爽やかな酸味と香り、一面の瑞々しい緑色が特徴の
大分県竹田市特産の旬カボス
8月の穴バーは、大分県竹田市の特産食材「カボス」をテーマに開店しました。カボスはレモンの約2倍のクエン酸を含み、疲労回復に効果的と言われています。ビタミンCも豊富で、夏の紫外線で疲れた肌を癒すのにもぴったりの食材です。
大分県の南西部に位置する竹田市は、農業生産額が県内1位の年間約200億円という野菜の一大産地。シイタケやスイートコーンをはじめさまざまな野菜が栽培されており、今回着目したカボスは、8月お盆過ぎから収穫の最盛期を迎えます。1年の中で最も香りが強く果汁も多い旬のカボスを、たっぷりと味わっていただき、カボスの多様な使い方も知ってもらいたい!という思いで企画したのが、今回の「大分竹田のたっぷりカボスバー」です。
味も香りも優れたカボス栽培の条件は
朝晩の寒暖差
大分県のカボス生産量は全国の98%を占め、なかでも主要な産地が竹田市と臼杵市です。山間部の竹田市は朝晩の寒暖差が大きく、カボスの成育条件に適していたことから、昭和45年頃の米の減反政策をきっかけに栽培が奨励され本格化しました。現在130軒の農家が加盟する「竹田市カボス生産出荷組合」では現在、加工原料を含むと年間2000トン以上ものカボスを出荷しています。
ハウス栽培の収穫は6月からスタートしますが、8月中旬~9月の露地栽培の収穫がピーク。出荷は翌年2月頃まで続きますが、収穫された果実をそのまま放置してしまうと、徐々に水分がなくなり、皮の色も黄色に変わって酸味や香りが落ちていってしまいます。昔は黄色のカボスも出回っていたそうですが、今は「カボス=瑞々しい緑色」のイメージも強く、色が変わると売れ行きが落ちるのだとか。
そこで生産農家さんたちは、できるだけ長く緑の状態を保つための栽培方法を実践しています。その具体的な方法については、カボス栽培の第一人者、「和田農園」の和田久光さんのお話を交えて、次回のレポートで詳しくご紹介します。
お味噌汁に、ドリンクに。
アイデア次第で広がる使い方
緑色の柑橘果実といえば、カボスのほかにスダチが思い浮かびますが、その違いをご存じですか?
主に徳島県で生産されているスダチは、重さは40~50gくらいでゴルフボールくらいの大きさです。酸味はやや強め、ライムのような香りが特徴で、お料理の香りづけによく利用されています。
一方カボスは、重さは100~150gと、スダチの3倍ほどの大きさです。その分果汁もたっぷりで、ほどよい酸味なので飲み物のアレンジにもおすすめです。料理の名脇役として、素材の持つ風味を損なうことなく、料理の味をぐんと引き立ててくれます。
竹田市の生産農家さんや地元の方々によると、焼き魚にかけるのはもちろん、お味噌汁に絞って入れたり、天ぷらやお刺身、冷奴にかけたりするのも定番の使い方だそう。和田さんのイチオシは、ご飯の上に生しらすと鰹節を乗せ、醤油をひとかけしてから最後にカボスを絞って食べる「カボスご飯」。食欲のない時にぴったりなのだとか。
そのほか、氷型で凍らせた果汁を炭酸水に入れてサワーにしたり、カブと一緒に塩と砂糖に漬けてお漬物にしたり、絞った後はお風呂に浮かべて「カボス風呂」にしたり、皮も果汁もアイデア次第でさまざまな楽しみ方ができます。
実際にカボス味噌汁を試してみましたが、爽やかな酸味が加わって、いつもとは違うおいしさにびっくり! 薄く削いだ皮を刻んで入れたら、さらに香りが引き立ちました。試してみる価値ありです。
カボスの風味をより引き出すには
搾る時に皮を下にするのがポイント
カボスの香り成分は、皮のでこぼこにある精油に集まっています。カボスを使う際、風味をより引き出すためのポイントをいくつかご紹介します。
- 切る前に軽く揉むことで、果肉が柔らかく、果汁が絞りやすくなり、皮に含まれる精油も染み出しやすくなります。
- 切り方/真横から2つに切って、必要に応じてさらにくし形に切ります。すべての房をカットでき、絞る時に果汁が飛び散るのを防げます。
- 搾り方/切り口を上向きにし、皮に含まれている香り成分を包み込むように果汁を絞るのがコツ。大量に絞る時はレモン搾り器を使ってもOK。電子レンジで少し温める(600wで30秒)と搾りやすくなります。
家庭で保存する際は、ポリ袋に入れて密閉するか、新聞紙に包んで冷蔵庫に入れておくと、新鮮さが持続します。
竹田では、日常の食卓に幅広く活用され、柑橘類の中でも特に身近な食材のカボス。地元の人に習って、果汁も皮もたっぷりと、さまざまな使い方で楽しんでみてください。
(取材・文:ライター・吉野友紀、写真:勝村祐紀・編集部)