インタビュー

音泉温楽主宰田中宏和氏×DJシュニスタ(4)

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音楽温泉主宰田中宏和氏×ダイスプロジェクト(DJシュニスタ)小石

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▲音泉温楽の受付の様子

#04 何がなくともお湯がある。

小石 温泉側からの引き合いもあったりするんじゃない?
田中 そうね。それこそ嬉野温泉も声をかけてもらったのがきっかけ。新潟のイベントもそうです。継続してやってきていると、結構いろんなところから引き合いはあるんですよ。でも簡単にはやれない部分もあって。集客とかお金の面もそうだし 。
 そういう点で、できることから広げていくという風に今年から始めたのが今度別府でやる「湯会」。 現在東京都に申請中だけど「お湯を中心とした新しいコミュニティを作り、ご縁社会を復興させること」を目的としてNPO法人YUKAI(湯会)を設立準備しています、11月中旬に正式に発足予定です。

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小石 祭りの仕組みって言ってたよね?
田中 そうそう。それは大いにコミケで学んだの。 オタクカルチャーってお祭りをみんなが自発的に行うのね。 人が和になって作り上げていく。それに気付いたとき、わーおもしろいなって思ったの。温泉の和を大事にして文化をそこに根付かせるためには、ピラミッド状で上から決まったことが落ちてくるのではなくて、祭りのシステムに変えなければいけない。
 そのためにはお金もいるし、その土地の人が中心となってやる必要がある。それに対してこちらが必要なものを乗せるということだけでいいんじゃないかと。
 だから今までみたいに、こちらが100%持っていくんじゃなくて、そこにあるものを活かしながら土地の人たちと一緒に祭りを作る。それが魅力的なコミュニティとして外から人が来るような形になって、全国的なムーブメントになっていけば、ソフトが入れ替わるよね。そういう動きをやっていきたいなって思ってる。
小石 そういう点でいくと、別府ってわりとそういう形ができていたりするんじゃない?
田中 いや、すごいんだよ。特に“別府プロジェクト”地元ですごい規模で頑張ってる。外から人間が来るように対外的に活動が発信できているっていうのはすごいなって思う。
小石 確かに、年々規模も大きくなってるよね。
田中 温泉地の人が何を求めているかっていう、結局そこなんだ。彼らはそこで生活をして、そこでお金を稼いでいる。だからそこに直接貢献する何かをする必要があるなと思っていて。少なくともお金が回らないとグルーヴが出てこない。若い人がそれをやってお金が入ってきて楽しくなるというようなサイクルに変えないといけないって。やっぱり予算をどこかから持って来て予算をどんと投下しても、それが本当に街で使われているかどうかもわからないし。
小石 さっきのNPO設立の動きにもつながるね。
田中 うん。人がそこに来てくれるようになって欲しい。外から人がそこに来るようにならないといけない。地元の人がそれを自発的に作ってそれに対して人が外から来るようにしないと、お金が還流しないし、街だけで盛り上がっててももったいないから。
 インバウンドで温泉地の復興をさせるというのもひとつ大きな目標。 その土地にいる若い人たちが新しいソフトの感覚でその土地に合ったアクションを起こしながら、それがつながっていくことで、海外から見ると日本にしかないコンテンツになるわけで。それをおもしろいと思う人たちは外から来るようになる。それが本質的な改革なんじゃないかな。本質的にそこに文化を持ってきてそれを魅力として引き込まないと変わらないから。
小石 土地にいる人間同士でお金使っても、その動きは大きくなっていかないもんね。
田中 そうね。まぁでも、何はなくともお湯があるんです(笑)。別に文化的なものがつまらなかったとしても理解できなかったとしてもお湯があるんですよ。
小石 結局そこにたどりつく(笑)。何はなくともお湯がある。

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小石 今回の別府の「湯会-YUKAI-」は今までの「音泉温楽」と雰囲気違うよね?座敷でもないし。
田中 今回は非常に実験的なイベントになるよ。音泉温楽プレゼンツ湯会。いつもの音泉温楽は基本的に「1泊2日の温泉旅館を貸切にしたスタイルで行われる日本宴会様式フェス」なんだけど、その音泉温楽の冠を以て各種イベントを開催していく形を「湯会」というスタイルで開催するの。とは言え音泉温楽なんですけど。>>詳細はこちらより
 とにかく別府という街は今、新しい温泉と文化の試みが非常に多くなされていて、外からの注目も非常に集まってる。源泉の数も日本一多ければ、泉質も多く、都市全体が温泉でできている。西の横綱なわけです。
小石 西の横綱ね。
田中 別府って瀬戸内に面していて、別府湾に別府港という港があるんですよ。s1870年代後半に整備が始まって、そこに客船が乗り入れるようになった。1910年代に大阪から観光汽船が来たの。日本の港の形成の歴史でも非常に特殊なところで、一番最初にやって来た船が観光客船だったの。かつて鉄道が敷かれて人が爆発的に温泉地に流れていったのと同様に、客船が通ったことによって、海の道を通って関西から人が来るようになったの。おもしろいよね。
 長崎とか横浜とか神戸とか外に開かれた港じゃなくて、瀬戸内のなかにある港として文化的な形で港が形成されていって、街が広がっていった場所なの。外から人を受け入れて。(別府の基礎を作ったと言われている)油屋熊八って愛媛から来た人だけど、彼が始めたプロモーション手法がヒットして別府の街がさらに魅力的になっていったり。海の外からいろんな文化が入ってくるハブなのね。別府のなかでも海側に近い北浜地域もあれば山側に近い鉄輪地域もあって。別府全体で八つの湯があるんだよね、それぞれ違う文化があるよ。

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小石 なるほどねー。
田中 それと、別府にはもう一つ面白いポイントがあって。APU(立命館アジア太平洋大学)があるけど、世界各国のいろんな大学生を受け入れてるのよ。その影響もあって、実は都市の人口比率のなかで外国人の占める割合が非常に高いのね。東京に並ぶくらい高い。すごくインターナショナルな街なんですよ。
 そういう意味でも、アジアの中で文化の集積地になりうる可能性が高い場所。今回は実験的にDJイベントなんだけど、ひとつのろしをあげないと。別府を日本のイビサにするっていうぐらいの意気込みですね。
小石 じゃあ今後も別府は注目していく街?
田中 そうね。 実は来年も別府でフェスをやろうとしているんだけど。別府っておもしろいイベントをやっている人たちがたくさんいるんですよ。だから湯会がそれぞれをつなげて組織して、イベントにして街のいろんな”点”でイベントをやって、それをぐるぐる巡回して“線”にするような形のものを来年やりましょうって話が出てる。
 温泉都市として、街全体を温泉と音楽で包める場所っていうのが他にはないの。温泉地のなかの1ヶ所の宴会場でやるのではなくて、宴会場では「音泉温楽」をやって、ライブハウスとかストリートとか、いろんなところでも新しい仕組みでやれるんじゃないかなって思ってて。そういう意味で、別府という街は非常に可能性が高い。
 お湯を中心とした新しいコミュニティを作り、ご縁社会を復興させること」を目的として今後も活動していきます。どうぞ応援して下さい。
小石 ご縁はキーワードやね。
田中 そうやねーほんとに。和の中からしか縁は生まれてこないから。人の和がご縁を生み出す。
でもとにかく、イベントでは、理屈抜きに温泉を楽しんでもらえることが一番ですよ。そうやって少しずつ波動が各地に広がることにつながれば。
家族とか友人とか、一番大事な人と、もちろんお一人でも。ご縁がありましたら是非どうぞ!ということです。
小石 そうやね。今回の別府でもDJをやらせてもらうけど、僕もとにかく楽しみまーす。

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( お わ り。)

( 取材・文/曽我 写真/大田 )

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  • Profile田中宏和
    NPO法人『YUKAI』代表理事、「音泉温楽」
    /「湯会」イベント統括プロデューサー
  • 1977年福岡生まれ、早稲田大学教育学部卒。2009年「温泉復古の大号令」をキャッチフレーズに、温泉地で楽しむ日本宴会様式の大型音楽フェスティバル『音泉温楽』を長野県・渋温泉にて旗揚げ、その後全国6箇所(渋温泉、四万温泉、綱島温泉、嬉野温泉、月岡温泉、別府温泉)の温泉地にイベントを拡大。その他、札幌☆マンガアニメ・フェスティバル『きたまえ↑』や、別府オタクフェスティバル『アニたま文化祭』のイベント・プロデューサーを務めるなど、主に地方の観光地を新しいコンテンツソフトで彩る地域振興イベントを多く手懸けている。


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