特集「日々のてまひまの日々」第6話でご紹介した福祉施設『studio nucca』さんが描く賃貸物件へのウォールアートがいよいよ完成間近とのことで、11月の終わりの週末におじゃましてきました!
オーナー気分で描く街
ウォールアートの原画として採用されたのは『studio nucca』のアーティスト石井さんのイラストです。学校やマンション、銀行、コンビニ、飲食店などの建物に、車や自転車、ハッピーなメッセージを放ちながら飛んでいる飛行機など、見ているだけでワクワクする街並みが軽快なタッチで描かれています。「僕が土地のオーナーになったつもりで描きました」と石井さん。「どんな建物があれば儲かるかな? どんな街なら人が集まるかな?」と想像を膨らませて、気負わず楽しみながら建物や乗り物を描き加えていったそうです。
真っ白な階段室の壁をキャンパスに
石井さんのイラストを配置する場所が決まったら、まずは現地の階段室に『studio nucca』の利用者さん達で下絵を描きます。階段室の左右の壁が今回のキャンパス。ここにプロジェクターでデザイン画を投影して、鉛筆で下絵のラインを描いていきました。これがなかなか至難の技。なんせ幅1メートルほどの狭い階段室、利用者さん自身の身体が影になって、デザイン画が見えなくなってしまうのです。「自分の影ができないようにしながら下絵を描くのが一番大変でした」と石井さん。みなさん、かがんだり横を向いたりとそれぞれ体勢を工夫しながら下絵を描かれていたようです。
利用者さん2人が1チームになって、毎日交代で下絵を描く作業をしていきました。作業が続くにつれ、居住者の子ども達が「なんの落書きしよると?」と話しかけてきたりして、地域のみなさんと触れ合う機会も少しずつ増えていったようです。
子ども達と一緒に描く 公開ウォールアート
利用者さん達が下書きをしている姿を羨ましそうに眺めていた子ども達。いよいよ「待ちに待った」公開ウォールアートの日がやってきました。小学生を中心に20名近くの参加者が集まり、朝早くから「待ちきれない!」様子でソワソワ。現場はとても賑やかです。はじめこそふざけ合っていた子ども達ですが、いざウォールアートを描き始めると真剣そのもの。ひたすら無言で集中していました。
アトリエ内での個人作業が多くなりがちな利用者さん達ですが、この日はお互いにフォローし合いながら、協力して描き上げていく姿がたくさん見られました。子ども達の元気に圧倒されつつも、いつもとは違う雰囲気を楽しんでいたようです。
公開ウォールアートは、施設の利用者さんと子ども達とのふれあいだけでなく、居住者さん同士が繋がる場ともなっていました。「はじめて小学生のお兄ちゃん達と遊んだ」という小さな男の子もいて新たな交流も生まれたようです。自分たちの住まいに壁画を描くことで、マンションへの愛着も沸いたのではないでしょうか。
自分たちの手で少しずつ完成されていくウォールアートの街並みを目の当たりにして、利用者さんも子ども達も感慨深い様子。あとは微調整をして12月中旬には完成する予定です。
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(取材/いはら)