日々のてまひまの日々

みんながハッピーになれる社会を目指して。ふくしごとサンキューパーティ開催レポート(後編)

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パーティでは、様々なプロジェクトに携わった企業の担当者や福祉施設のスタッフ、障害のある利用者さん達が登壇し、プロジェクトの裏話や思い出トークを繰り広げました。その一部をご紹介します。

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日々のてまひまギフト(ハーブケーキ・クッキー、ハーブソルト)

img-15福岡市が主催する2013年度「ときめきプロジェクト」で、福岡市内の3施設がコラボしたギフトセットを企画。ここから日々のてまひまブランドが誕生しました。

「日々のてまひま、はじまりはじまり」の仕掛け人

福祉施設が魅力ある商品を作っても「流通にのせられない」「販路が開拓できない」などの課題から、なかなか販売がスムーズにいかない。そんな現状を打破してほしいという行政からの要望で、『ふくしごと』結成前に、代表の橋爪さんとデザイナーの先崎さんが関わった、ときめきプロジェクトによる事業。樋口さんによって、このプロジェクトを繋げた『株式会社C.E.Works』の黒松さんが紹介されました。
「施設のスタッフは商品開発のプロではないので、加工方法や見せ方まではなかなか手が回らない。そこをどうにかしたいと言われて、市の事業でありながらも別のブランドとして開発した商品です。『ふくしごと』はここから始まったんだなと、今、あらためて思っています」と感慨深げに当時を振り返ります。
樋口さんは、「行政のプロジェクトって単年で終了するんですよ。せっかくいいものを作っても、福祉施設が売り続けられるためのフォローまではできない」と悔しさをにじませます。この時に抱いた「持続可能な支援体制をつくりたい」という思いがふくしごと設立のきっかけになったそうです。

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九州の商業施設を中心にイベント企画や広告制作などを手がける『株式会社C.E.Works』の黒松さん。ふくしごとの生みの親的な存在です。

 

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九州・アジア経営塾による福祉施設の見学研修

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世界各国で活躍するビジネスリーダーを輩出するための人材育成を目的とした「九州・アジア経営塾」の研修を「工房まる」にておこないました。

企業の若き幹部候補たちを襲った、新たな価値観

続いて登壇されたのが、九州のビジネスリーダーを育てるための週末大学『九州・アジア経営塾』の運営に関わっている福岡大学商学部の田村教授。「ビジネスリーダーといいながら、福祉や障害のことに関しては何ひとつ知らない。社会を知らずしてリーダーになれるはずがない」との理念から、福祉施設での研修プログラムがはじまったそうです。一般企業とはまったく異なる方法で働く「障害者の仕事の現場」と、それをフォローする「支援員の姿」をみて、多くの気づきや発見があったといいます。
樋口さんが一番印象に残っているのが「待つことを覚えました」という受講生のひとこと。支援員にとって「待つ」ということは職業病のようなもの。根気強く待ちながら、利用者ができるようになるまで一緒に探っていくのです。仕事のできない部下を切り捨てるのはなく、できることを一緒に探していく。若きビジネスリーダーにとって、この「待ちの姿勢」こそが一番求められているスキルだったのでしょう。
「この研修によって彼らの体験による学びが格段にレベルアップした。我々の方が施設のみなさんからギフトを受けたという感じです」と田村先生も絶賛されていました。この出会いをきっかけに、『ふくしごと』の活動に共感した企業と施設が「アートカレンダー作成」を共に手がけるなど新たなプロジェクトが生まれています。

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福岡大学商学部教授の田村馨先生。『九州・アジア経営塾』のエグゼクティブプログラムディレクターとして、若きビジネスリーダーを育成されています。
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麻生セメント株式会社の2017年カレンダーを作成。セメントを製造する現場や工場で働く人々など、会社内のさまざまなシーンを障害のあるアーティスト達が書き下ろしました。これらのアートの著作権も販売したことにより、施設のアーティスト達への報酬がぐんとアップしたそうです。
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久留米運送株式会社の卓上カレンダーを作成。「まごころを=はこぶ」という同社のコンセプトにあわせ、日々の芸術のイラストストックの中から‘やさしさ’をテーマに作品をセレクトしてカレンダーにデザイン。「味があっていい!」と社内でも評判だそうです。

 

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季刊のぼろ「山ノート」

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西日本新聞社が出版する九州密着型の山歩き専門誌「季刊のぼろ」が、創刊3周年の読者プレゼントとして企画。福岡市の福祉施設「ほのぼのHaKaTa」が製本、「工房まる」の石井悠輝雄さんがイラストを担当しました。

ノートに込められたさまざまな’想い’が、可能性の扉をひらく

『ふくしごと』の山内さんの進行で、西日本新聞社出版部の米村さん、福祉施設『ほのぼのHaKaTa』スタッフの高野さんと利用者の太田さん、デザイナーの先崎さんの4人によるインタビュー形式でトークライブが行われました。
山歩きの取材をする中で、「登山の記録をとった山ほど、その山への思いが濃くなっていく」ということに気づいた米村さんが、「ぜひ読者にも同じ体験をしてもらいたい」と企画した「山ノート」。ふくしごとに制作を発注したのは、「上司からたまたま紹介された」ことがきっかけだったそう。「けどハッとしたんです。それって『のぼろ』のコンセプトにピッタリなんじゃないかと」。一歩一歩山を登るように、施設で一冊一冊丁寧に作られていく山ノート。「福祉施設の商品は買ったことがあるし興味もあったはずなのに、施設と一緒に仕事をするという発想は全くでてこなかった」と米村さんが振り返ります。
「企業と施設を繋げ、一緒に新しい価値を生み出す。それこそ、ふくしごとが一番とりくみたかったことなんです」とグラフィックデザインを担当した先崎さん。ボランティア的に福祉施設の商品を買ってもらうのではない、新しい施設との付き合い方や商品開発の可能性が広がっていきました。
製本を担当された太田さんは、「安全に山を登って無事に下山できますように」との願いを込めながら作業されていたという裏話を披露。会場のみなさんも感心しきった様子でした。たくさんの思いが込めらた山ノートは、これから全国のアウトドアショップなどでも販売することが決定。「山登りといえば、山ノート」と呼ばれる日も近いかもしれません。

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左から「ほのぼのHaKaTa」支援員の高野さんと利用者の太田さん、西日本新聞社出版部の米村さん、ふくしごとデザイナーの先崎さん。

Writer’s Memo—

障害者のためではなく、わたしたちのためにある『ふくしごと』という存在

パーティの最後に、参加者の女性からある素敵なお話しを伺いました。
「幼い頃、父親によく連れて行かれた福祉施設があったんですが、幼心にその場所がすごく怖かったんです。お茶やお菓子を貰っても手をつけることができないし、持って帰っていいよと言われても、持ち帰ることすらできなかった。そのことが胸の中でずっと引っかかっていて。後ろめたさを抱えたまま生きてきました。今回、施設の方々と一緒に仕事をさせてもらって、あまりの楽しさに長年抱えていた心のチクチクが消えていくのを感じました。私の心の中に鬱積していたモヤモヤをきれいにぬぐってくれた。それこそが『ふくしごと』の仕事なんだと思います。障害のある人のためというより、私たちのために『ふくしごと』があるのかなと。こっちがサンキューといいたいくらい感謝しています」。
嬉しそうに話してくださったこのエピソードこそ、ふくしごとが目指す「ふくしとの出会いなおし」そのものなのかもしれません。ひとりひとりが心の中で抱いている「障害」が、福祉と出会いなおすことで取り除かれていく。その小さなハッピーのひとつひとつが、福祉や社会を変える原動力になっていくのでしょう。

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日々のてまひまスタッフが九州中の福祉施設を訪ね、吟味した、ふくしごとセレクトの「ギフトカタログ」。その完成までの物語をご紹介します。

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