インタビュー

反響、収穫、考えること (後編) thoughtのみなさんにお会いしましたPart2 〜後編〜

アナ話 〜thoughtのみなさんにお会いしました〜 part2 後編

2014.9.16(tue) up

春に引き続き2回目となる合同展示会「thought」。開催を前に、「thought」を立ち上げたメンバーのみなさんに、再びお話を伺いました。初めての試みとして開催された前回の評価や振返り、2回目の開催にあたっての運営のポイントなどを2話に渡ってお届けします。

反響、収穫、考えること(後編) 

◼︎ thought 1st のインタビューはこちら

ぶらさず、続けるために。

  やってみてあらためて感じたのは、九州にもまだまだ良い作り手がたくさんいるということ。そういう人たちがどんどん出てきてほしいですよね。

アナバナ ええ。

 今はまだ、展示会、流通の中心は東京なんです。で、そこに出展して大丈夫かなって、ついいろんな事を考えてしまう作り手さんもいるんですよ。出展料何十万円に加えて、宿泊費とか輸送費でまた経費がかかるから、売れなかったらどうなるんだっていう不安もあるだろうし。だから、「thought」が全国に出ていくきっかけになるような、情報の発信の場になればというのはいつも考えていますね。

アナバナ ちなみに「thought」の出展料はいくらですか?

 一番小さいコマが3万円プラス税で、サイズを増やすごとにプラスオンしていくという感じです。

アナバナ なるほど、相場からいくとかなり低い設定ですよね?

藤戸 おそらく大手に比べると10分の1くらいじゃないですか?

アナバナ あえて低価格に設定したのですか? それとも1回目だけのお試し価格?

 いえ、前回も今回も同じ料金設定です。チャレンジしたい人にとっては、それがハードルになることもあるので、それは違うと思っているんです。僕らも一出展者なので、この展示会で儲けようとは考えていないんですよ。

アナバナ ハコだけ準備して、あとはほぼ出展者が各々搬入もブースの装飾も行うということでしたね。

 そうです。西海陶器さんの協力があるからこそなんですが、各々が準備して、片付けして、掃除も設営・撤収もほとんど必要ないから、大きなコストは必要ないんです。

アナバナ 実際、全体の運営費はどのぐらいで実行できたのでしょうか?

 出展料で十分まかなえましたよ。結局、ウェブとDMの制作費、あとは事前の現場とのやり取りで多少発生する程度ですから。

アナバナ それでも運営側としてのみなさんの人件費や交通費を考えるとマイナスなのでは?

 そうですね、僕らの人件費は出ていないです。

アナバナ その辺りはどのように考えているのでしょう。やっていくうちにしんどくなってきたりしませんか?

藤戸 もちろん、出展料を高くして収益を上げることはできるんですが、そうなると今度はいろいろと求められてしまうと思うんですよ。毎回しっかり装飾するとか、宣伝を増やすってなると、僕ら4人ではやれなくなってくる。

アナバナ なるほど。無理をして負担がかかることが、継続できない原因になってしまう。

藤戸 僕らにもそれぞれの仕事があって、個々のビジネスを成功させたいというのが展示会のスタートですから。

 いつも話すのは、余計なことをやるのはやめよう、ということです。難しいことはやっていないんですよ。ハコを用意してサイズを決めて。あとはみんながやると。

アナバナ 前回に続いて、協賛の西海陶器さんとEXIT METAL WORK SUPPLYさんから、場所と什器を提供していただいていますね。例えばスポンサーを集めるというのも可能性がありそうですが。

 普段の仕事の範囲内で、開催の広報活動はやっていますが、営業活動はしていません。スポンサーも行政も、そういうお金の巡りがでてくることで、主旨と違う思惑に応じないといけなくなる可能性が出てきます。そうなると開催の想いがぶれてしまいますし。

アナバナ 継続開催を予定しているとのことですが、今後もそのスタイルは変えないのでしょうか?

 2回、3回と続ける中で、出展希望とかリアクションが増えてきた時は、実行委員を委託するとか大きい規模でやれるハコを探すとか、そういう話は多少しています。ただ、言い方は悪いですが、基本は自分らのビジネスのためにやっているので、現状は4人で「よしこれでいこう」って決断したらすぐ進む規模を望んでるって感じです。

アナバナ なるほど。前回のお話で、九州を盛り上げていこうという精神ではやっていない、という話もありました。今回開催してみて、その考えに変化はありましたか?

 多少はあるかもしれません。1回目が出来すぎというのはありますが、あの場所であの雰囲気が出せたからこその反響もたくさんいただきました。そのテンションを、お客さんに伝えないといけないというのは感じています。最終的にお客さんに伝染することで、「九州いいやん」って気づいてもらって、カバンを買うとか、おいしいものを食べるとか、そういうテンションになってもらわないとモノは売れないわけなので。

アナバナ 「九州いいやん」と思える“ 九州の可能性 ”とはどういう点にあると思いますか?

藤戸 東京から遠いってことでしょうね。中央から距離があるから、自分たちのやり方を考えないと食べていけん世の中ですし。だからこそ、土地の可能性を活かしてやれることがあるわけです。自分たちの立ち位置で、無理なく続けていけるやり方を考えていくっていうのが大事ですよね。

林 自分たちはたまたまアパレルですけど、ジャンル問わずにどんどんいいものを純粋に発信していけたらいいですよね。土地の素晴らしさを届けられるツールは増えていて、九州でも続けていける世の中の仕組みになってきていますので。

藤戸 周囲からの展示会に対する期待値はすごく感じますよ。みんな「誰かがやらないと」っていう危機感は持ってるんですよね。

 福岡も、実際人口は増えてるけど、洋服屋が潤っているかといえばそうでもなくて。大手のファストファッションとかモールが増えて、路面店のお客さんが減っているっていう苦しみもあるわけです。このまま世の中に愚痴って終わっていくよりは、なにかアクションを起こさないとっていうのはみんな感じているんでしょうね。

アナバナ 1回目の盛況ぶりは、そうした作り手さんや協賛の応援も大きかったのでしょうね。

 そうですね。今までやれていなかったことを始めたという点に共感してくれて、諸先輩方も応援してくれているのを感じます。

藤戸 だから、展示会をやるのも、たまたま僕らが動けた、幸運なタイミングがあった、っていうことなんでしょうね。 若干、ババ引いた感はありますけどね(笑)。

植村 意外とシンプルにやれるものなんだなとあらためて思いますね。4人の空いた時間を駆使して実行できわけですし。

 たまたま集まった4人だけど、その4人のバランスが神憑ってたってのはあると思う。

アナバナ 神憑(かみがか)っていた??

 4人が集まって勢いづいたというのもありますけど、結果、役割分担が見事なまでによかった。

アナバナ なるほどー

藤戸 たまたま満載ですよね、ほんとに。やること、やれないこともシンプルで。なんも媚びんっすもんね(笑)。あとは、福岡でやるとこう、波佐見町でやるとこう、っていう柔軟な対応ができるかも大事。

アナバナ 継続していく中で、行き詰まることもあると思うのですが、今感じている課題はありますか?

 「九州の作り手」を中心に集めるというのが「thought」の特徴のひとつですが、反響が出てくることで九州外の作り手の割合をどこまで増やすのかとかも考えますね。

藤戸 やっぱり回数を重ねればマンネリ化もしていくし、話題性だけでは飽きられます。やり方自体の工夫はしていかんといかんでしょうね。
その時に、出展者は毎回内容を変えたものを出せるかが重要になってきます。だから、「thought」の場をふむごとにプロダクトのクオリティをあげていってもらわんといかんのですよ。「thought」が九州のものづくりの底上げになるような場になれば、面子が同じでも自信を持ってお客さんを呼べる展示会になると思ってます。

アナバナ 2回目、3回目と、少しずつ進化がみられそうですね。
最後に、2回目の「thought」の見所を教えてください。

 今回、出展者数も増えて、半分くらいは新規のお店になりますから、前回に増して楽しい場になるでしょうね。お客として来場した方の中にも、次は出展者になりたいという人もいると思います。そういう場合は遠慮せず、僕らにどんどん声をかけてほしいですね。

藤戸 バイヤーさんは、ディスプレイや店づくりの参考になったり、「今こういうことが起こってるんだ」って感じてもらえる場になると思います。

植村 今回も3日目は一般のお客さんも楽しんでもらえるマーケットをやります。ここまでモノが集まる場ってなかなかないですから、ぜひ楽しんでもらえたらと思います。

林 九州で新しいことがはじまってるっていう雰囲気が、一般のお客さんや関東のほうにも伝染していけば、それが九州の作り手の自信にもつながるでしょうし。僕らも、もっともっと九州の作り手さんと出会いたいですね。

アナバナ 今回もいろんなきっかけが生まれそうですね。2回目の「thought」も期待しています! ありがとうございました。

(文・写真/曽我)

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編集後記

インタビュー中に出てきた、林さんのいう“神憑った4人”の役割とはたぶんこんな感じ。

◎ 藤戸:オピニオンリーダー。自身のブランドが日本全国、海外にも名を馳せる福岡アパレル界の重鎮的存在。経験値も高く展示会のノウハウも豊富。藤戸さんのお店「 Directors 」スタッフ、ミラノ出身ロビーさんも素敵。

◎ 林:関東で築いたメーカー営業のキャリアを活かしたスピード感のある行動力とリーダーシップ力を発揮。熱い兄貴的な存在(たぶん)で、若手や関係者とのつなぎ役にもなっている。

◎ 植村:福岡で路面店を出して10年。そのネットワークを活かして若手を巻き込むという重要なポジションを藤戸氏より任命される。上下関係が生まれるチームにおいて、愛されいじられキャラの存在は大きい。

◎ 南:DMからウェブサイトまで、グラフィック全般を担当。普段は無口だがふと発する一言の重みがハンパない影響力を持つ。デザイン費を内部で消化できるメリットはかなり大きいはず。

キャラクター粒ぞろいではないですか!
これをたまたまと言えてしまうあたりがなんとも憎い。この関係が成り立っているのも、強制されて起こす何かではなく、共通の想いを形にしていくシンプルな出発点があるからこそ。相変わらず肩の力が抜けたみなさんでしたが、展示会への想いは相変わらず熱かった。媚びない姿勢もすてきです。まだ詳細には語られない今後の展開にもワクワクいたします。

(編集部 曽我)

◼︎前編はこちら

◼︎ thought 1st のインタビューはこちら

thought EXHIBITION AND MARKET

衣食住のあらゆる分野において 主に九州内で活動するブランドやクリエイターが中心となっておこなう合同展示会。

[EXHIBITION] 9.18 thu – 19 fri 10:00〜18:00

[MARKET] 9.20 sat 10:00〜17:00

・会場:833スタヂオ(長崎県東彼杵郡波佐見町井石郷2187-4)

・お問い合わせ:thought実行委員会 info@thght.jp

・Facebookhttps://www.facebook.com/thghtjp

◼︎「反響、収穫、考えること(前編) thoughtのみなさんにお会いしましたPart2」前編はこちら


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