豚肉は、「泣き声以外は全て食べられる」と言われるほど、頭から足の先、内臓や脂にいたるまで、余すところなくいただける万能食材です。今回は、「豚肉をまるごといただきますバー」というタイトルのとおり、さまざまな部位をそれぞれの特長を引き出す調理法で味わいました。
この万能食材、「モンヴェール農山」の上質な豚肉の魅力を最大限に引き出す工夫を重ね、創作和食のフルコースを作ってくださったのが、和食料理人の清水良生(しみず よしたか)さんです。懐石料理を得意とし、これまで「桜坂ONO」の副料理長、「SUiTO FUKUOKA」での料理長を歴任。今年7月、穴バー開催の直前には、念願のご自身のお店「四季食彩 しみず」を春日原にオープンされました。
「農山さんの豚肉は、お肉の色がとても綺麗で、脂身まで甘くておいしいんです。素材そのものの良さを楽しめるようにあえてシンプルに提供したり、僕なりの手法で加工品をアレンジしたり、全体のバランスを考えて構成しました」
それでは、清水さん渾身のメニューをご紹介します!
加工品は食感や味付けをいかしてアレンジ
そのまま食べてもおいしい加工品ですが、アレンジ次第で食卓を彩る前菜に早変わり。
ミミガー(豚の耳)は好相性なコチュジャン×クリームチーズと和えれば、コリコリの食感を楽しめてお酒がすすむおつまみになります。味のついたソーセージやレバーはポテトをソース感覚でつけて食べるとまろやかな味わいに。
出汁で炊いたご飯にジャーキーを混ぜ混んだおにぎりは、ジャーキーの塩味と香ばしい風味が全体をまとめてくれます。こんな利用の仕方もあるなんて!
煮込むほどに柔らかくなる肩肉
肩肉は脂身が少なくて、ポトフなどの煮込み料理向き。
「煮込むほどに柔らかくなり、旨味がスープに溶け出してくれるので、まず出汁でお肉だけ先に煮込み、後で野菜を投入するのがおすすめです。また、肩肉は全体の3%の塩を事前に揉み込んでおくと柔らかさが増しますよ」
ロースやモモ肉は火を入れすぎないのがポイント
低温でじっくり焼き上げます
豚肉の中でも高級なロース肉はプロの技で塩釜焼に。
「贅沢な味わいのロース肉は、トンカツやポークステーキにも最適。美しいピンク色に仕上げるには低温調理が決め手です」。とても柔らかく、豚肉の旨味が存分に楽しめました。
「モモ肉は赤身の中で最もキメが細かく、柔らかい部位。火を入れすぎると固くなるので、火加減にも注意して調理します」。フライパンで1時間ほど極弱火でローストするそうですが、蒸し焼き風にアルミホイルを被せるのがポイント。
豚肉は消化吸収があまりよくないので、消化分解酵素を持つ生野菜と一緒に食べるのがおすすめです。
豚の脂(ラード)はクッキーに活用!
ほうじ茶を使ったデザートのとろける舌触りにアクセントを添える、ラードのクッキー。「バターの代わりにラードを使うとサクッとした食感になります」。沖縄のちんすこうもラードを使っていると聞いて、納得です。
プロの技が光る逸品から、家庭の食卓の参考になりそうな料理まで、バラエティに富んだ構成に大満足。お酒が進む料理も多かったようで、ドリンクバーに登場した日本酒も大人気でした。
清水さんは、「みなさんの感想も聞くことができ、楽しい夜でした。通常、懐石で豚肉はあまり使わないのですが、これを機に、豚肉のおいしさを世に広めていきたいと思います」と、大役を終え晴れ晴れとした笑顔に。
農山文康さんは「モンヴェール農山や水俣の事を少しでも知ってもらえたことが嬉しいですし、ぜひ水俣にも遊びにきてもらいたいです。僕自身も今後、みんながハッピーになれるような仕事を続けていけるよう、頑張っていきます!」と、今後への思いを強くされたようです。
豚肉それぞれの部位に適した調理法があることを知り、モンヴェール農山そして水俣への関心も高まった一夜。次は、現地に足を運んで、自然の中で旨味たっぷりの豚肉BBQを味わいたいです。
ご来店いただいたみなさま、ありがとうございました!
(取材・文:ライター・吉野友紀、写真:末次優太)