インタビュー

「ナリワイをつくる」。伊藤さんと山内さんとお話しました。(2)

conversation_mianheader_012013.3.27 up

伊藤さんと山内さんと「ナリワイをつくる」についてお話します。

#02 人にものを頼まれるって重要

山内 ナリワイ楽しそうですけれど、小さい仕事を1つ1つ作るというのは面倒くさいと思うこともありませんか?

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伊藤 そう思われがちなんですが、実は1つ作ったら芋づる式に増える、ということが起きているんです。
 モンゴルツアーを始めた当初、雑誌のライターもしていたんです。そこで先ほどのパン屋のおじさんの取材をしていたんです。それで雑談中の話から「オレもそろそろ田舎暮らしツアーというのをやりたいと思っているけど伊藤くんやってくれないか」と言われたのがきっかけでした。「モンゴルツアーやってるから田舎暮らしツアーも頼めばいい」というつながりで。。。
 人にものを頼まれるというのは実は結構重要なことで、頼みやすい雰囲気とか、コイツに頼めば何とかしてくれるんじゃないか、というように思われるのはなかなか重要だと思います。基本的に大ざっぱすぎるお題に出会ったら、僕が勝手に中身を絞り込んでいくという作戦に出ているんですね。いろんなものを絞り込んでいくと、結構自分にできることがあるんじゃないかって思えてきたりするんですよね。

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山内 なるほど。
伊藤 ナリワイで貸し別荘もやっているんですよ。
山内 あー、京都のですね。
伊藤 はい。京都の大学に通っていたこともあって、京都が結構好きなんです。 だけど卒業後10年近くになって、いよいよ後輩がいなくなってきて、泊めてもらえる場所がなくなってきたんです。京都の旅館って門限があったりするから使いにくくて。せっかく友達と飲んでいて“すみません、門限なんで”って帰るのも悲しいじゃないですか。
 これはもう自分で作るしかないと思いつつ、どうやったらいいかを色々考えました。そしたら、京都の町家って意外と空き家が多いという話を知りましてですね。エリアによっては2割越えています。これはもったいないな、と思いまして。

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伊藤 「古今燕」は茶道好きの数寄者が建てた家で、部屋1つ1つが全部茶室っぽくなっています。住みにくいけど短期滞在するには風情があって申し分ない。月7万円の家賃を15人くらい集めたら5千円ほどで維持できるし、それなら失敗してもいいやと思って声をかけたら、月5千円で京都に家が持てるなんて、ということですぐに仲間が集まりまして。「実は京都に別荘持ってます」なんて言ったらすげえってなるじゃないですか。(笑)
 最初は15人集まったんですが、みんな京都に行ったり行かなかったりして抜ける人が出てきたりして、これじゃ維持できないよなんて事態もあって。今は3人で運営してます。空き家を貸し出せますっていう紹介サイトを使っていたりして徐々にお客さんも増え、家賃は賄えるようになってきています。ちなみに、最初はボロボロだったので、自分たちで床とか張り替えてきれいにしました。
 宿以外に落語会とか、地元の人にはほぼタダで貸して、そのかわり掃除してもらうという工夫をしながら、あまり維持費がかからないようにしています。
 こういう場所を各地に1つ1つつくるのも結構いいですよね。あらゆるところでできると思うんですよ。ホテルを廃業にしようとしている方とか、 古い家屋とかで、趣があるんだけどもう住む人がいなくなっちゃったとかいう建物を宿にしたりですね。
山内 宿泊業的な仕事もナリワイになり得るんですね。
伊藤 そうなんですよ。空き家の再活用だと地域の人も協力してもらえたりしますし。
 3つくらいやってるとうまい具合にバランスがとれるようになってきて、ほどほどな忙しさでできるようになってきたという。

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伊藤 あとは、結婚式のお手伝いもやっています。結婚式って、何百万円とか、非常にお金がかかりますよね。 よくわからないパネルに15万円とか、映像を作るとお金がかかったり。
 一番がっかりしたのは、友人が花を育てているのでその花を使いたいというときに、式場に持ち込む持ち込み料が必要、なんていう状態。親しい人たちに結婚のご報告をして、楽しく過ごしましょうという会にも関わらず、親しい人が作ったものを使うのにお金がかかるという許しがたい事態が起こっていて。これでいいのか?というのがありまして。まあ、僕はまだ結婚していないんですけど。
 そういうことを言っていると、僕の髪を切ってくれている美容師さんが結婚式を挙げてくれないか、と依頼して来てくれたわけなんです。

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伊藤 昔は、集落にある庄屋さんの家を借りてみんなで歌ったり踊ったりというのがあたり前だったんですが、どういうわけかホテルとかチャペルとか、最後にお決まりで手紙を読んだりという“パターン”ができてしまっている。でも別にそんなのいらんのではないかと思ったんです。
 結婚式に必要なのは、場所、招待状、ドレスアップの服、ごはん、写真撮影。そんなもんですよね。
 そう考えたら、知り合いの知り合いまで辿れば結構自分たちでできそうな気がします。グラフィックデザイナーの友人に招待状とか食事、空間なんかもお願いして。何百万円もかからずできるんじゃないかという感じになってくるんですね。
 結婚式って、実はそんなに難しくないんですよ。言わば飲み会の幹事に近い仕事。飲み会の幹事ができれば誰でもできますよ。

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伊藤 これは『月とキャベツ』という映画の撮影場所になった廃校の校舎なんです。

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伊藤 なんかいい感じになりそうだという雰囲気ですね。それは床が味わい深いから。 床が味わい深ければいい空間になるというのは最近、分かったことなんですけど。それで、飾り付けをしてみたら、新郎新婦の趣味にあった雰囲気のものができました。
 ちなみに空間は、インテリアのスタイリストをしている友人に依頼しました。今、インテリアのスタイリストって以前ほど仕事がなくて。でも、その能力をインテリア雑誌などの仕事に限定してしまうのではなく、違う場所に使えないかというところでお願いしたところ、結婚式はうってつけの場所だったんですね。すごく活躍してくれました。

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伊藤 自分の生活とか人生に関わる仕事をしていると、いろんなところで一緒に仕事をする余地が生まれてくるんですね。
 ちなみに結婚式に使ったブーケや飾り用の花は、「ハナアミ」という、ナリワイのものです。和歌山のおばあちゃんたちがみんなで集まってただ趣味として編んでいたんですよ。この結婚式の話を受けた後、和歌山県の田舎に滞在していたときに出会ったんです。花飾りを野草で編んでいるんですよ!これはすごい!と思って。

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伊藤 普通に生きていると、「あ、おばちゃんがなんか趣味でやっているな」で終わるところを、日々問題意識を持って生きていると、「これや!」ということに出会うことが多発してくるんです。
 あまりナリワイとして成り立ってはないんですけど、このおばあちゃんの花をクリスマスに販売するという仕事が生まれつつ、結婚式もいい感じでできたという。これはなかなか良かったですね。おばあちゃんの才能がすごいというか。さりげなく、稲穂が入っている!

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伊藤 なにも指示していないんですけど、ただ「白っぽくてくすんだ色でお願いします」って言ったら。自発的にやってる仕事でだから、いろんな工夫が入るんですよね。
和歌山の古座川町という限界集落の過疎地なんですが、なかなかしゃれたものを作れました。
山内 本当ですね!
伊藤 挙式を新郎新婦だけでやるのは大変なんですね。1人〜2人は手助けが必要。実際やってみると大変だったんですけど、大変だということは逆に仕事になるということです。

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