2014.5.23(fri) up
もくじ
- 一話 たどり着いた『ロゴ屋』という生き方
- 二話 込められた想いを伝える
- 三話 きこりめしをつくる。
- 四話 これからの一次産業の課題
きこりめしをつくる。
「九州の地域産業活性のお手伝いをデザインで」という目標を持って動き出すと、各地に問題が山積していることに気づいたという。
大分県日田市で発足した「ヤブクグリ」もそのひとつだ。
かつて盛んだった日田の林業が衰退の一途を辿っている。課題は、切り出された木のその先、どのように使われているのかが林業の現場に届いていないこと、そして、日田のたくさんの魅力が外に上手く発信できていないこと。「川上から川下まで」の精神で、日田の林業に目を向けてもらうことが日田の魅力につながると、立ち上がったのが「ヤブクグリ」だ。
画家で編集者の牧野伊三夫さんを中心とした森を愛するさまざまな仲間で結成された。「ヤブクグリ」とは、日田地方から佐賀県にかけて生育する杉の固有種だ。粘り気が強く折れにくい性質に、日田の林業と山の問題解決に粘り強く取組むという意思を重ねて名付けられた。
日田市出身の梶原さんでさえ、「このプロジェクトで苦労したのは地元の人との距離感」だったと話す。
地域産業に関わろうとする時、古い習慣や地域独特の閉鎖的な風習からか、外から入ってくる人を警戒する空気を必ず感じるという。一筋縄ではいかない。「デザイン云々より、その壁を壊すのが一番大変だったかもしれない」、そう語る梶原さんだが、発信される活動のようすはとても楽しそうに映る。活動の始まりに、杉丸太で組んだいかだで三隅川の川下りをした。ユニークなアイディアや肩の力を抜いて取り組むその姿から、一次的な思いつきでない長くこの課題と向き合おうとする姿勢が伝わってくるようだ。
△杉丸太いかだの川下りは映像でもご覧いただけます!
そして、「名産品係」に任命された梶原さんが着手したのが、「きこりめし弁当」だ。会で集めた活動資金が底をつき、牧野さんが「資金繰りのために弁当を売ってお金を貯めよう」とアイディアを出したのがこの企画のきっかけとなった。 「きこりめしは、メッセージ弁当なんです」と梶原さん。コンセプトは “日田の林業のPRにつながるもの” だ。ふたを開くと木の香りがする弁当箱は、杉の薄材をわっぱにした。日田産の食材がゴロゴロと顔をのぞかせる。丸太のような大きなごぼうは、付属の杉ののこぎりでごりごりと切り分けるという、きこり体験も味わえる。なんともユニークな一品は、地元の料理店「寳屋」のご主人が調理してくれる。割り箸の包み紙は、「今、森を見よ」という林業の現状を伝えるオリジナル新聞になっており、2話、3話と続く予定だそう。
声高に林業の問題を叫ぶのでなく「楽しみながら真剣に取り組む」ことがメンバーの共通意識だ。「そうすることで人々の関心を呼ぶし、周りを巻きこんでいけると思うんです」と梶原さんは言う。
ヤブクグリの活動は、グッドデザイン賞を、「きこりめし弁当」は2013年度のADC賞を受賞した。
その活動は市長まで巻き込んだ大きな流れになりつつある。外部から評価されることで、少しずつではあるが町が活動に理解を示すようになったのだ。次なる計画は、日田杉を使った屋台を福岡へ持っていくことだそう。これから先、日田から日本全国の林業を営む地域へと横へネットワークを広げ大きな動きにしていくことを夢見ているという。
もくじ
- 一話 たどり着いた『ロゴ屋』という生き方
- 二話 込められた想いを伝える
- 三話 きこりめしをつくる。
- 四話 これからの一次産業の課題