穴バーレポート ACTIVITY

一番摘み有明海苔×創作ビストロの小粋な夜 フレンチの名手が生み出す新感覚のディナーを召し上がれ!

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いよいよ517日の穴バー当日を迎えました。丹精込めて育てられた有明海苔がどんな変身を遂げるのか海苔好きの皆さまも胸をときめかせながら続々とご来店。海苔漁師の皆さんも緊張の面持ちでお出迎えしていました。
厨房を覗いてみると、無駄のない動きで料理
の準備をするシェフ、坂口究水さんの姿が。福岡市内の住宅街にあるビストロ「オ・ランデヴー・デ・カミオノー」のオーナーとして腕をふるっている坂口さんが手がける海苔ディナーに会場も大いに盛り上がった夜でした。 

坂口さんは、東京で15年、その後フランスで腕を磨き、201810月に大橋で「オ・ランデヴー・デ・カミオノー」をオープンされました。敷居高いイメージのフレンチを気軽に楽しんでいただけるようにと、カウンター席もあるビストロスタイル。名物のフォアグラのホットサンドをはじめ、旬の味覚を生かした多彩なメニューも人気の秘密です。 

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とはいえ、普段フレンチでは使われない海苔をアレンジするなんて、かなり苦戦されたのではないでしょうか?
「メニューは最初のスープから順番に考案しました。海苔ってアオサほど磯の香りが強くないけれど、入れすぎるとあと味にクセが出てしまう。デザートのなどは特に香りを移すのに手こずりました」

そう、今回はなんと“海苔のデザート”もお目見えしたんです

それでは、フレンチらしく華やかで上品なディナーの数々をお届けしましょう。
 

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キッチンを固めたのはこちらの3名。左から梶原さん、坂口さん、岡部さんです。

海苔とゴボウの冷製スープ 

炒めた新玉ねぎとゴボウのブイヨンに海苔を加えたスープは、海と山の滋味が見事に溶け合った逸品。 「海苔と相性がよいゴボウを合わせて冷製スープに仕立てました。海苔の香りをより楽しんでほしいと思いましたが、あまり海苔が強いと後味がきつくなってしまいます。なので、中に海苔のコンソメジュレを入れて、崩せば海苔の旨味をより濃厚に味わえるよう工夫しました」 

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参加者の皆さまからも「すごく飲みやすい!」「アクセントのアラレも合うね」「コクが深いのに優しい」と大好評。最初から意表を突いたお味だったようです。

海苔揚げパン 

粉末にした海苔を練り込んだ揚げパンは噛むほどに磯の香りが広がります。
「いつも作っているパンに粉末の海苔を加えました。海苔が水分を吸ってしまうため発酵に苦労しましたが、風味がよく出たのではないかと思います。スープや後ほど出てくるグラタンに付けて食べてもらってもいいかなと。“追い海苔”的な感じですね」 

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白味魚の磯辺揚げ
海苔クリームソース 

大和芋と白味魚を合わせたしんじょの中に海苔とクリームチーズのソースを入れたフライ。当日は揚げたてで提供されました
「こちらは海苔を使った和食の定番・磯辺揚げをアレンジしました。全体を板海苔で包むので、しんじょには海苔を加えず、マイルドなクリームチーズのソースに海苔を入れてメリハリを出しています。また、今回は立食スタイルなので、取り分けやすいようソースは中に入れました」

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当日はドリンクに大川市の酒蔵「若波酒造」の日本酒をご用意していたのですが、「日本酒にぴったり!」という呑兵衛の方も多数いらっしゃいました。

豚ロースの低温ロースト
海苔クルート 

75℃でじっくりと火を入れて柔らかく仕上げた豚肉にトマトと海苔のソースをのせています。
「豚肉の上に板海苔をそのままのせたかったのですが、いい海苔だけに溶けてしまって。粉末海苔にバターとパン粉を加え、再びシート状にすることで板海苔の形にしました。フレンチの場合、豚肉と海産物を合わせる料理もよくあるので、海苔との相性も意外に合うんですよ。豚肉は糸島産、キノコの付け合わせも福岡産と地元にこだわって選びました」 

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〜焼き海苔体験タイム〜 

 宴もたけなわの時間帯、大きな皿にずらりと並べられた板海苔と卓上コンロがスタンバイされます。ここから海苔漁師の西さんが海苔の一番おいしい食べ方を教えてくれるんですって。そう、「焼き海苔ワークショップ」です。西さんの軽快な筑後弁トークで会場の盛り上がりは最高潮に。

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海苔の炙り方はご家庭でも簡単に再現できます。
火のついたコンロで海苔を炙るだけ。でも、海苔を火にくぐらせる時は2、3秒ぐらいが目安です。それを2、3回繰り返せばほのかに緑がかった色に変わってくるはず。火に近づけすぎたり、あまり長く炙ってしまうと苦味が出てしまいますのでご注意を。

西さんのデモンストレーションを見た後は、実際にコンロで炙って、そのままパクッ!海苔は炙ることで中に残っていた水分が蒸発し、香ばしい焦げ目が付くのでより深みのある味わいになるそう。口に入れるとパリッと音を奏でるほど食感も豊か。これはクセになりますね。 

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コンロでは火加減がちょっと心配、なんて方のために大川漁業協同組合研究会の秘密兵器も登場。海苔を炙るヒーターが内蔵されていて、挟んで30秒くらいするとパリッと焼き上がります。会場のキッズも興味シンシン!

季節の野菜と海苔グラタン 

「海苔漁師の古賀さんが『海苔とチーズは相性いいんですよ」とおっしゃっていましたので、グラタンにしてみました。ベシャメルソースに海苔の粉末を入れて、少し塩気をきかせています。夏野菜をゴロゴロと入れてボリュームも出しました」
先ほど海苔焼きを楽しんだ参加者の皆さんも「焼きたての海苔を添えても、また美味しい」と大好評。おかわりラッシュが続きました。

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海苔プリン
海苔と洋梨のゼリー

海苔ラスク添え
 

海苔ナイトを締めくくるデザートは、海苔の香りをしっかりと感じるプリンとすっきりとした後味のジュレ、甘じょっぱいラスクの3品。

「特に苦戦したのがデザートですね。海苔を加えすぎるとどうしても後味がキツくなってしまいます。特にデザートの食材となるとバランスが難しく、何度も改良を重ねました。まず、プリンはミルクに海苔の香りを移して、まろやかな味わいに仕上げました。ジュレは、お店でも人気のグラスジュレをアレンジ。甘みと程よい酸味のある洋梨が海苔に合っているかなと。ラスクは、海苔の塩気と砂糖の甘さでコントラストを出しました」

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デザートの登場を今か今かと待ち構えていた参加者の皆さん。「海苔といえばご飯とかおにぎりしか浮かばないですけど、こう来たか!と思いました」「さっぱりしてあと味もいい」などなど、最後まで驚き満載の穴バーでした。

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この日は、大川漁業協同組合研究会近くにある老舗蔵「庄分酢」の果実酢ドリンクも登場。果実の自然な酸味がいい箸休め役になってくれました

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もう一つの名アシスト役は、大川市の「若波酒造」の純米吟醸。ふくよかで飲みやすい口当たりに海苔の塩気がよく合います。波をあしらったラベルも有明海にぴったりですね

あちこちで海苔をかじる「パリッ」という音や料理を前に弾むおしゃべりが飛び交っていた会場内。大川漁業協同組合研究会の皆さんとシェフの坂口さんに今日の感想をお聞きしました。 

 西健一郎さん
面白かったです。また違う形でも続けられるといいですね

古賀弘彰さん
非常に楽しい時間でした。消費者の方と直接話す機会ができて、これからのシーズンの励みになりました

古賀哲也さん
いつもPR活動では自分達が楽しむなんてことはあまりなかったんですが、一緒に飲んで話せて楽しかったです。これからはこういった海苔好きな人に向けたイベントを考えていきたいです。生産者だけだと限界もあるので、こんなのをやりたいというお声を寄せてもらえると嬉しいですね

義文さん
楽しかったです!海苔の美味しさを多くの人に知ってもらいたかですね

 坂口究水さん
今日はレシピを少し改良して、板海苔をもう一度焼いて粉末にして料理に取り入れてみました。色合いも少し緑色になってより海苔らしくなりましたね。漁師さんに海苔は10gで一食分の野菜の栄養素があると聞いたのですが、10gって焼き海苔2枚半なので結構量があるんですよ。だから粉末にしてカレーを作ってみてはどうかな、なんて考えています

今日の“海苔ニケーション”で作り手と料理する人、そして食べる人が交わり、また新たなアイデアが生まれたようです。栄養満点でおいしい海苔料理の食材として気軽に使ってみたいですね 

(取材・文:ライター・大内りか、写真:末次優太)

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