ここく

[出品者情報]

ここく
宮崎市清武町池田台北34-81
URL http://cococu.jp/

[商品]

  • 麦味噌、むかし麦茶、ごはん麦[農産加工品]

素材を引き出す、手間ひま製法

シンプルであたたかみのある、「ここく」さんの商品。「麦みそ」は旨みと香りを優先した、やさしくまろやかな味わい。お味噌汁にしていただくと、野菜の自然な甘味が加わり、よりマイルドなおいしさが感じられる。麹を普通のお味噌の倍は加えるという、昔ながらの製法で、甘くまったりとした口当たりと、香り高い味わいが生まれる。

ごはんに混ぜて炊くと、ぷちぷちした食感が得られる「ごはん麦」は、子どもたちにも人気だそうだ。驚くのは「むかし麦茶」だ。これまで「麦茶」と認識していたものとはまったく別モノ。加藤さんが作る麦茶は、麦殻が手で簡単にはがれる「裸麦」を使っているため、麦本来のやさしく甘い味わいを楽しむことができる。また、お茶を煮出したあとの出がらしの麦が食べられるのもうれしい。挽肉と混ぜて炒めたり、鳥団子にしたり。サラダやカレーに加えるなど、コーン替わりに触感のアクセントにするのがおすすめだそうだ。

「麦みそ」「ごはん麦」「むかし麦茶」の大豆と麦も、加藤さんが一人で育てている。全て自分で育てたい、作りたい。無農薬栽培にこだわり、一つひとつの作業を自分で行うため、たくさんの量をまとめて作ることができない。そんな中でも、守るべきところは頑として守り、自然と対話しながら効率化を図っている。

麦味噌、ごはん麦、むかし麦茶。パッケージは凝り過ぎず、わかりやすいデザインにしているそう。デザインもすべて加藤さん自身が手がけている

大豆の選別はすべて手作業。効率化を図るために、今後は大豆の選別機や麦の乾燥機の導入を検討中だそう

探し求めた、宮崎生まれの種との出逢い

加藤さんは静岡県浜松市のご出身だ。宮崎で農業を始める前は、横浜市でウェブデザイナーとして働いていた。現在も農業と並行してグラフィックやウェブのデザインの仕事をされている。

農業とは無縁の世界にいた加藤さん。デザイナーとして独立して6年ほどたった頃、当時広告関係の仕事を主にこなしていた加藤さんは、お客さんの顏や反応を直接見ることができないことに、虚無感を感じ始めていたという。そんな折、奥さんの実家である宮崎県小林市に遊びに行く際、羽田空港で手にした一冊の本が人生を変える。

「その本には、知らないことがたくさん書いてありました。大豆と枝豆が違うこと、コーヒーのポーションはミルクではないこと。今考えると、偏ったことも書いてありましたが、とても衝撃を受けたんです」。

本当に大切なことを伝えていかなければと考えるうち、環境についても知識を得て、「自分で畑に立ちたい」という想いが生まれてきた。デザイナーの仕事は続けつつ、農業の勉強も開始。上のお子さんが就学する2012年に、宮崎移住を計画していた矢先の2011年3月に、東日本大震災が起きたのだ。スーパーの買い占めや計画停電、原発。お金があっても何もできない状況に、「自分で作れるようになりたい」と強く思った加藤さんは、1年計画を前倒しして、家族で宮崎へ移住した。1年間の農業研修を受けたのち、ようやく畑を借りて農業を始めた。

農地も農機もすべてゼロからの出発。ハウスも見よう見まねで一人で組み立てたそう

加藤さんがまず作りたかったのは味噌。原料には大豆、そして米か麦が必要だ。

それを、宮崎の純粋な大豆の種で作りたいと考えていた。長い時間をかけて受け継がれてきた「おはなし」のある種だ。知人の紹介でようやくたどり着いたのが、高千穂町土呂久(とろく)に暮らすシンイチさんだった。集落で大切に受け継がれてきた「麻尻(あさじり)大豆」。普通の大豆よりも少し小さく平べったいその大豆を無償で五合ほど譲り受け、「実ったら倍にして返します」と約束し、そこから大切に育て、増やしていった。

いっぽう、手がかりがなかなか掴めなかったのが麦の在来種だったそう。ここならあるかと尋ねても、「うちにはない」と相手にされない。新規就農である加藤さんの足下を見られ、種をもらうことができなかったこともあった。県内中を探しても、「昔はみんな作りよったけどな…」と懐かしがるばかり。そんなある日、宮崎県椎葉村に『平家祭り』を見に行ったところ、物産館の直売所に裸麦が。その場でラベルにあった番号に電話してみると、やはり在来の裸麦。唐突だったが、譲ってほしいと無理を承知でお願いしたところ、なんとすぐに持ってきてくれるとのこと。1時間後、杖をついて現れたおばあちゃんは、無償で一袋の種籾を譲ってくれたそうだ。帰ってからお礼の手紙を書き、その後も交流は続いている。こうした、必然ともいえる人と人との縁によって手にした種により、加藤さんのおいしいここくの麦みそが生まれたのである。

訪問した時、畑一面に裸麦の苗が植わっていた。加藤さんの畑がある清武町は海、山が近く、恵まれた地形でもあるそうだ。生産量を増やすべく、現在農地を広げる計画もある

個と個で繋がり、濃くなるから「ここく」

大豆や麦も自分で作っている加藤さん。お味噌作りに欠かせない塩は、青島沖の海水を平釜に入れ、薪をくべて抽出する、平田さんの「ひむかの塩」を使っている。麹菌は、地元のカネコミソさんの協力を得て商品として販売中である。はじめは全部自分で作りたいという気持ちが強かったけれど、今は自分で作ることが大事なのではなく、人との関わりが大事だったと気付いたという。

「どんな農法かということよりも、どんな人がどんな気持ちで作っているのか。自然とどう向き合って作っているかというところを見てほしいと思っていて。日々あったことをフェースブックやウェブサイトで伝えています。農業をはじめて4年、自分が生態系の中にいることを実感できるようになりました。自然の営み、その流れの中に自分が入っていくことで、畑も自然と応えてくれるような感覚を感じています」。

加藤さんは、「野良!」という屋号を掲げて、ワークショップや田んぼの中のライブイベントを企画する活動もされている。きっと加藤さんが普段感じている、自然の営みの中の一部であるという感覚を共有できる時間が流れているのだろう。

現在、麦みそとごはん麦、そしてその時期に収穫した無農薬野菜のセットを毎月30日(みそか)に「みそみそびん」の配達も行っている。顧客に直接会って渡すことで、相手の生活スタイルや家族構成までイメージできる。すると、届ける野菜をどれにしようかと相手の顔を思いながら手を進められる。消費者にとっても、生産者の顏が見えることで、より安心感を得られる。配達に行くと、子どもさんが「ありがとう!」と言ってくれたり、お礼の手紙を書いてくれたり。そうした温かいやりとりが、加藤さんの農業への原動力になっている。

加藤さんがお礼に届いた手紙を嬉しそうに見せてくださった。「おいしかったよ」「いつもありがとう」何気ないささやかなメッセージに心が温かくなる

ごぼうや四角豆、在来種の米良大根など、加藤さんの畑で収穫される旬の野菜をみそみそ便でセットでお届け中だ。宮崎市内限定です!

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