博多志賀島 干物かつやま

[出品者情報]

博多志賀島 干物かつやま
福岡県福岡市東区志賀島870
URL http://katsuyama-shouten.com

[商品]

  • 魚干物[水産加工品]

決め手は魚の質と塩加減

よくできた干物を食べると、昔ながらの保存食としての価値を超えて、魚をより美味しく食べるための知恵だと気付かされることがある。「かつやま商店」の干物は、まさにそんな干物だ。

まず欠かせないのが“質の高い魚”。かつやま商店で取り扱うのは、世界有数の漁場・玄界灘で獲れた鮮魚。その時期もっとも美味しい旬の魚を目利きの仲買人とともに仕入れ、その日のうちに自社の保冷車で志賀島の加工場へと直送する。ウロコ取りからはじまり、オサ(カマの内側)取り、身をサッと開いてワタを取り除き、ブラシで丁寧に水洗い。魚にキズをつけないように正確さと丁寧さにこだわり、すべてが手作業だ。多い時期は、日に2千尾ほどの魚を開くこともある。

味の決め手となるのは、塩の塩梅。かつやま商店では、天然海水塩以外の添加物はいっさい使用せず、熟練の職人たちが手で塩を振る伝統的な「撒き塩」と呼ばれる方法を貫く。魚の種類や大きさに応じた絶妙な塩加減によって魚のうまみをぐっと引き出し、ほどよく水分が残ることで焼き上がりもふんわり柔らかい。また「干し」で水分量を調整し、干物ならではの深みのある味わいを生みだす。

干物の王道アジ、カマス、サンマから、アラカブ、トビウオ、メヒカリ、イカなど、一年を通じて加工する干物の種類はじつに50。四季折々さまざまな味が楽しめるのも嬉しい。

左:太陽の下で数時間乾燥させることで、ぐっと旨みが引き出される/右:加工に用いる道具は3つのみ。左からウロコ取り、オサを取るための竹ヘラ、そして包丁

よく「塩振り3年」というが、かつやま商店の職人たちも、魚の種類や大きさを見極めて匠に塩を振っていく

一回凍結の”ワンフローズン”で魚の鮮度を閉じ込め製品となる。そのまま焼けば、いい塩梅の身しまりのよい魚が味わえる

新しい干物の可能性とは?

かつやま商店があるのは、玄界灘に浮かぶ金印の島・志賀島。1955年、地元で獲れた魚を自宅で開いて干物にし、島の外で売ったのがはじまりだ。その美味しさが徐々に評判を呼び、島の内外から干物の加工を任されるようになって60年あまり。無添加で天日干しという自然な味を追求しながら、その信用を守り続けてきた。

70〜80年代には、漁閑期に何かできないかとフグの皮を剝いでつくる「ふぐ提灯」の製造・販売でも一躍有名に。その後ふたたび干物に特化し、現在は福岡市内の百貨店や島内にある商店での直売、ネット販売に力を注ぐ。2011年には福岡の中心部に海鮮居酒屋「かつやま」をオープン。美味しい干物をより多くの人に食べてほしいという思いを原点に、干物の魅力を日々伝え続ける。

常務取締役で営業部長の勝山洋さんは、干物を通したユニークな取り組みを模索する若き3代目。食にまつわるマーケットをはじめ、一風変わったイベントにも積極的に干物を出品してきた。一例に、志賀島のカフェ兼レンタサイクルスペースが主催したツーリングイベントへの出品がある。「干物と自転車」という一見ちぐはぐな関係だが、「ぜんぜん違うものどうしだからこそ、干物に注目してもらえるチャンス」と、目線の先にあるのは常に新しい干物のあり方。魚ただ加工して販売するという従来の干物の姿ではなく、現代ならではの新しい干物との関わり方をつねに模索している。

左:勝山洋さんは、干物の美味しさを広めるために日々奔走するかつやま商店の3代目/右:志賀島の勝山商店の加工場。「干物」の2文字が、創業60年の歴史を感じさせる

世界一の好魚民族・日本人を取り戻す

長年の潮の流れにより形づくられた砂の橋「砂州」で陸地と結ばれた志賀島。玄界灘の力強い荒波に揉まれた身の引き締まった魚が流れ込んでくるとともに、おだやかで栄養分が蓄積しやすい博多湾にはワカメなどの海草類も豊富なことから、古く漁業の盛んな島として知られてきた。海に囲まれたその地形はまた、太陽の光をさんさんと浴び潮風を誘い込む、干物づくりにはうってつけの地だ。

「この島でつくられた最高の干物を、若い人たちにも食べてほしい」と、勝山さんは意気込む。若い世代の食卓に魚料理がのぼる回数がダントツに減り、比例して魚が苦手な子どもが増えている現代、「魚の丸焼きを見たことのない子どももいるんですよ」と、その状況に危機感を隠せない。箸で骨を取るのが億劫な子どもたちのために、あらかじめ骨がすべて取り除いてある加工品も出てきているという。「そうではなく、生の魚を目の前で焼いて、食べる。昔から身近にあった日本の文化を伝えていきたんです」。長いあいだ海とともに生きてきた日本人にとって、魚を食べることはひとつの文化なのだ。

現在勝山さんは、島の加工場そばに“牡蠣小屋”ならぬ“干物小屋”をつくることを構想中。島に遊びに来た人たちが気軽に立ち寄り、目の前の炭火で焼いた干物を、海を眺めながら食べる、そんな場所だ。「日本人ってやっぱり魚が大好き。この当たり前の日常を取り戻したいですね」と、朗らかに笑う。

志賀島より博多湾を望む。海とともに暮らす人々が日々眺めている景色だ

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