コトバナ

老舗情報誌の編集長が教える、これからのタウン誌と福岡“ここだけ”の話。〜前編〜

VOL.014 「老舗情報誌の編集長が教える、これからのタウン誌と福岡“ここだけ”の話。」

2015.07.8(水)

ユニークな活動を通じてこれからの福岡や日本を面白くする方々を招いたトークイベント「コトバナ」。今回は、福岡発のタウン誌として、いつも新しい街の様子を伝えてくれる「シティ情報Fukuoka」の編集長・古後大輔さんをゲストに迎えました。長年にわたって地域に愛されてきたタウン誌ならではの、個性的な取材スタイルから、美野島商店街を特集した最新号までを一気にご紹介。美野島商店街でゲストハウスを営む貞國秀幸さんと、活版印刷工房の日髙真吾さんも加わり、街のワクワクを感じられるイベントとなりました。

モデレーター 和泉尚吾
コトバナの開催地でもある、天神IMS 4Fにあるブックカフェ「solid & liquid TENJIN」の店長兼雑貨マネージャー。京都弁も達者な生粋の京都生まれ、福岡在住一年生。住み始めて早速福岡が大好きになり、福岡を元気にしたい人を続々発掘中。
ゲスト シティ情報Fukuoka 編集長 古後大輔
1975年大分県別府市生まれ。4月から、創刊40周年を間近に控えたタウン情報誌「シティ情報Fukuoka」の編集長に就任。人と人のつながりを大切にすることをモットーに、自ら現場に赴き、足でかせぐ取材を毎日敢行中。
ゲスト コステル美野島 貞國秀幸
1968年北九州市若松区生まれ。CMソングやテレビ番組の音楽などを手掛けるソングライターとして20代を過ごした後、不動産業界へ。独立後は、スタジオの完備のシェアハウス「スタジオアパートメントKICHI」、商店街リゾートホステル「コステル美野島」などを手掛ける。音楽と不動産を股にかける”宅建ローラー”。
ゲスト 活版印刷Oldman Press 日髙真吾
美野島にある印刷会社「日髙印刷」の息子として生まれ、現在は日高印刷の活版印刷部門「OLDMAN PRESS」を夫婦で運営。欧米の古い印刷物などを見て培ったセンスを生かし、オリジナルの伝票や領収書、タグなども商品化している。

人の魅力を通じて街を紹介する

和泉さん(以下、和泉) こんばんは。solid & liquid TENJIN 店長の和泉です。

さてみなさんは、「シティ情報Fukuoka」というタウン誌をご存知ですか? 福岡の方なら、きっとご存知ですよね。大手資本のタウン誌とは異なる、ディープな掘り下げ方が人気のこの情報誌は、僕自身も大ファンで、15年ほど前に仕事で福岡の街と関わり始めてからずっと愛読しています。

本日は、その「シティ情報Fukuoka」の編集長に4月から就任された、古後大輔さんをゲストに迎え、雑誌づくりの考え方や、実際の取材の進め方など、気になることをいろいろとお聞きしたいと思います。古後さん、よろしくお願いします。

古後さん(以下、古後) こんばんは、よろしくお願いします。

和泉 僕と古後さんの出会いは、ここの店を取材いただいたのがきっかけですよね。

古後 はい。

和泉 私がLOVE FMに出させていただいた時のしゃべりを聞かれたとか!?

古後 そうそう。たまたまラジオを聞いていたら、和泉さんが出ていて。店長らしくあたりさわりのないお店の宣伝かと思ったら、「卵サンドを作るのが、えらい大変で」とか(笑)、個人的なことを京都なまりで話していたのが面白くて。会って話を聞いてみたいなと。

和泉 それはそれは、おおきに(笑)。これまでいくつか取材を受けてきた中で、古後さんの取材スタイルで印象に残ったことがあるんです。それは、私個人のことをいろいろ聞きはるなあということです。よくライターさんとかに聞かれるのは、商品のことやイベントの内容に関することがほとんどなので、僕自身に対する質問が多いのがすごく印象的でした。

古後 そうだったんですね。人と会って、人の魅力を通じて街を紹介していくのが、シティ情報Fukuokaの基本方針なんです。

和泉 どんなことに気をつけて編集してるんですか?

古後 我々が目指しているのは、街の息づかいが聞こえてくるような、街の専門誌。例えば紹介するお店やイベントをひとつの島に例えると、水面上に見えるのは、5W2Hの基本情報です。その紹介はもちろんしますが、本当に面白いのは水面下なんですよね。人の人間性や想いといった情報は、検索しても出て来んですから。そこをきちんと取材して伝えていくと、街の体温が伝わる誌面になるんです。それが、街の専門誌の役割かなと。

和泉 なるほど~。まずは人と会うことから始まるんですねぇ。

古後 私がまだ新人だった頃、取材先で最初に名刺を出したら、先輩に頭をはたかれたことがあって。「いきなり名刺なんて渡したら、相手が構えちゃって、本音を聞けんやろ」と。そういうことを最初に教わりましたね。

和泉 さすが、伝統ある編集部。そうやって取材の姿勢も受け継がれていくんですねぇ。


40歳とは思えない若々しさの古後さん。フットワーク軽く、足で稼ぐ取材スタイルも、この若さあってのもの!?

地元に愛されて復刊

和泉 「シティ情報Fukuoka」が歩んで来た道のりを教えてもらえますか?

古後 創刊号が出たのは1976年です。80~90年代の中頃まで、福岡の街の発展に合わせて、本の内容も充実し、部数も伸びていきました。ピーク時には、an・anと同じくらいの人気だったんですよ。

和泉 そんなにですか!?

古後 ええ、全国的にもこれほど売れるタウン誌は珍しいって言われて。それが、90年代中盤くらいに「九州ウォーカー」などのライバル誌が出現して、私たちとしてもいろいろと戦略を練ったんですが、折からの出版不況とも重なり、休刊を余儀なくされまして。

和泉 それは残念……。でも復刊しはったんですよね。休刊したらそのまま廃刊という雑誌も多い中で、見事に復活されたのはすごいです。

古後 やはり地域に愛されてきたことが大きいと思います。多くの地元企業から支援を受けまして。

和泉 復刊時のテーマは?

古後 やはり人の魅力を通じて街を紹介することですね。単純に、人のストーリー紹介だけでなく、街と関わる考え方を聞きながら、街の空気を誌面上で再現したいと思ってやっとります。そこが大資本のタウン誌にはできない、うちの強みかなと。

和泉 古後さんが編集長になられて、より「人」にクローズアップした誌面づくりになっているんですか?

古後 そうですねぇ。自分の取材スタイルが、人に興味があり人から入り込んでいくタイプですからね。私はいま40歳なんですが、昔を知っていて、今の街とも繋がっているので、街の人を深堀するのに人にちょうどいい世代なのかもしれませんね。

和泉 編集長になられて、ここを変えていこう、というのはあります?

古後 来年の40周年に向けて、新しいコンテンツをたくさん入れていこうと思っています。特に、街紹介のコーナーを充実させようと。

和泉 その一例が、次号の美野島商店街特集というわけですか。


老舗雑誌だけあって昔からのファンも多い様子の会場。かつて編集を担当していた古後さんの先輩方にも駆けつけていただいた

私の一冊

アラタ・クールハンド「FLAT HOUSE LIFE」、「HOME SHOP STYLE」

7月号からの新連載「REVIVAL journal / 再評価通信」を担当していただく、イラストレーターのアラタ・クールハンドさんの本です。アラタさんは、ご自身も西戸崎の米軍ハウスに住む平屋マニアで、「FLAT HOUSE LIFE」は古い民家や米軍ハウスなど、アメリカ文化の香る平屋を紹介した自費出版シリーズ。「HOME SHOP STYLE」は、住居兼ショップとして建物を活用し、新しい生き方をしている人々を紹介した本です。どちらにも、もともとあるもののよさを見直して大切にしていくアラタさんの考え方が、存分に表現されています。福岡は、関東に比べてまだまだ使える建物がいっぱい残っているらしく、安易な取り壊しを防ぐためにも、興味を抱いてほしいとか。貞國さんと一緒に、平屋を専門に扱う不動産屋も立ち上げるとのことで、その展開もとても楽しみです。

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