花と珈琲 ホキ
植物が持つ凛とした美しさを込める
福岡市にあるちょっと不思議なアトリエ「花と珈琲 ホキ」。扱うのは、ドライフラワーが紡ぎ出す表情豊かな作品と一杯一杯丁寧に淹れてくれる美味しいコーヒー。特に、花々を使った作品は、日常を映画のワンシーンのようなロマンチックな空間に変えてくれる魔法を秘めている。その不思議な魅力はどこで生まれるのか、その秘密が知りたくて、「花と珈琲 ホキ」の瀧山さんの元へ伺った。
アトリエの玄関に入るとまず目に飛び込んでくるのは、材料として使われる約20種のドライフラワー。鮮やかな色を残した花もあれば、少し枯色を身にまとった葉ものやユニークな形の実などもあり、どれも個性豊か。
瀧山さんは教えてくれた。「花は二度生きるんですよ。一度目は植物として生きて、二度目の生はドライフラワーになってから。言わば一度死んだ状態ですが、この状態にこそ訴えかけるものがあるんです。花が持つ儚さや不気味さまで秘めていて。そんな所まで伝えたいと思っているので、ブーケ一つとっても甘くてキレイなだけのものは作りたくないんです」
青い花弁が枯れて少し褐色がかっている紫陽花、ふわふわとした繊毛をまとった植物、不思議な形の木の実。少し毒気をはらんだ独特の美に何かしらのストーリーを感じて、見れば見るほど引き込まれてしまう。
日常を豊かにしてくれる大好きな花で思いを伝える橋渡しをしたい
花に囲まれた喫茶店を営むという夢のため、花屋で働きながら、コーヒーを学んだ。現在の作品も、喫茶店を営業する際に、生花よりも手間がかからず長く楽しめるドライフラワーを選んだのがきっかけ。「花もコーヒーも人間にとっては嗜好品。日常に無くても生きていけるけれど、あれば生活を豊かにしてくれます。例えば、花を買うという行為自体もまだまだ特別感がありますが、一輪買ってコップに飾るだけでも、空間が華やかになります。男性でも、帽子やポケットに花を一輪添えてみると、粋でおしゃれですよ」。気軽に花を取り入れて欲しい、そんな思いから生まれたのが、壁に掛けるタイプの花飾り「ひょろり」。一つでも部屋のアクセントになる上、複数飾ると花のカーテンのようになり、部屋に新たな彩りをもたらす。
また、花には「気持ちを伝える」という大事な役割もある。瀧山さんは、プレゼント用のフラワーアレンジメントやアクセサリーをオーダーメイドで作る時、できるだけ受け取る人の情報を集める。「どんな雰囲気の人なのか、好きな色や花はもちろん、好きな曲とかお部屋の様子まで。その人のことを考えながら、思いが伝わるように一気に作り上げます」。送る人と送られる人の思いをつなげるために、花はぴったりのギフトなのだ。
日常になじむ花のアクセサリー
現在「花と珈琲 ホキ」は、イベントなどで出店するほか、薬院のセレクトショップ「SOMEWARE」でドライフラワーのブーケやアクセサリーを常設販売している。「SOMEWARE」のオーナー宇佐さんにその魅力を尋ねた。「瀧山さんの作品は、色使いがシックで大人っぽい。そして、植物らしさをちゃんと残している点も魅力です。以前ここで開催した個展の時には、山からチェーンソーで笹を大量に刈ってきて、店全体に飾っていたのには驚かされました。その独創的なセンスが面白くて。一ファンとしても、もっと作品を見てみたいですね」
今後、瀧山さんは「花と珈琲 ホキ」としてコーヒーにも力を入れるそう。扱うコーヒー豆は、瀧山さんが大好きな大分県耶馬渓の「豆岳珈琲」の特製ブレンド。「酸味や苦味を目立たせた個性的な味よりも、毎日飲めるような、まろやかですっきりしたフレーバーを目指しています」。花と一緒に日常で楽しめるようにと選んでいる。今後はイベントなどで花と一緒に出店する機会も増やしていく予定だそう。