2月の穴バーでお世話になった「廣久葛本舗」さんは、
福岡の朝倉市秋月で天然純国産の本葛を一九〇年余つくり続ける本葛専門店です。
冬の間に南九州の山奥にこもって原料となる葛根を掘り出し、
春の訪れとともに掘り出した葛根を秋月まで運び、本葛の製造に入るそうです。
廣久葛本舗さんでは毎年春先のこの時期に、
収穫を無事に終えたことを祝した葛蔵開きを行います。
今年も春分の日から始まる3連休に開かれた葛蔵開き。
葛蔵開きではいろんなイベントが開催されていて、
そのイベントの一つ、葛と野草のワークショップに参加してきました。
秋月に到着したのはお昼少し前。
廣久葛本舗のある秋月は「筑前の小京都」といわれるほど、
歴史ある建物や景観が残る美しい城下町です。
葛蔵に向かう途中、桜が開き始めたばかりの町を散策しました。
採りたて野菜に手づくりの乾物や漬物などがならぶ地元のお店についつい吸い込まれます。
スタート前なのに手には袋が2つ、3つと増えていきました。
もう少しゆっくりお話を聞きたいところでしたが時間切れ。
またあらためて遊びに来ることにします。
小川や田んぼが広がるのどかな風景の中を歩いて廣久葛本舗へ向かいます。
廣久葛本舗の離れに着くと昼食タイム。
だぶと葛葉茶を混ぜ込んだおにぎりの「久助のお昼」をいただきました。
”だぶ”とは、根菜たっぷりの郷土料理。
日本各地でつくられているらしいのですが、
葛を使ってとろみを出すのが秋月の”だぶ”の特徴だそう。
まだまだ寒さが残るこの日、葛の効果でとっても温まりました。
お腹が満たされたところで、
廣久葛本舗10代目髙木久助さんが本葛を製造する工場を案内してくださいました。
廣久葛本舗の本葛づくりは、江戸時代から続く製法を守り続けています。
葛粉をつくるのは大変な苦労。
天然の寒根葛(かんねかずら)の根は、鹿児島の山から切り出します。
男性でも苦労するというその巨大な葛根を砕いて水をかけ、葛成分を絞り出し、
注水や撹拌、沈殿等の工程を繰り返して抽出された葛粉は、
さらに1年寝かせるのだそう。
そうした行程をふむことで、粉っぽい香りが抜け、
舌触りも滑らかな最高級の葛粉に仕上がるのです。
葛のお勉強の後は、野草のワークショップです。
実は、葛も野草の一種。
根、花、葉っぱ、つると、すべて口にすることができ、余すところがありません。
昔から民間治療薬として使われてきた、身近な野草なのです。
秋月は、日本原種の野草が多く残る貴重な場所なんですね。
今回は、料理家ゴトウタカコさん、正山征洋先生と一緒に散策しました。
ゴトウさんは、「お野菜の、ベーグル工房と料理教室ベジキッチン」を主宰し、
「食と農」をテーマに活動される料理家さん。
正山征洋先生は、九州大学名誉教授、長崎国際大学薬学部教授、
世界中医薬学会副会長を努める野草の先生です。
頼れるお二人に連れられて、食べられる野草と食べると危険な野草の違いや、
野草の摘み方などを教わりながら、小川のほとりを歩きました。
収穫した野草は標本にしておさらいです。
今回の収穫した野草は10種類以上。
いざ野山に出てみると、ふだんよく見かけていたものもありました。
野草って、意外と身近にあるもんだなぁ。
摘んだ野草はお料理にしていただきました。
葛のクレープに、絵を描くように野草をのせて試食です。
ゴトウさん特製の葛葉のベーグルと、葛葉茶のハーブティーも。
今回の催しの締めくくりは、ふたたび久助さんによる葛練りと葛切りの実演です。
まるで手品のように、葛粉がぷるぷるの葛煉りに変化していきます。
風邪を引きかけたかな? と思った時に、葛練りを食べて復活! なんてこともあるみたい。
古くから民間療法に用いられてきた葛、その効果はほんもののようです。
廣久葛本舗さんは江戸時代から続く老舗だけあって、建物もアジがあります。
店内には、葛蔵開きに合わせて見事な桜が生けられていました。
葛の製法から野草摘みの豆知識まで、
野草にまつわるお話をたっぷり勉強させていただきました。
郷土料理から野草料理まで、お腹も満足です。
おみやげに本葛も買って、充実した1日は暮れていきました。
(トゴウ)
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□ 廣久葛本舗
福岡県朝倉市秋月532番地
□ ベジキッチン
福岡市東区箱崎1-5-14ベルニード箱崎202
~~~お知らせ~~~
5月23日(金)の穴バーは
今回野草ワークショップをひらいてくれた
料理家ゴトウさんと野草のバーをひらきます。
詳細はサイトにてお知らせします。
お楽しみに!