コトバナ

みんなで作るシェアする暮らし 〜後編〜

VOL.001 みんなで作るシェアする暮らし
2015.01.08(木)

シェアハウスの活動3:仕事を作る

山内さん(以下山内) 自給自足に近い田舎暮らしとはいえ、お金はかかりますよね?

畠山さん(以下畠山) そうですね。現在は食費が月に約5,000円、光熱費が月に約6,000円、保険や税金を含めても、月に3万円ぐらいあれば暮らしていけますが、まったくの無収入は厳しいですね。

山内 なるほど。

畠山 かといって、田舎に住みながら週5日みっちり都会に出て働いてしまうと、若い才能や労働力が都会に流れ出てしまって、田舎には何も残らない。ひとつの企業に自分の収入すべてを頼ってしまうのは危険だという意識もありましたから、なるべく自分の家で仕事を作り出したいと考えました。

山内 具体的にはどんな仕事を?

畠山 シェアメイトは、料理人や音楽家、写真家、農家など手に職を持っている人が多いので、その技術でお金を稼いでいます。例えば地域の人を集めて家でマルシェを開催したり、私たちの田舎暮らし自体を一日体験してもらうワークショップを開催したりています。

山内 自分たちの暮らしが仕事につながっているわけですね。

畠山 そうですね。手に職をつけてお金を稼げるようになるのは本当に大変だし時間がかかります。週5日働くわけではない分、空いた時間を使って自分の技術を磨いて、ちゃんとした仕事になるようにしています。自由に、クリエイティブに、自分の仕事を作り出していきたいですね。

山内 実際に生活を始めてみて、苦労したことはありますか?

畠山 そうですね。まず、糸島という小さな地域なので、地元の人に受け入れてもらうために、いろんな努力が必要でした。あいさつはもちろん、地域の飲み会にも参加して、時間をかけて私たちの活動を理解してもらっています。

山内 飲み会にも参加しているんですね!

畠山 もちろんですよー。この間は飲み過ぎて記憶なくしたりしました(笑)

山内 なるほど(笑)

畠山 シェア生活はとても楽しいですが、他人との共同生活なので、細かな気持ちの行き違いが起こらないように気をつけていますね。例えば、掃除をする時に、汚れに対してどのくらい我慢できるかは、人ぞれぞれ生理的な感覚で違います。誰かが我慢しなければいけないのは、気持ちのいい関係ではないですから、「言わなくてもわかるでしょ」で済ませずに、言葉にして伝えるように意識しています。

経験をシェアする

山内 畠山さんの試みで特徴的なのは、単に暮らしを自分たちで作り始めただけでなく、その過程や作るうえでの試行錯誤を、オープンにしてシェアしていることだと思います。作るとシェアするが、常にセットになっている、と。

畠山 そうですね。いまの暮らしはお金を出しさえすれば、野菜も服も家もすべて簡単に買えて、それらが作られたり運ばれたりするプロセスがまったく見えないので、みんなプロセスに飢えているのではないでしょうか。実際に、何かを作るにはたくさんの人手が必要で、そのためにもオープンにする必要があります。「できない」こともちゃんと見せることが大事で、できないほうが、人は関わろうとしてくれます。

山内 畠山さんがシェアしていることは、みんなが知りたい、体験したいことでもあるから人が集まるんですね。

畠山 そもそも、私は自分でかきわけて進むというより、波が来るのを待っているタイプなんです。社会の方から大きな波が押し寄せてきて、無理かも無理かもって思いながらも、乗らないと流されてしまうので、下手でも無理矢理に乗ります。同じ波に乗ろうとしている人と協力してなんとか乗り切り、波の力を借りて遠くまで行く。そして波が拡散した頃には、ひとつ経験を終えて成長し、また次の波を待っている。

山内 波に乗ること自体が、活動のシェアになる、と。

畠山 そうですね。そうやって波の力で未知の世界にたどり着く、その繰り返しですね。それがとても楽しいんです。

山内 なるほどー。波に乗っているうちにまた違う場所にたどり着いて、そこで出会った人たちとまた経験をシェアする。そうやってゆるやかに開かれたコミュニティを作っていっているということなんでしょうね。不安を感じることもありますか?

畠山 もちろんあります。私はこう見えても保守的な方なんです。シェアハウスを始めるまでは、お金の心配があって、すぐには仕事を辞めるのが不安でした。でも実際にやってみると、なんとかなるんですね。

山内 震災の経験からこれまでの暮らしに疑問を持ったとしても、生活を一から自分たちで作り上げるにはハードルが高すぎて、諦める人も多かったと思います。でも、畠山さんのようにまず始めてみて、失敗してもいいから試行錯誤の状況を見せていくことで、自分たちのスキルも上がり、手伝ってくれる人も現れるということですね。

畠山 人のエネルギーとは強力なもので、いろんな人が関わってくると、自分ひとりの考えで立ち止まることはできません。だから、時には勢いでもいいので、波に乗るように皆で経験をシェアして、新しい時代を生きていく知恵や技術を学んでいけたらと思いますね。

シェアハウスメンバーと。現在は6名で暮らしている。

ゲストに聞きたかったコト

会場ではこんな質問がありました

移住先として、なぜ福岡を選んだのですか。
畠山さん 勤務先が福岡に移転した、という単純な理由です。でも住んでみて糸島を気に入り、1年間福岡市内で暮らしながら物件を探して、ようやく見つけました。
シェア暮らしの実例で、いい例があれば教えてください。
畠山さん 会社の研修でオーストラリアのエコビレッジを1ヶ月見て回ったことがありましたが、その体験は素晴らしかったですね。人が暮らしていく上で、ちょうどいいサイズのコミュニティがあるということを、始めて理解できました。

畠山さんが立ち上げに関わっている、新しいコワーキング・スペース
「RIZE UP KEYA」

> http://itoshima-lifedesign.com/

ビーチエリアとして人気の高い芥屋に、新たなコワーキング・スペースが誕生。「パソコンに向かってばかりでは、良いアイデアは浮かんできません。芥屋の豊かな自然環境を生かして、山や海を歩きながらブレストするとか、身体を動かしながら生まれる大胆な発想をシェアしていければと思います」。クリエイティブな発想が求められる職種や、企業研修などにも利用価値大だ。

コトバナ編集後記

「私って運がいいんです。これまでもよかったし、これからもいい波が来ると思います!」そう笑顔できっぱりと語る畠山さんは、とても自分に正直で、楽しいことに貪欲な人なのだなと感じました。疑問に思ったことをあいまいにせず、率直に行動し、軽々と常識を超えていく。それを、とても楽しそうにやるものだから、周りに人が集まって来る。もしかしたら畠山さんは、自分が感じた喜びや自分の人生そのものまでも「シェア」し、誰かと分かち合おうとしているのかもしれません。次はどんな波乗りを見せてくれるのか、楽しみです。(佐藤)

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