熊本地震から3年目の春を迎えた2019年4月14日・15日の2日間、熊本市の中心地にある江津湖(えづこ)で、防災について学び体感するイベント「防災スクール 江津湖キャンプ」が開催されました。主催したのは、「江津湖Living」にて、マルシェや音楽・アートのイベントを手がける「江津湖魅力化推進協議会」の方々です。
「江津湖Living」第1回目の振り返りレポートについてはこちら
自然の中で楽しみながら学び、体感する「防災」
「自然の恵みのなかには、“まさかの時”を助けてくれるものがいっぱいあります。この2日間で、その恵みをたくさん探してくださいね!」。
参加者に向かってそう話してくれたのは、防災教育を行うNPO法人「ソナエトコ」代表の水野直樹理事長。今回、協議会メンバーとともに、体験プログラムを手伝ってくださいました。
実は熊本地震発生時、江津湖は意外な“役割”を果たした場所の一つでした。水野さんの話によると、とある保育園の副園長先生が、クレソンを探しにきて、それを炊き出しに使ったり、近所の方が湧き水を持ち帰って、生活用水に使ったり。
そして私ライター・福永も、本震の翌日に江津湖の湧き水を汲みに来た一人でした。被災して意外に困ったのが「生活用水」に使う水。手を洗ったり、お米を炊いたり、トイレやお風呂に使ったり…。日常生活でいかに多くの水が使われているか! あれほど実感した時はありません。この湧き水の情報をすぐSNSに載せたところ、瞬く間に多くの方にシェアされたことを思い出します。
火起こし、EVカー、防災食…。
「非日常」の江津湖が新鮮!
「江津湖CAMP 防災スクール」は、ふつうのキャンプではありません。2日間で実施されたコンテンツは、必要最低限の道具だけで火起こしをおこなう究極のアウトドアスタイル「ブッシュクラフト」の体験や、ペットボトルだけを使ったピザづくり、アルファ米やフリーズドライの味噌汁などの防災食の紹介など、いざという時に役立つ知識ばかり。日が暮れるとEVカーから電気をまかなって照明をつけて、夜を過ごしました。
ちなみに私が参加したのは、ブッシュクラフトとペットボトルを使ったピザづくり。「本当にペットボトル1本でつくれるの?」「あ、見て見て、火がついた!」などなど、子供たちの元気な声が飛び交いました。江津湖の自然のなかで、普段とは違う不便さを満喫している様子で、まさにこれが、楽しみながら体感する防災だなぁと思いました。自由時間には、家族で「あの日」について思いをはせたり、備えについて話し合ったり。キャンプという「非日常」を、江津湖という市民におなじみのフィールドで体験することで、ごく「日常」の景色になっていることが不思議でした。
防災スクールのリーダーである山本英俊さん(ハーツライジング)は、「今回(1回目)はまだ実験的な実施ですが、開催できたのは『江津湖Living』の成功があったからこそ。このスクールが、家族の絆を深めるきっかけになれたら嬉しいですね」と話します。
さらに印象的だったのが、「非日常の環境に身を置くキャンプは、一人ひとりの“生きる力”を育む場になる」という水野さんの言葉。防災について楽しみながら学び、考えること。地震の教訓を生かし、自然のなかで生きる力を育むこと。江津湖の豊かな自然環境のなかで、そんな視点をもつことが大事だと改めて気付かされた気がします。
そして! 第3回目となる「江津湖Living」の開催が5月12日(日)に決定しています。今回の防災スクールのフィードバックも生かしつつ、絶賛準備中とのことです。協議会の皆さんの江津湖愛とともに、どんどんパワーアップしていく江津湖の風景に会いにきてくださいね!
(取材・文:ライター・福永あずさ、写真:haco/平田克広)