インタビュー

写真家竹沢うるまさんとお話しました。(3)

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写真家竹沢うるまさんとダイスプロジェクト橋爪の公開対談

※対談で紹介されたうるまさんの写真は全てこちらのサイトからご覧いただけます。
億光年の旅人□http://billionlightyear.com/

#03 世界の空気と日本

橋爪 次はアフリカ以外の国に行ってみましょうか。どれがいいでしょうかね?
旅の途中の休憩で立ち寄ってらっしゃったパラオのお話が聞きたいです!

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うるま あぁーこれですね。僕は元々海の写真をずっと撮っていたので、こんなに長いこと海から離れたことがなかったんです。だからホームシックならぬアイランドシックになって。海行きたい、潜りたいなって思って長い旅の疲れを癒すついでに行きました。パラオのブルーコーナーというところで、ダイバーがよく潜りに行くスポットです。やっぱり海に行くと自分の場所に帰って来た感じがして落ち着きますね。海の近くに住んでいる人たちとは話が合うし、感覚が合うし、リフレッシュできました。
橋爪 確か他にも海の写真がありましたよね。この南極の写真のお話も聞いてみたいですね。

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うるま これですね。ドレーク海峡やビーグル水道を越えて行くんですけど、南極って寒いから生物は住めないと思うでしょう?行ってみるとものすごく生命に溢れていてびっくりしました。海の栄養分が豊だから、魚もシャチもクジラもペンギンもすごくいっぱい。死に直面しているような過酷さがあるのかと思っていたけど、全然そうじゃない。もちろん僕が行ったエリアが、普通に人が立ち寄ることができる場所というのもあったのでしょうけど。寒さの中に温もりがあるというか、そういう安心感がありました。

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橋爪 半袖でウロウロできたそうですね。
うるま そうなんです。風がなくて日が照っている時は、30分くらい歩くとすぐ暑くなるので上着は脱いでも平気ですしね。ほら、スキーで汗をかくような感じです。雪山に近いですね。
橋爪 独特な雰囲気を持った国ってありましたか?

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うるま あぁ。キューバはまさに、独特ですね。行っていただきたい国ナンバーワンです。フィデル・カストロやチェ・ゲバラがメキシコから船で上陸してキューバ革命を成し遂げた劇的なストーリーがある。人を惹き付けるメンバーが革命を成し遂げて、その延長線上にできた国。それが今も存続している。今はフィデル・カストロの弟ラウル・カストロが代表なんですが、革命広場で演説をしているのを見に行ったんです。途端にばーっと人が集まってラウル・カストロが「viva cuba」って言ったら、みんな「viva cuba,viva revolution!」、「viva Fidel, viva Raul」って叫ぶんです。圧倒されますよ、あの雰囲気はとても独特な世界ですね。僕はキューバはあのままであってほしいなと思います。
橋爪 この写真は女性が踊っているようですね?

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うるま そうですね。キューバの街はどこに行っても踊りと音楽に満ちていて。夕方のハバナ旧市街では3人集まると踊り出します(笑)。ちょっと音楽を鳴らせば誰かが寄ってきて踊り出すんですから。ぜひ、行かれたときは試してみてくださいね。
橋爪 はははは。それはぜひ行ってみたいですねぇ。それから、こちらのキューバの旧市街の写真は映画のワンシーンのような雰囲気ですね。

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うるま 元々スペインの植民地だったこともあって、当時のコロニアル調の建物が残っているんです。キューバは社会主義国家というか“キューバ主義”と言ったほうがいいかもしれませんが、閉鎖された社会なので、ものが外から入って来ないんです。日本だと、例えば古くなった建物はどんどん建て替えるでしょう?だけどものがないしお金もないから、どんどん日々の生活が積み重なっているんです。あらゆるものが再利用されるというか。いろんな国に行きましたけど、キューバほど生活感に溢れていて落ち着く街はないですね。生活がしっかりそこに根付いている感じ。無機質なものがなく、手に触れるもの、目に入るものすべてが人の息がかかっている。壁ははがれてるし窓割れてるし電線はめちゃくちゃですし汚いですけど、なぜだか落ち着くんです。
橋爪 なるほど。日本とは随分違う雰囲気なんでしょうね。
うるま 日本の街はすべてが”直角”ではないですか?まっすぐ、平、無機質、生活感がない。ゴミとか別にあってもいいんじゃないかって思うんです。窓割れてたっていいし、その辺で人が寝ててもいいと思うんです。あまりに整いすぎてて感覚が鈍るというか。生活臭が感じられなくて、戻ってきてすぐは目が落ち着かなかったですね。

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橋爪 日本が直角になっていると感じるのは、さまざまなものが“記号化”されている面あるからではないでしょうかね。 建物も道路も、劣化すると剥ぎ落とされてつくられるから塗り重ねられていない。経年の積み重ねが、そこの生活臭さを感じるという感覚を生むんでしょうね。

チベットへ

橋爪 チベットのお話も聞いてみたいんですが…。チベットに滞在していたのは、2012年10月ぐらいですよね。
うるま そうですねー。

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橋爪 この写真のはにかんでる笑顔がいいですね。
うるま ゴンパのお祈りの時間に勝手に入って撮りました!写っているのは100人くらいですが、実際2,000人くらいいましたよ。これは全部尼さんです。入っていいのかなーなんて思いつつ写真撮ってたんですけど、やっぱりものすごく目立つんですよね。だから似たようなえんじ色のズボン履いて、赤いジャケット着てました。同化できるから(笑)。

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会場 チベットに行かれたときは時期的にきわどいタイミングだったのではないですか?
うるま あぁ、そうですね。相当きわどかったです。公安に捕まること3回、街の外に追放されること3回。検問や尾行もされて散々でした。それでもすばらしいところでしたよ。
橋爪 ”無数の細胞のよう”と表現してらっしゃるこの写真はどんな場所ですか?

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うるま ここは、東チベットのカム地方です。中国の四川省とチベット自治区の境界線に接している地域なんですが、この写真は僧房ですね。ゴンパ(僧院)のまわりに修行する人たちが小屋みたいなものを作って、約1万5千人くらいの人が住んでいます。風景がきれいなんですよ。6〜7,000メートルの山に囲まれていて、ヤクが放牧されていて。
だけど一方で、中国政府とチベット人の軋轢が最も激しい場所でもあります。ちょうど僕が滞在している時は、国家主席が変わる5年に1回の共産党大会のタイミングで、旅には適さない時期ではありましたねぇ。

橋爪 そうでしたか。ニュースなんかでは伝わってこない、現地の衝突も沢山目にして来られたんでしょうね。
うるま そうですねぇ。色々ありましたが、チベットの人ってすごく親日派なんですよ。だから危険な目に合った時もすごく助けてもらいました。

 

休憩中、うるまさんの旅の途中のバッグの中身を見せて頂きました。みなさん興味深々です。

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