても美味しいでしょう。でも、イライラしながらにぎったおにぎりはきっとまずい。(笑)」参加の方々の前で冗談も交えながら楽しくにぎってくださいました。
また、神谷さんは続けます。
朝ごはんには、「起きなさい!」の合図
昼ごはんでは、「みんなで集まろう」の合図
夕ごはんには、「帰っておいで」の合図
「日本人の生活の基軸には『ごはん』があります」と。
ごはんを通じた家族や友人、取り巻く人々のコミュニケーション、そこに家族や人々の幸せが詰まっているんだなぁと実感しました。
食べた瞬間に「美味しい」や「まずい」は無作為に出る言葉です。神谷さんが感じる作り手が言われて一番嬉しい言葉は、ごはんを口にした瞬間に出る
「あ〜幸せ」
という一言。ごはんには、お腹を満たすだけでなく、心が幸せな気分になる力があると神谷さんは最後に教えてくださいました。
次回は「おにぎりバーレポ〜食と道具編」と題し神谷さんこだわりの食材から料理、道具を詳しくご紹介します。
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編集部:ワタナベ