イベントレポート

漁師ってカッコいい!鹿児島県甑島で全国初開催!「漁師×デザイン」イベントKOSHIKI FISHERMANS Fest へ行ってきました

「甑島で漁師さんのイベントやります!絶対に来てください!」威勢の良い言葉とともにメッセージをくださったのは、東シナ海の小さな島ブランド会社に所属する安藤淳平さんでした。アナバナで度々登場いただいている同社代表の山下賢太さんの右腕のような存在となって、鹿児島を盛り上げていらっしゃる人物からのお誘いです。

イベントのタイトルは「KOSHIKI FISHERMANS Fest」。なんでも、“漁師×デザイン”をテーマに、「漁師の魅力をデザインの力で捉え、世の中へと発信する 」というもの。ロゴもネーミングも洒落てます。なにより、フェスには楽しそうな企画が盛りだくさん。甑島漁業協同組合所属の漁師さんたちによる浜焼きの実演もあるというのですから、こちらのテンションだって否が応にもあがってしまいます。

ということで、“漁師×デザイン”をテーマにした全国初の試みを見逃すまいと、甑島へ行ってきました! 今回は当日のレポートと、主催したみなさまへのインタビューを2話に分けてご紹介します。

膨れ上がる期待と妄想のひとときを船内で満喫しているとアナウンスが。どうやら甑島に到着のようです。

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海からみた甑島。透明度の高い海に驚かされます。美味しい魚がたくさんいるんだろうなあ

漁師が振る舞う炭火焼きで、海の幸を豪快に味わいつくす

甑島は九州本土から約45キロ離れた東シナ海沖に浮かぶ離島です。現在約5000人の島民が暮らしており、キビナゴやタカエビ、アジを始めとする漁業が盛んで、近年では甑島漁業協同組合が、同じく島内の里漁業集落・長浜漁業集落と相次いで農林水産大臣杯にて天皇賞を受賞したことでも注目を集めました。そんな島の漁師たちを主役に迎えた今回のイベント。会場に到着して一番の印象は、とにかくおしゃれ!「漁師の魅力をデザインの力で捉える」という コンセプト通り、会場を彩るガーランドやロゴの入った旗はシンプルに青と白に統一され、木材でくるりと丸く建てられた浜焼きスタイルの小屋が、まるで優しく両手を広げているように出迎えてくれました。すでにたくさんの人で賑わう会場では、魚を焼く漁師さんたちの周りに、熱気がムンムンと立ちこめていました。

早速今回のイベントの主催者で、「東シナ海の小さな島ブランド株式会社」で代表を務める山下賢太さんにご挨拶。人懐っこい笑顔を顔いっぱいに浮かべながら、「まずは美味しいお魚を食べて、会場の雰囲気を楽しんで下さい」と気さくに勧めてくれました。それならば早速お言葉に甘えて、香ばしい香りのする方へ。

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会場は中甑港の桟橋。海の香りと潮騒が心地いい。ガーランドの縄紐は実際に漁で使われているものらしい。

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たくさんの人たちで賑わうBBQコーナー。水揚げされたばかりの魚介類が並び、「おいしい!」と大きな歓声が聞こえてきました

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嬉しそうに会場を見守る山下さん。まるでわが子の成長を見守るよう

「殻ごと食べたら美味いよ!」と、漁師さん自らが目の前で炭火焼きしてくれた甑島産のタカエビを手渡しで頂きます。教えられたまま豪快に頭からガブッとかじりつくと、炭火ならではの香ばしい風味が鼻を抜け、えび味噌の濃厚でまろやかな味が口いっぱいにジュワッと広がります。身はほんのりと上品な甘さが香り、一口かむほどに旨味が噴き出すようで、あまりの美味しさに思わず目尻が下がります。そんな表情を見た漁師さんも、「そうだろうそうだろう」と嬉しそうに笑ってくれました。

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素材の味をそのままに、シンプルに軽く塩をふるだけ。獲れたてのエビをすぐに炭火焼きで食べられるなんてこれ以上の贅沢はありません

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手慣れた手つきで次から次にと焼いていく漁師さん。いくらでも食べられます

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トビウオも豪快に手渡し。「トビウオの姿焼きなんてほかじゃあ食べられないよ!」と漁師さん。香ばしくって塩加減も絶妙。美味しかった!

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はふはふ。

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鹿児島市内からやって来たお二人。「お魚は美味しいし、漁師さんもとっても温かくて楽しいです」

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甑島で古くから親しまれるスィーツ「かっぱ焼き」。黒砂糖のほんのりした甘みとシナモンの香りが絶妙なバランスで、しっとりとした食感がくせになります

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島のご夫人。「こうやって賑やかな場所に呼んでもらえるのがすごく嬉しいです」

会場でお声がけさせて頂いた来場者の多くは島外の方々でしたが、まるで昔からの友人のように、漁師さんやそのご家族と和気あいあいとおしゃべりしているのに驚きました。初めは正直、「漁師さんって、とっつきにくいのかな・・・」というイメージがありましたが、実際に話をしてみるととても親しみやすく、会場のあちこちで大きな笑い声が起きており、 和やかで心地のいい雰囲気が会場を包み込んでいました。

優しい浜風に吹かれながら、つい時が過ぎるのを忘れて話し込んでしまいます。このまま時が止まればいいのに、と子供の頃に戻ったような懐かしさを感じました。

デザインの力が人と人をつなぐ

今回のイベントでもう一つの目玉が、「OSHIKAデザインかごしま『島の漁師の大漁旗』編」です。「OSHIKAKEデザインかごしま」とは鹿児島県内で活躍するデザイナー団体で、“求める声のないところにこそデザインの力を”をコンセプトに活動しています。自治体や施設、商店街、地元住民と共同作業を行い、イベントなどで完成したデザインを発表。街がデザインの力で元気になれるお手伝いを無償で行っています。今回は鹿児島市内でデザイン事務所を営む馬頭さんがホスト役としてデザイナー陣を率い、島の漁師さんたちとともに大漁旗を制作。この日は晴れてお披露目となったのです。

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「OSHIKAデザインかごしま『島の漁師の大漁旗』編」ホスト役の馬頭亮太さん

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初めて目にする大漁旗に嬉しそうな漁師さん。デザイナーさんが制作に込めた想いを語ります

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「こんな立派なものを作ってもらってとても嬉しいです」と漁師の濱さん。「そう言ってもらえてほっとしました」とデザイナーの和田さんがはにかんでいました

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長男の太洋君が描いた漁船をモチーフにしてデザイン。立派な仕上がりにお父さんも嬉しそう

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オリジナリティー溢れる大漁旗が並ぶ姿は圧巻。これから甑島の海が華やぎます

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会場の真ん中に掲げられた大漁旗を眺めながら、音楽の生演奏にまったりと聴き入ります。

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鹿児島県出身で、現在東京で会社員をしている松薗美帆さん。山下さんの活動をウェブで知り、2ヶ月前から実行委員に参加しているそう。「ゆくゆくは鹿児島に戻って子育てをしたいと思っています」

島の漁師、デザイナー、ミュージシャン、島のおばちゃん、県外で働く人など、様々な職種やバックグラウンドを持った人たちが手をたずさえ、思い思いの形を表現する。一人一人では小さく閉じられていた世界が、誰かとつながることでパッと目の前が開け、今まで見たことのない景色が広がる。端から見たら大きな変化ではないかもしれないけれど、そこには確かな手触りとして、誰かといることの温もりを感じる。会場での皆さんの笑顔を見ていると、そんな人と人とのつながりが持つ豊かな可能性を垣間みた気がしました。

「KOSHIKI×SANRIKU」漁業の未来を語るお話会

日もすっかり暮れ、夜の部の始まりです。トークイベントのゲストとして山下さんが招いたのは、長浜漁業集落でタカエビ漁を操業する漁師の下野尚登さんと、宮城県石巻市にて活動する「一般社団法人FISHERMAN JAPAN」で事務局を務める島本幸奈さん。地元・甑島で長く漁業を営み、加工品製造などで天皇杯に輝く手腕とバイタリティーを持つ下野さんには島の現状と可能性を、島本さんには東北を中心とした日本の漁業のこれからについての話し合ってもらうことが今回の目的。その会話の中から見えた、島の課題と新しい漁業のあり方をみんなで考える会となりました。

東日本大震災で壊滅的なダメージを受けた東北において、これからの漁業はどうあるべきなのか、非常に高い比率で過疎化が進む甑島において、島の漁業を発展させて行くにはどうすればいいのか。お互いの日々の活動や想いを伝え合いながら、未来に向けて今自分たちができることは何なのかを話し合います。

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島内外からたくさんの人が集まりました。みなさん真剣に話に聞き入ります

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FISHERMAN JAPANの島本さんは新しい漁業のあり方として、新3K(カッコイイ、稼げる、革新的)をコンセプトに掲げます

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「値段の底上げをするためには付加価値を付けなければなりません。そのため漁師も自分たちで情報発信をしなければならないと思います」と下野さん

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来場者も積極的にディスカッションに参加していました

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最後は盛大に、島の魚とお酒がところせましと並びました

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甑島名物きびなごのお刺身。キラキラと宝石のように輝きます

お二人の話しを通して改めて感じたことは、人と人が顔を合わせてつながることの大切さです。今回甑島と石巻の水産関係者が互いの想いを伝え合うことができたということも、これからの漁業に新しい光が射したような気持ちになりました。「自分たちが獲った魚を持ってお店に出向き、お客さんに自分たちの物語を語りながら手渡しで売ると、お店の人がびっくりされるほど売れるんです」と下野さんは言います。その商品を提供する人はどんな人なのか、その人がどんな想いで日々の仕事に向き合っているのかを知ることで、ただ漫然と消費するだけでは決して分かり得ない、新たな価値に気がつく。そしてその物語に共感する人が現れ、お互いを尊重し合えるからこそ、こうしてたくさんの人が集い、今回のイベントも実現できたのでしょう。

今の課題から未来への可能性を拓く予感を、この島のこのイベントを通して感じる事ができました。これから皆さんがどんな新しい未来を築いていくのか、とても楽しみです。

後半のインタビューへ続きます〜

(文/下原宗総、写真/田村昌士)


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