穴バーレポート ACTIVITY

柿も旬を知れば楽しみ方も広がります。 “旬の旬”を楽しみたい福岡県田主丸の柿

11月の穴バーは、秋を代表するフルーツ「柿」を主役に開店しました。橙色の実には、カリウムやカロテン、ビタミンCといった栄養がたっぷり詰まっていて、生活習慣病やがん、風邪などを予防してくれるほか、美肌にも効果があるとされています。「柿が赤くなれば、医者が青くなる」なんて格言もあるほどですから、古くから大事に食されてきた果樹であることがわかります。
しかも、アルコールの分解を促進する酵素も含まれているため二日酔いも防いでくれるそう。これは食べない手はありません!

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柿といえば、渋柿と甘柿とが存在することはおそらく多くの方に認知されていますが、実は私たちが日頃食べている甘柿は、渋柿が突然変異してできたもの。柿食は古事記にも登場するほど歴史が古いのですが、本格的な栽培が始まったのは昭和のはじめ。現在では約1000もの品種があり、種がたくさん入ると渋みが抜ける「不完全甘柿」、そのままで甘い「完全甘柿」、種が入ると周辺だけ渋みが抜ける「不完全渋柿」、渋みを残したままの「完全渋柿」の4つに分類されます。

一般的な柿の旬は9月下旬から12月上旬ですが、この期間中でも品種により実る時期は異なります。つまり、旬の中にもう一つ、その品種本来の“旬”があるのです。さまざまな品種の旬をリレーのように追いかけることで、その甘さや食感の違いを感じる、そんなツウな食べ方も楽しめるんですね。

風光明媚な耳納連山と苗木産業が育てた
鮮やかでジューシーな甘柿が人気に

福岡県の甘柿の生産量は、なんと全国1位です。県内でも田主丸の柿は古くからその品質に定評があり、果樹園が一面オレンジ色に染まる頃になると道の駅や直売所は黒山の人だかりができるほどです。たくさんの果樹があるなかで、根強いファンをつかんで離さない田主丸の柿のおいしさの秘密は、その向こうの景色の中に隠れているようです。

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右田さんの柿畑の向こうには耳納連山が広がる

その風景とは、青空に美しい稜線を描く耳納連山です。曽祖父の代から田主丸で柿農家を営む右田さんによると、「この辺りは、日中は暑いくらいの日射しの日も朝晩になると山からの冷気が降りてきてグッと冷えるんですよ。その寒暖差が柿の甘み、旨味、実の成長にとってものすごく重要なんです。それに、斜面だから水はけもすごく良くて、水も溜まりにくいので、根腐れしにくい。柿にとって本当にいい条件が揃っているんです」

さらに、田主丸の苗木産業も柿の栽培に影響を与えています。「基本的に果樹は、種で増やしていくいくものではなくて、接ぎ木して増やしていくもの。田主丸はもともと苗木産業で栄えた地域なので、その技術を使って柿の苗木が広まり、田主丸に柿農家が増えたと聞いています。全国的にも古くから柿の栽培に携わっているエリアなんですよ」

柿にとっては、まさに絶好の条件が備う田主丸。右田さんの果樹園では、シーズン中に5品種の甘柿が楽しめるそうです。

 

時期ごとに異なる品種は
食べ比べもまた楽し!

右田さんの果樹園では、9月下旬から12月上旬まで5つの品種の柿が実ります。
平均的な糖度15度と甘さも十分ですが、食感の違いや味わいもそれぞれ違うので、自分なりの「推し柿」を探してみては?

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右田果樹園のHPには、品種ごとにイラスト入りで紹介している。柿狩りの前の予習に確認してみよう 。画像:右田果樹園HPより

トップバッターを切るのは、「西村早生(にしむらわせ)」。一面に黒色の斑点が入った実が特徴です。まるでゴマのように見えるこの斑点が多いほど食べ頃のサイン。「不完全甘柿」で斑点が入っていないと渋みが残り出荷できないため、下からライトを当てて判別しているそうです。

 9月下旬になると、四角い「早秋(そうしゅう)」がお目見え。朱色に近いオレンジ色で果肉はやや柔らか。ジューシーながらも甘みがさっぱりしているので、残暑にぴったりですよ。右田果樹園のなかでも特に力を入れたい品種とのこと。

 本格的に旬を迎える10月に出荷される、高級柿「太秋(たいしゅう)」はここ最近の注目種。皮が薄いので、傷や汚れが付きやすい繊細な品種ですが、ずば抜けて大きく、糖度も17度以上と甘みも格別。ずっしりとした果肉はサクサクとした食感とあふれる果汁が楽しめます。おしりの部分に一見キズのような「条紋」が入っている方が甘いそうです。お買い物の際は是非キズをチェックしてみてください!

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画像:右田果樹園HPより

11月には、甘柿の中で特に多く栽培されている「富有(ふゆう)」が有終を飾ります。待ちきれないという人には、その20日前くらいに市場に出る富有の早生「松本早生富有(まつもとわせふゆう)」を狙って。どちらも濃い橙色で、甘みも果汁もたっぷり。穴バーの料理には、この「富有」を使いました。

ちなみに、穴バーで盛り上がった「柿クイズ」の中には、右田さんが一番好きな柿を当てる出題も…。正解は「太秋」でした。その理由は「実のサイズにも驚きますが、それ以上に食べるとびっくりするくらい甘い。それに太秋は新しい品種なんですね。富有のように昔ながらの品種を守ることも大事ですが、この品種をしっかりと作り込んで、お客さんに味わって欲しいという思いがあります。なので、太秋に一票!ちなみに、太秋のお母さん品種は富有なんですよ」と右田さんは熱弁してくださいました。

色ツヤ美人がおいしさの証
柿はビジュアルで選んで正解!

品種ごとに楽しめる柿ですが、その見分け方も教えていただきました。
「1番はやっぱり色ですね。赤みがかったオレンジというか、朱色というか。鮮やかな方がしっかりと甘みがのっています。もう一つ、種子がしっかり入っている方が甘いです。つまり、形がふっくらしているほど、しっかりと種が入っている証拠なんですね。だから、まず色で見て、それから形を見る。あとは、ひっくり返していただいて、ヘタが新鮮な緑色だとなおよし。八百屋さんやスーパーで買うときにはじっくりと観察して確かめていただければと思います」

購入した柿は、お好みの固さになるまで保存しましょう。ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室に入れておくと長く楽しめるそうですよ。

また、穴バーでは、イートプランナーのコンドウミユキさんによる柿活用法も教えていただきました。次回のレポートにて料理と共にご紹介します。

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右田さんお手製の柿色一輪車の中には、見目麗しい販売用の柿たちがどっさり。右田さんとお話ししながら、目利きを楽しむ方もたくさんいらっしゃいました

(取材:編集部、文:ライター・大内りか、写真:末次優太・編集部)

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