会場のあちらこちらに柿の実と葉っぱが散りばめられ、すっかり秋色に染まった11月の穴バー。
おもてなしドリンクは本日のゲスト「右田果樹園」の右田さんが手がけるスパークリング柿ジュースです。柔らかい柿で作るシロップに柿酢を加えたスパークリングは、シュワっとした喉越しにとろりと柿らしい甘さが新感覚。口もなめらかにしてくれるのか、スタートからそこかしこで陽気なおしゃべりが聞こえてきます。
さあ、イートプランナーのコンドオミユキさんが腕によりをかけた柿メニューをいただきましょう。
コンドオさんは、イラストレーターとして活躍されながら、イートプランナーとして、メディアやイベントでさまざまなレシピを手掛けていらっしゃいます。穴バーにはお客さんとして参加してくださっていましたが、今回はゲストとして満を持しての登場となりました。自他ともに認めるお酒&フルーツ好きのコンドオさんの手にかかる柿料理、一体どんなアイディアが飛び出してくるのでしょうか?
最初のオファーの際にお題が「柿」ということに、コンドオさんは「はじめは、困ったなというのが正直な感想でした。野菜やお肉は考えようがあるんですけど、フルーツで料理となるとなかなか難しいと思って。でも試作してみると、意外に柿は料理に合わせやすかった。例えば、イチゴやバナナって、香りにちょっとクセがありますよね。でも、柿はそれが無いので他の食材とケンカしないんです」
なるほど!今回料理に使われた「富有(ふゆう)柿」は、濃い橙色と十分な甘みが特徴ですが、お肉や野菜に合わせても違和感なく、お互いのおいしさを引き出しています。
さらに、コンドオさんは、「熟した実と若い実を使うこと」でアイディアを膨らませたと言います。「私は熟した柿がすごく好きなんですけど、苦手な人も多い。それってすごくもったいない。あと、たくさん柿をいただいた時に食べきれなくて柔らかくなることもよくありますよね。なので、熟した柿を利用したレシピも提案しようと思いました。美味しく作る工夫はもちろん必要ですけど、できるだけシンプルで、すぐに真似できそうな作り方で。混ぜただけとか、あえただけとか」
それでは、穴バーでも柿好きの皆さんに「真似したい!」と大好評だった料理の数々をご紹介します。
驚くほど手軽にできてお酒にも合う
飲兵衛も喜ぶ柿のおつまみ
ウェルカムドリンクと同時にテーブルに並んだのは、柿の前菜3種類です。
「柿のピクルス2種」は、色の濃い方がバルサミコ酢で、色の薄いのほうは白ワインと白ワインビネガーでマリネしたもの。バルサミコ酢の方は、酸味がはっきりしていてさっぱり味、白ワインの方は酸味がまろやかとメリハリが効いています。
コンドオさん曰く、「白ワインを少し沸騰させて、そこに手持ちのお酢を合わせて漬け込むだけ。たくさん柿をいただいた時など、保存も効くのでおすすめです」
「柿のジュレ」は、柿と山芋のとろろを合わせた一品。熟した柿をそのまま潰しただけというジュレは、甘みが強く喉ごしもつるりとなめらか。胃袋のスターターにぴったりです。トッピングの柿の皮のかりんとうは剥いた皮を細く刻んで揚げただけ。「柿の皮の利用法も考えてみました」というコンドオさんのアイデアの賜物です。カリカリの食感を加えてくれます。
「ロースト柿のピンチョス」は、なんとグリルした皮付きの柿にチーズとオリーブを挟んだおつまみ。「生だと皮は食べにくいですが、グリルすることで柔らかくなって甘みも増すので、とても美味しくいただけます。皮と実の間の部分が1番栄養が高いそうなので、健康的でもありますよね」
これぞ正真正銘の“カキフライ”
グリル柿の旨味に驚き!
続いて登場したのは、まさかの「カキフライ」。カラリときつね色に揚げられた外見は“牡蠣”フライにそっくりですが、中身は正真正銘の“柿”です。グリルした柿にひき肉と柿のみじん切りをサンドし、パン粉をつけてフライに。柿のオーロラソースに付けていただきます。柿の自然な甘さがひき肉と相性抜群!白菜と柿の千切りを加えたサラダは口の中をさっぱりとリセットしてくれます。
「どうしても“カキフライ”を出したくて考えました。グリルした柿は、フレッシュな干し柿のような食感で甘みが凝縮されているので、揚げ物にしてもお肉と合わせても、しっかりと柿の存在感が出ているかなと。このオーロラソースは柿とマヨネーズを混ぜるだけでとっても簡単、ぜひ作ってみてください」
右田さんも会場の皆さんも、柿とお肉の相性の良さ、甘みの絶妙なバランスに驚いた様子。おかわりが欲しいという声もあがるほど大好評でした。
お肉がさらに柔らかく変身!
柿マジックで新たなおいしさへ
その後も、肉料理にリゾット、デザートまで、多彩な柿料理がお客さんの舌を喜ばせていました。その様子を眺めながら、ほっと一息つくコンドオさん。今日の料理の感想をお聞きしました。
「柿は、今日出した『ポークリブ』のようにお肉料理に合わせると肉が柔らかくなるし、グリルで焼いただけでもおいしい。しかも、皮のあるなしでまた風味も変わるんです。お料理だからそこまで奇をてらう必要はないと思いますが、見た目も味もびっくりさせるのが好きなんですよ。だから、今回の皆さんの反応は嬉しかったです。こちらも勉強になりました」
コンドオさん自身の驚きや発見が生かされているだけあって、出てくるたびにお客さんが思わず歓声をあげた今宵の柿ディナー。手軽に作ることができるそうなので、家でもチャレンジしてみては?
(取材:編集部、文:ライター/大内りか、写真:末次優太)