コトバナ

街と暮らしを変えて行くWebと日常のつなげかた 〜後編〜

VOL.004 「街と暮らしを変えて行くWebと日常のつなげかた」

2015.02.05(木)

東京と福岡をつなげる場

三迫さん(以下、三迫) 下村さんはクリエーター同士の交流の場をつくる「kkzn(カケザン)」というイベントの福岡開催スタッフとしても活動されていますよね。

下村さん(以下、下村) はい。「kkzn」というデザインミーティングがあるんですね。東京のクリエイターと地方のクリエイターを繋げたいという趣旨で、最初のモデルケースになったのが福岡市です。2013年の6月に1回目を、去年の11月に3回目を開催しました。

三迫 僕も参加したことがありますが、意外とみんな、他の人がやっている仕事のことを知らないんだ、っていう発見がありました。

下村 そうなんですよね。福岡では「自分はこんなことをしてる」って、声を上げて仕事されてる方がそう多くはなくて。

三迫 ええ。

下村 東京で働いているWebメインのアートディレクターさんに来ていただいて、シンプルに福岡で活躍している人達と友達になりたい、というところから始めました。2回目以降は、同じテーブルでなにかを考えるワークショップやポートフォリオを見せ合う、なんてこともしましたね。

三迫 福岡も地方都市で、東京コンプレックスってあると思うんです。だけど実績を並べてみると、あ、東京も福岡も変わらないんだな、と感じましたよね。

下村 そうなんです。福岡のみなさんってすごくおもしろい仕事をされているんですよね。東京の方も、福岡はいわゆる“地方”だと見ていたと思うんです。だから東京の人も驚いていました。「kkzn」がきっかけになって、福岡と東京のクリエイターが一緒に仕事をする事例も生まれましたよ。

福岡とWebメディア

三迫 僕、このサイト好きなんですよ。Web上の知人の間でも話題になっていました。

後藤さん(以下、後藤) ありがとうございます。このお仕事はFukuoka Factsというサイトで、福岡市の特徴となるデータをわかりやすく紹介するというものです。BUZZHOOKとしてもデザインを評価いただきました。

下村 公開後は福岡より県外からの反応が早かったように感じます。

三迫 こういう情報は、紙だと配られて終わりになることが多いですが、Webサイトにすることで色々な人に触れてもらえるからコストパフォーマンスが高いですよね。

後藤 これは下村さんもキュレーターブロガーとして参加している、CreativeCity Fukuoka(以下、 CCF)というサイトです。クリエイティブ創業都市としての福岡がどのような活動を行っているのかを、市側からの情報発信を軸に、福岡在住の方、福岡に関係する東京の方からの、編集のかかった情報を提供してもらっています。

下村 先ほど紹介した、kkzanのレポート記事などを書いています。このサイト自体が、福岡をクリエイティブな都市に、という大きな目標に向かって頑張っているサイトです。クリエイターに好かれる街、働きやすい街を目指して25年、ということの一環として始まりました。
学生さん達が知らずに終わってしまっているイベントや展示などを見てもらえたら良いなと思って参加していますね。そういった方達がどんなことに興味があるのかも考えながら伝えたい情報を選んでいます。

三迫 下村さんは取材されるだけじゃなくて、ご自身でもブログでしっかり発信されていますよね。

下村 僕は地元が広島で、東京で働いていたという経験と、今は福岡で生活しているということもあって、地方で働くとは? といったライフスタイルを問われるような仕事も増えましたね。東京で埋もれるより地方で目立つ、みたいな。すごく嫌な奴って感じなんですけど(笑)。でも、あながち嘘じゃなくて、目立とうとしてやっているところもあります。仕事がし易くなったり、おもしろい仕事に関われるチャンスがどうやったら増えるかを常に意識しています。

街の情報を発信する

三迫 後藤さんは7年間、AFROで街の情報を発信し続けて来て、街やWebが変わってきたな、と感じることはありますか?

後藤 7年前はSNSの種類も少なかったんですよね。ここ数年で、街の人が当たり前にWebを使うようになって、Webが街に浸透していくと共にAFROもようやく、すっと入り込んで行けるようになりました。
元々は制作物を納品した時に宣伝する場がなくて、お客様の情報を世の中にちゃんと出してあげようというところからAFROは始まっています。メディアの使われ方が変わっていくのと共にアクセス数が上がったなぁって実感はありますね。

下村 三迫さんも、ご自身のブログCENTRALPrefabのようなサイトで情報発信を積極的にされていますよね。

三迫 そうですね。だけどあんまり考えずにやってるところもあるんです。僕は元々編集プロダクションで働いていました。どちらかというとマス向けの情報を扱っていたんです。そういう情報を自分が本当に好きなことなのかって言うと、そうとは言い難かったんですね。正直、自分が疲れてしまうところがあった反動もあって、“自分はこういうのが好きなんです”ってブログにぽんぽん投げ始めました。

下村 なるほどー。いわゆるデジタルに強い人ばかりじゃなく、例えば友達の奥さんからもtaromagazine勧められたことがあります。「福岡のおしゃれな情報が載ってるよ」と。三迫さんのひとりメディアはどこまで浸透しているんだ、と驚きました(笑)。

三迫 一時期は仕事が辛くなればなるほど夜中に頑張って、自分が気持ちいいと思える情報を公開することでバランスを取っていたんです。自分のブログを通じて、独自の目線で情報発信が出来る人なんだという風に見てくれた方から、自然とお誘いがくるようになって。誘われると断れないんですよね(笑)。

後藤 CENTRALはどういうきっかけで始まったんですか?

三迫 編集部の福岡を拠点に物作りやクリエイティブの魅力を伝えていきたいという思いから始まりました。福岡には国内外で活躍されている方が点在しているですね。その個性の強い方達が集まって“福岡”を発信しています。

下村 たしかに、CENTRALには個性の強い方達がそろっていますね。

三迫 僕は、Web上に無いものを上げるっていうのを行動原則にしているので、Webに普段情報を上げない人達を集めて何かしら書いてもらうっていうのも、自分の中ではすごく良いなって思ってるんですよね。

後藤 そんな風にWebは試しながらできるから良いですよね。

三迫 Webは印刷物と違って発行サイクルがなく、常にリアルタイムですもんね。

三迫 Webは開かれた場所なので、そこにポンと立った時に、あなたは何をしてくれるの? って問われている気がするんです。そこでどう動くかという感覚を僕は「Web反射神経」って心の中で呼んでいます。

下村 “Web反射神経”良いですね(笑)

三迫 AFROスタッフの人達は、”Web反射神経”の優れた人達が集まっているんだろうなって気はします。

後藤 そうですね。企画を思いついたら、まずはやってみるっていうのがAFROスタッフのポリシーで、悩んで時間かかっちゃうより、まずはやってみて理由が悪かったら潔くやめようって方針です。でも残ってるコンテンツはやっぱり残っていくんですね。

三迫 下村さんも同じような印象がありますよ。

下村 CCFや自分のWebサイト、SNS、出せる物はドンドン出しています。その活動一つ一つが次の仕事に繋るので見られる事は常に意識しています。

三迫 今回のトークテーマに“街と人”ってありますが、Webの中でも今のお話のように街の色々な人に見られてるんだなって感じますよね。

下村 ええ。誰に見てもらえているのかを考えると、闇雲に打ってもダメなんですよね。むしろこの層にだけ見て貰えたらいい、って絞った方が情報を発信しやすくなります。僕はWebにもそれぞれ特性があるから発信の仕方もちょっとずつ変えています。

三迫 確かにTwitter、facebook、Instagramで全然違いますよね。Twitterはすごく殺伐としたところがあります。SNSごとに見えてる街の風景が違うんだろうなと感じますよね。

下村 悪い言い方ですが、例えばfacebookだと偽善ぶった、いわゆる“正論”の方が受けが良かったりします。

後藤 三迫さんは何を一番使っていますか?

三迫 最近落ち着くのはTwitterですね。以前はInstagramを一番使っていたんですが、どうしても画が綺麗で集まってくるような世界になっていきがちなので、知らない人を連れて来てくれるのはTwitterだなって感じるんですよね。

下村 僕はInstagramが一番“街”を感じるなあと思うんですよね。新しいお店やスポットがアップされていると、あ、こんなんあるんだってすぐわかるし、調べてみようって思いますもんね。

後藤 うんうん、わかります。

三迫 僕の中でInstagramは“どこでもドア”や“マルコビッチの穴”のような、その人のアカウントに乗り込んで違う景色が見れるという感覚があります。

下村 それはなかなかマニアックな使い方をしていますね(笑)

つなげ方は人それぞれ

三迫 トークテーマの「街と暮らしを変えていく、Webと日常のつなげかた」に戻りますが、「こういうふうにつながってますよ」、って話はできるんですけど、「こうすればつながりますよ」って教えるような話できないと思うんです。

下村 確かにそうですね。 例えば後藤さんがやっているつなげ方って他の人はマネできないでしょうし、それぞれの立ち位置と皆さんが持ってるつなげ方がありますよね。今日の2人の話のように聞いてて楽しいですし、無意識でも何かしら、みんな発信しているんですよね。

三迫 僕はプロとしてデザインを受けていますが、自分が迷ってどっちに行っていいか分からなくなったりすることがあります。そんなときに、Webを通じて知った街で暮らす人達や、お店のオーナーさんが発信していたことを思い出すことで、自分が作るものが決まってくることがあります。

後藤 ここまで色々話してきましたけど、結局、良いと思った物をすぐ書き出せるのがWebの特徴ですよね。街のことや暮らしに関することをリアルタイムで発信できますし、人の暮らしがリアルタイムで伝わってくるのもWebならでは。情報をやり取りする受け皿として、Webを使わない手はないなとあらためて思いました。

ゲストに聞きたかったコト

会場ではこんな質問がありました

後藤さんに質問です。今のブランドやファッション、コレクションの流れなど、これは見た方がいいと思うおすすめを教えてください。

後藤 ブランドにこだわらず、ドメスティックでおもしろいものが好きなので、ファッションスナップを参考にする事が多いです。中でも海外のファッションスナップサイト「Sartorialist」は、ご老人のスコットさんというカメラマンさんが長年撮り続けているんです。最近はInstagramもされているので参考にすることが多いですね。

三迫 元々は街の人を撮る方だったのに最近はコレクションやファッションピープルを取り上げることの方が多くなりましたよね。

後藤 そういう面で、個人的な目線が生きているInstagramがおもしろいですよ。

三迫 街の人を切り取る、元々のスコットさんのやり方に合っているのかもしれないですね。
あ、ファッションスナップなら、「銀座の社長のブログ」もおすすめです。広告プロダクションの社長が、ランチに行く前の自分の姿をスタッフに撮らせているブログなんですが……。

会場 (爆笑)

三迫 Sartorialistと比べるからでしょ(笑)。案外参考になるんですよ。海外のメディアにもとり上げられている話題のサイトで。さっきの街の話と繋がるんですけど、プロよりもユーザーの方が現場をよく分かっているっている場合があるっていう象徴の一つだと感じますね。

自分のルーツになった本、初めて買った本を教えてください。

後藤 すごいなと思うのが「commons&sense」です。海外の雑誌みたいで、かっこ良い物をずっと作り続けてるんですよね。

三迫 僕は「here and there」っていう、花椿の編集者さんだった林央子さんが個人的に出されている雑誌ですね。中身はパリコレなどを取材して行く中で出会った人達との関係を書いてます。洋服や活動を紹介するんじゃなく、例えば「The Loneliness ISSUE」というテーマでは様々な人に「さみしさ」について聞いてるんです。Instagramとブログが一緒になったような雑誌です。

下村 僕はルーツになった本をずっと考えてるんですけど、「SOFCON」というゲーム雑誌です。中学生の時、ある日突然ゲームを作りたくなって友達とお金を出し合って回し読みしていました。作った作品を編集部に送ると評価してもらえて毎月開催されているコンテストで、銀賞を貰ったこともあるんです。このあたりからパソコンを触ったり、ゲームですがグラフィックに興味が出て来たり。学校の授業そっちのけでしたね。

コトバナ編集後記

開場早々に満員となり関心の高さが伺えた本日のトーク会場では、Webとは関係のない業種の方の姿も多く見られました。自分にとって居心地の良い情報を自然体で扱う姿が共感を呼び、そのライフスタイルがWebを通して浸透している三人。トーク後の談話でも素人としての感覚を大事にしていると口々におっしゃっていました。
3人とも元の仕事とは少しスライドした場所で活躍されているのは、snsやブログなどを使いこなし、自分の仕事と暮らしが多様化することを実践されているからだと感じました。(とよだ)

今回のトークの関連Webサイト

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