ハカタリノベカフェ2015秋

新しいフェーズに入った博多のまち

新しいフェーズに入った博多のまち

2011年には九州新幹線の開通と、日本最大規模の駅ビルのオープン。徒歩圏内には、九州最大級の複合商業施設キャナルシティ
従来の「オフィス街」というイメージをよそに、今、博多のまちが変わろうとしている。しかしその理由は、単に商業施設ということだけではなさそうだ。 この変化を引率するひとつのプロジェクトが、ハカタリノベーションカフェだ。いったいどんなプロジェクトなのだろうか。

小さな路地でも、
楽しいと思えるまちをつくる

博多駅からキャナルシティへと延びる一本道、はかた駅前通り。福岡に住む人であれば、誰しも一度くらいは通ったことがあるはずだ。とはいえ、ショッピング目的にこの通りを散策するという人は、そんなに多くはないだろう。もちろんそれでも不思議はない。このあたりはもともとオフィス街として形成されてきたエリアなだけに、ショッピングやエンターテインメントといった趣とも異なれば、ふらっと立ち寄れるようなラウンジスペースが立ち並ぶ風景もない。
「この通りを、“歩いて楽しい”と思えるようにしたいんです」
こう力強く話すのは、ハカタリノベーションカフェを主催する「博多まちづくり推進協議会」、通称「まち協」(※)の原槇義之さん。「まち協」とは、博多に関わるさまざまな企業が会員となって構成される団体で、原槇さんはその事務局長として、博多のまちづくりに日々奔走中だ。

近年の博多エリアの盛り上がりと、一軒のカフェ……。スケール感がイマイチ相容れないような気もするが、「JR博多シティやキャナルシティは魅力的な施設なんですが、面的な広がりからするとまだまだ“点”でしかありません。その“点”を“線”に、“線”を“面”にしていくことで、博多をさらに魅力のあるまちにしていきたいんです」と、原槇さんはやる気満々。
点と点をつないで面的な魅力を高めるーー。つまり、駅や商業施設から外に出て、さらに一歩踏み込んだ路地裏をいかに面白くしていけるか。その第一歩ともいえる“実験”が、このハカタリノベーションカフェというわけだ。


以前はレンタカー屋さんだったという、いたって普通のビル。これからいったいどんな風に生まれ変わるのだろうか。

〈博多まちづくり推進協議会〉

博多駅周辺の企業、団体、自治協議会、学識経験者、行政などで構成されたまちづくりの団体。文字通り、博多駅周辺のエリアを魅力的にするためにさまざまな取り組みを展開中。近年では、博多の歴史や食を学べる「はかた大学」講座の開講や、昨年から盛り上がりを見せている「博多朝カフェ・夜バル」の開催など、ユニークなプロジェクトも多数。

カフェという空間だからこそ、チャレンジできること


以前はコンビニだった物件から生まれ変わったという前回のカフェ。「たった5日間でしたが、確かな手応えがあった」と原槇さん。「継続していくことで、道行く人が楽しめる場所を少しずつ増やしたい」と意欲的。

実はこのハカタリノベーションカフェ、同じくはかた駅前通りを舞台に今年の2月にも開催されたのをご存知だろうか? 連日多くの人たちが訪れ評判も上々。しかし5日間という短い期間だったために閉店を惜しむ声が多く、このたび晴れて再開催に至ったというわけである。
今回のオープン期間は1ヶ月。限られた期間中に、カフェだけではなく、雑貨、本、植物など、さまざまなお店が入れ替わりながら営業し、トークやセミナー、展示などのイベントスペースも設けられる予定だという。


今回出店予定の、けやき通りの本屋さん「ブックスキューブリック」(左)と、サンドイッチ専門店「イグニッション・スイッチ」。まだまだ個性的な店舗が少ないエリアなだけに「出店に二の足を踏むよりも、チャレンジできる今回のような機会を提供して、肌で感じてもらうことから始めたい」(原槇さん)と、長い目でまちづくりの構想を図る

前回のカフェの様子。暮らしにまつわる雑貨や、まちづくりに関するパネルが展示され、道行く人の目を惹いた。「こうした展示や販売を通して、まちづくりを身近に感じて欲しい」と原槇さん

そう、ハカタリノベーションカフェの特徴のひとつは、「ザ・飲食店」ではないところ。また、カフェに訪れる人も、職種、年代、性別、バラバラだ。この“ごちゃごちゃ感”が、最大のメリットだという原槇さん。
「地権者の方、事業者の方、そして博多に来られているお客さまに、こういう場所が求められていると思ってもらえるかがポイントだと思っています。良い意味で“ごちゃごちゃに詰め込まれた”この空間で、トークや展示などを通して様々な方々にまちづくりへの関心を持ってもらう。それが、実は一番大きなメリット。客層も業種も“敢えて分けない”ということを考えると、こういったカフェじゃないとダメなんですね」
広く、あまねく、すべての人にひらかれた「カフェ」という空間だからこそ、実現できるプロジェクトだ。

大都市から生まれる、持続可能なまちづくり

プロジェクトのもうひとつの特徴は、「自分たちの手でリノベーションする」という点。まだまだ使えるものを壊して新しく作るのではなく、すでにある素材をいかに活かせるかとういことは、“ストック型社会”として世界でも浸透しつつある考え方だ。原槇さんは言う。
「仮に店をつくりたいと思っても、一から建て直すことや大掛かりな準備が必要なのでは、なかなか難しい。シンプルな素材、シンプルな手法で、これだけの空間ができあがるということを、色々な方に知っていただくこと。それが、魅力的な場所を増やしていくことにつながると考えています」
現に、準備期間中のプレイベントとして内装の一部をDIYしようというワークショップもすでに開催されている(ワークショップの様子は、第3話でレポート予定です)。


ハカタリノベーションカフェ、仕上がりのイメージ。自分たちの手で本当にこんな空間がつくれたら、涙が出るほど感動しそう。思い入れもひとしおだ。

「アーバンラウンジ」、つまり「都会のなかのくつろぎ空間」をコンセプトに掲げ、始動したばかりのハカタリノベーションカフェ。「時間はかかるかもしれませんが、ゆくゆくはそういう街にしていきたい」という原槇さんの言葉を聞いて、このカフェが“社会実験”と称される理由が腑に落ちた。まずは10月のオープンに向け、どのように仕上がっていくのかが楽しみだ。

今回お話をうかがった方

原槇義之さん
九州旅客鉄道株式会社 事業開発本部博多まちづくり推進室長、博多まちづくり推進協議会 事務局長(JR九州)というふたつの顔を持つ原槇さん。日々博多のまちに繰り出し、まちづくりに取り組む毎日を送る。

<<ハカタリノベーションカフェ>>

期間:10月1日(木)〜31日(土)
営業時間:11:00〜21:00
住所:福岡市博多区博多駅前3丁目29-21 貝真ビル1F

(各種イベントについては、facebookをチェックしてください!)

 ■出店店舗

イグニッション・スイッチ」(サンドイッチ専門店)(10月1日〜15日予定)
CAFÉ SONES」(パン、コーヒー等)(10月16日〜31日)

日比谷花壇」(植物)(10月1日〜31日)
ブックスキューブリック」(本)(10月1日〜31日)
Marin ford」(アンティーク雑貨)(10月1日〜31日)

「糸島マルシェ&旅好き女子のモロッコ土産」(クラフト雑貨ほか)( 10月23日〜25日)

【第2話予告】
ハカタリノベーションカフェ主催の「まち協」こと「博多まちづくり推進協議会」と、企画・運営・空間づくりをサポートする「ダイスプロジェクト」、それぞれの担当者に、プロジェクトに込める想いをお聞きします!


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