合鴨家族 古野農場

[出品者情報]

合鴨家族 古野農場
福岡県嘉穂郡桂川町寿命824
URL http://aigamokazoku.com

[商品]

  • 季節の野菜[青果]
  • 合鴨米、合鴨玄米、ハダカムギ[穀類]

その米、野菜。わが子や孫に食べさせたい?

「合鴨家族」に朝がきた! 嘉穂郡桂川町で「合鴨家族 古野農場」として、完全無農薬・有機栽培の農業を営む古野家。その朝は、いつも6時半からスタートする。古野家3世代+研修生で、朝ごはんの食卓を囲むのだ。

食卓のいちばん奥に座るのは、古野隆雄さん。「合鴨家族」のリーダーで、世界にその名の知られた合鴨農法の第一人者だ。それでいて、みんなの茶わんに玄米ごはん(もちろん合鴨米!)をよそってくれる優しいお父さんでもある。キッチンで、にんにくの入った特製豚汁をつくっているのは、お母さんの久美子さんが筆頭の女性陣。手作りの白菜漬け、にんじんの粕漬け、生にんじんジュースと、うまいもんに変身した自家製の野菜を、次から次に食卓へと繰り出してくる。味噌だって自分たちで仕込んだ、自家製米味噌だ。米麹も「合鴨家族」の田んぼでとれた合鴨米でつくる。

合鴨米や野菜、この日みなさんが食べていた加工品は「合鴨家族」の商品になる。近所の商店街で売ったり、福岡市まで宅配したり、インターネット通販の半分は首都圏からのオーダーという人気ぶりだ。それでも「いちばん根っこにはね、『自分の子どもや孫に食べさせるためにつくりたい』って思いがあるんですよ」と隆雄さん。久美子さんもうなずく。「人の為(ため)と書いて、偽(いつわり)って読めるしね(笑)。まずは自分たちのためがいい」。子や孫のために育てたと胸を張れる米や野菜。そっちの方が信頼できるに決まっている。だから、いちばんおいしいものは、大切な家族のために。私たちが購入するお米や野菜は、「合鴨家族」からのおすそわけという感覚で受け取ればいい。嘘偽りのない、まっとうな食のおすそわけだ。

炊き立てほやほやの玄米は「合鴨家族 古野農場」の合鴨米。これを炊飯器に寝かし、発酵玄米にしていただく

玄米をよそってくれたのは、父であり合鴨家族のリーダー古野隆雄さん

玄米ごはんに合わせるのは、豚汁や和え物、漬物など。早起きの胃袋にはやさしく温かい

畑で引っこ抜いてきたばかりの玉ねぎ。試食は厚めのスライスで。歯ざわりシャクシャク、果物みたいな甘さがあってびっくり

「合鴨家族」の野菜で作った調味料もうまい。そそるラベルは次男・泰治郎さんの妻・サハラさんが考案

子のUターンで合鴨家族はつよくなる

1978年当時、“超”がつくほどめずらしかった完全無農薬・有機栽培で、農業をはじめた古野隆雄さん。久美子さんと結婚してすぐの頃はまだ土づくりも途中の段階。野菜が大きく育たず、収入は当然ギリギリで、贅沢なんて夢のまた夢だったそう。妻「こんな状況で私たち食べていかれるやろかー?」。夫「食べもん作っとるけん、食べていかれるやろー」。妻「たしかにね!」。せっぱつまっているのか、のんきなのか。そんな会話を日々交わしつつ、雑草取りに追われて、暗くなるまで家に帰れなかった。

1988年、富山県に暮らしていた故・置田敏雄さんに「合鴨除草法」を教えてもらうが、失敗はまだまだ続く。1990年、隆雄さんは田んぼに電気柵をはり、「合鴨水稲同時作」の技術をどうにか確立。人間は、除草剤も雑草取りの労力も使わなくてOK。合鴨は田んぼの雑草や害虫を食べてすくすく育つ。そして稲は合鴨のくちばしでつつかれて丈夫に成長するという好循環がまわりはじめた。隆雄さんはいつしか合鴨農法の第一人者となり、海外にまでその技術を広めていくようになる。

田んぼや畑をフィールドに日々工夫を重ね、自分たちの人生をつくっていく父母。その姿を幼い頃から眺めていたからだろうか。大学の農学部を卒業した息子ふたりと次女は今、農場の一員となり、文字通りの「合鴨家族」として頑張っている。離れて暮らす娘ふたりも農や自然と近い生活を送っている。お嫁さんたちも子育てしながら農場を盛り立ててくれる。「あれに取り組み、これを工夫して、自分の人生をデザインできる仕事がお百姓だと思ってますよ」と久美子さん。隆雄さんとふたりで土づくりをしてきた田畑が次の世代にまでつながることになり「ホントよかったよねえ」と目を細める。

古野隆雄さん。2000年、スイスのシュワプ財団より「世界で最も傑出した社会企業家」のひとりに選出された。その農法は世界から注目されている

長男の隆太郎さん。大学卒業後、大手企業で営業職を経験。父・隆雄さんはもちろん、いろんな農家さんをふらり訪れ、農業を学ぶのが趣味だそう

隆雄さんの妻・久美子さん。社会のために自分も何かしたいと考えていた頃、隆雄さんとお見合い。「自然のため、人のためになる農業をやりたい。そんな夢を持っている人なら…!」と結婚。おひざの上には孫の桃代ちゃん

これからは「もっとせまく」がキーワード

前述のとおり、「合鴨家族」の米や野菜はいろんな場所で食されている。車で15分ほどの飯塚商店街で週2回の販売を行っているし、近所のスーパーにも卸している(「合鴨家族」コーナーがある!)。福岡市へも配達に行き、通販の送り先の半分は首都圏だ。それでも値段は良心的。たとえばこの日は、キャベツ1個が200円と普通の野菜と変わらない。「無農薬野菜をお金持ちのための特別な食べ物にしたくない」。そんな気持ちも後押しする。

長男の隆太郎さんに「合鴨家族」のこれからを聞いてみると「活動を、もっとせまいエリアに絞り込めたらいいなあと思っています」と意外な答えだ。東京や海外に進出して手広く…というスタイルは特に狙っていない。シンプルに「あんたの野菜はおいしいきー、食べたかね」「あんたが作った野菜なら買うちゃる」と求めてくれる人を増やしたいという。「田舎の饅頭屋さんがつぶれずに何十年も続いていくでしょう?地元のひとに愛されて、何かにつけて購入してもらえる。だから継続できている。理想はあんな感じの農場ですよ。せまーいところで、深くやっていきたい」。

ちなみに天神イムズ13Fにある「食彩健美 野の葡萄」の本店「ぶどうの樹(福岡県遠賀郡岡垣町)」には、近々、「合鴨家族」の米や野菜が登場予定らしい。イムズのお店でもぜひ!の願いを込めて、3月は「皿の上の九州」に登場してもらいたい。

次女の瑞穂さん。飯塚商店街には週2回出店。まちの奥樣方ともすっかり顔なじみで「今日は卵ある?」「新玉ねぎは葉っぱまで食べられると?」と会話がはずむ

同じ桂川町内にある「菓子工房メルシー」では、合鴨家族 古野農場の米粉を使用したロールケーキを作ってくれている

こちらが古野農場を支える合鴨たち。隆雄さんは合鴨のはたらきを「一鳥万宝(いっちょうばんぽう)」とたたえ、合鴨米でつくった日本酒(瑞穂菊酒造/福岡県飯塚市)の銘柄にもしている

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