イベントレポート

津屋崎のよっちゃん祭

福岡県福津市の港町、津屋崎で4月20日、21日の2日間に渡って開かれた「よっちゃん祭」にお邪魔してきました。 よっちゃんのお祭り?どんな人のお祭りだろう……。と思っていたら、「津屋崎に寄っちゃんしゃい!」「春の新酒に酔っちゃんさい!」を掛けて、そう名づけられているのでした。 会場は津屋崎千軒と呼ばれる港町エリア。かつて、海上貿易や製塩地として栄えた津屋崎の「家が千軒ひしめくほど」の繁栄ぶりを称した名が、今でも残っています。 この小さな町を舞台に、食べ物、雑貨、カフェやイベントなど盛りだくさんなのが、よっちゃん祭です。 まず向かったのは、よっちゃん祭本部があるお魚センター。 この日はあいにくの雨。にもかかわらず、港はたくさんの人で賑わっていました。

採れたてサザエのつぼ焼き。ついつい日本酒を探してしまいます。

地元のおじちゃんたちも、昼間からお酒片手に楽しそう…。

さすがは海の台所。
ほかにも、採れたてワカメ、ウニめし、タコめし、天ぷら(福岡では、さつま揚げのことを天ぷらと呼びます)などなど、豊富な海の幸が並びます。イカの一夜干しを買ったら、ゲソをおまけで付けてくれました。
さてお次は、古い町並みが残る津屋崎千軒エリアへ。
明治34年に建てられた津屋崎千軒のシンボル「藍の家」も祭会場のひとつです。普段から、コンサートや藍染め体験など、さまざまなイベントに開放されている藍の家。この日は藍の染め物展示中でした。

パン売りの女性もやってきて、井戸端会議で盛り上がる藍の家。

藍の家のおとなりさん、豊村酒造へ。130年にわたり、津屋崎の地酒をつくっているそうです。
こんな有形文化財並みの建物がそこかしこにある町って、九州では珍しいのではないでしょうか。

酒造のなかに、突如として表れた駅。線路の模型には、子どもたちが群がります。

「この会場のコンセプトは“津屋崎駅”です」と話すのは、豊村酒造にカフェを出店中の、繋ぎ屋珈琲さん。会場の演出担当です。
なんでも6年前に廃駅となった津屋崎駅。今はなきその姿を、仲間と一緒によっちゃん祭で蘇らせるとともに、豊村酒造にちなんだ「とよむら」という架空の駅までつくってしまったという、てっちゃん魂の持ち主(注:本物のてっちゃんは、別の方だそうです)。
土壁立派な酒造のなか、スクリーンに映し出された電車の映像に、訪れた誰もが見入ってしまうという不思議。酒造内のステージでは、ミニコンサートやフラワーデザイン展もひらかれていました。

酒まぼろしの駅「豊村」でしばしひと休み。からだに優しい手づくりドーナツとスープが、冷えた体を癒してくれます。

実行委員会の方や、酒造に出店した方々をパチリ。「人・町・自然が、津屋崎の魅力です」とは、繋ぎ屋珈琲の店主(右)。

雨も小降りになってきたころ、ふたたび津屋崎千軒の路地を散策。
古い一軒家がカフェになっていたり、もとは消防署だった建物がすてきなクラフトのお店になっていたり、古いガレージにパン屋さんが並んでいたり……町そのもののポテンシャルが高すぎて、雨のなかいちいち立ち止まってしまいます。

手づくり木のスプーン。思わず目を見開いてしまう、良心的すぎる価格。

地元のパン屋さんが集結した「よっぱん祭」も同時開催。謎のゆるキャラはれっきとした公式ものですよ。

現代美術の貴重な拠点、知る人ぞ知る旧玉ノ井旅館。ここも会場のひとつなのでしょうか?

歩いていると、さながら昭和の古き良き時代に迷い込んでしまったような感覚に陥る、津屋崎千軒の町並み。
よっちゃん祭は、この町全体が会場。現存する日本家屋はもちろん、丸みのある石畳も、使われなくなった倉庫も、ツタの這う煉瓦の煙突も……そのひとつひとつが、お祭りを際立たせてくれる一部であり、津屋崎の財産なのですね。たんなる田舎の町おこしという一言では表現できないお祭りでした。
地域経済とか、地産池消とか、そんな 言葉だけで片付けられないのは、その根っこに、津屋崎が育んできた長い歴史と文化が脈々と受け継がれているのを感じるからでしょうか。
町をまるごと、そして歴史もまるごと包み込む津屋崎のよっちゃん祭、来年も開催予定だそうです。

ツタのはびこる情緒漂う倉庫も、お祭りの会場の一部に見えてきた。

(堀尾)


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