早々に満員御礼となった今回の穴バー。「茶道を習っています」という方や「抹茶系のスイーツが大好きです」という方など、抹茶に寄せるイメージはさまざまですが、抹茶×イタリアンという未知の世界に、期待値はかなり高いことが伺えます。
そんな期待に応えるべく、実力を遺憾なく発揮してくれたのが、フードコーディネーターの金髙愛さんです。イタリアンを主軸に、郷土料理や日本酒の世界にも精通していて、料理教室や地域のブランド商品開発など多岐に渡って活躍されています。以前ご一緒した「いらかぶバー」でも、伝統野菜を多彩にアレンジしてくださいました。
取材で現地に同行いただいた時も、茶畑で生葉をかじり、乾燥させた碾茶を嗅ぎ、石臼で挽いた抹茶を味わい、料理のバリエーションを脳内でぐんぐん膨らませていた金高さん。「アイデアに達するまでは難しいですけど、いったん思いついたら後は楽しくアレンジできました!」
ソースにしたり、パスタに練りこんだり、碾茶を調理に活用したり…我々の想像を超える抹茶の可能性が引き出された、アイデア満載の料理の数々をご紹介します。
抹茶バタートースト
この緑の美しさ! 薄く切ってトーストしたバゲットに、抹茶を練りこんだバターを乗せたものです。「シンプルだけど、いろいろな料理に使える万能バターです。ガーリックオイルをかけて食べるのがおすすめですよ」
バターのクリーミーな食感と、後追いでやってくる抹茶のビターな味わい。参加者からも「初めて食べたけど、おいしくて記憶に残る味!」と絶賛の声が。ぜひ、商品化を切望します!
抹茶とタコとトマトのジュレ
杵築の特産品「カチエビ」を出汁に使用した抹茶のジュレを、甘酸っぱいトマト、タコと合わせてグラスに盛り付け。「杵築の海をイメージして作ったのですが、魚介の旨味がたっぷり感じられる一品だと思います。仕上がりをイタリアンカラーにしたくて、ジュレの緑をうまく引き出すのに試作を重ねました」
抹茶とチーズの白和え
リコッタチーズとお豆腐をまぜ、シイタケとトウモロコシ、そしてここにも、金高さんお気に入りの「カチエビ」を使用。「リコッタチーズのサラダをイメージしました。抹茶を和え衣に使用し、仕上げにもトッピングしています。大分特産のカボスも絞って、夏の装いを感じていただけたらと」
カチエビとしらすの手打ち抹茶パスタ
金高さんが得意とする手打ちパスタも、鮮やかな抹茶グリーンで登場しました。平打ちパスタ「タリオリーニ」とやや細めの「タリアッテレ」の2種を食べ比べし、幅の違いで異なる風味を体感してもらいました。「贅沢に抹茶を練り込んだパスタにガーリックソースを混ぜ、仕上げにオリーブオイルとチーズを。カチエビやしらすとの相性もいいですし、抹茶を全面に押し出した作品です」
パスタは出来立てが美味しいとはいいますが、食卓に並ぶやいなやアッという間になくなってしまうほどの人気でした。
ハモのお茶燻製と季節野菜のお茶炒め
実は、ハモ(鱧)の漁獲量が大分県内でもトップクラスの杵築市。メインにはこの高級食材が登場し、会場を沸かせました。注目すべきは、その調理法です。
「碾茶を使って、ハモを燻製にしてみました。中華料理では一般的なチップの代わりに茶葉で燻製することもあるんです。ズッキーニやパプリカも碾茶で炒め、お皿に盛りつけたら彩りに抹茶ソースで飾り付け。見た目の美しさも意識しました」
ほのかにお茶の香りをまとったハモは、噛むほどに旨みを開放し、鼻に抜ける燻製の風味がたまりません! 杵築からのゲストのみなさんも、その意外性に驚いたご様子でした。
抹茶のリゾット
お食事の締めも、もちろんイタリアンで。「ハモを湯通しした際のスープと碾茶を使って炊き上げたリゾットです。お米に吸い込まれた旨味を味わっていただけたら。そこに粉末の碾茶を加えてチーズをふりかけ、最後に抹茶バターを少し溶かしてコクをプラスしています」
昔ながらのパンナコッタ 抹茶ソース
最後は、抹茶と言えば鉄板!のデザート。「ゼラチンを使わない昔ながらのレシピでつくったパンナコッタをご用意しました。低温のオーブンでゆっくり焼き上げるのですが、とってもクリーミーな舌触りで私も今すごくハマっているんです。もちろん抹茶ソースとの相性は抜群ですよ」
甘さ控えめのまろやかパンナコッタに、苦みを残した抹茶ソース…あぁ、まさに大人の贅沢スイーツです。
杵築の酒蔵「中野酒造」の一番人気
紅茶梅酒にトリコの女性続出…
当日は、きつき紅茶を使ったティーサングリアや抹茶ソーダのほか、杵築で明治7年に創業した酒蔵「中野酒造」のお酒たちも料理に華を添えてくれました。世界で高い評価を受けた「ちえびじん 純米吟醸 山田錦」、そして、きつき紅茶を深層地下天然水で水出しし、地元産南高梅で仕込んだ本格梅酒とブランデーをブレンドしたという「ちえびじん 紅茶梅酒」の2種類をご用意。どちらも飲みやすくて、特に女性に人気が高かったようです。
こうして大盛況で幕を閉じた「大分きつきのオーガニック抹茶バー」。抹茶の持つ独自の風味を味わえたのはもちろん、美しい緑色を生かした料理の数々で視覚的にも楽しませてもらいました。
「今回は、抹茶を薬草(ハーブ)として捉え、いろいろな形に変化させてみました。みなさんも機会があれば、ぜひ料理に活用してみてください!」と金高さん。
きつき茶生産組合の佐藤さんと稲吉さんも「いろいろなお声や応援をいただき、新しい繋がりも生まれました。みなさんの期待に応えられるべく今後も頑張ります!」と喜びの声。杵築市役所の宮川さんは「抹茶の活用法がこんなにある事が嬉しい発見でした。杵築でもこのような会を開催して、生の声をたくさん集めたいです」と、ますます意欲的です。
飲むだけにとどまらない、抹茶の魅力を堪能した夜。この秋、きつきのオーガニック抹茶が店頭に並ぶ日が本当に楽しみです。
(取材・文:ライター・吉野友紀、写真:末次優太)