インタビュー

音泉温楽主宰田中宏和氏×DJシュニスタ(1)

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音楽温泉主宰田中宏和氏×ダイスプロジェクト(DJシュニスタ)小石

温泉好きが集まって、ゆるりと開催される温泉フェス「音泉温楽」。
古くて新しい温泉の楽しみ方を提唱してくれる「音泉温楽」のはじまりとこれからを、主宰する田中氏に、密かに「音泉温楽」でDJをやっているダイスプロジェクト小石がお話をうかがいました。(田中氏と小石は学生時代からの友人です)

#01 音泉温楽のはじまり

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小石 音泉温楽っていつから始めたんだっけ?
田中 2009年の11月からなんでもう4年目。
小石 最初は渋温泉?
田中 そうそう。長野の渋温泉が最初。
小石 その前から温泉でイベントはやってたの?
田中 いや、やってなかったよ。元々はインディーズの映像の制作会社をやってたの。ちょっと視点を変えたような映像作品をプロデュースして撮ってたりもしてたな。
小石 あー、そうやったね。
アート的なものも作りよったよね。。

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田中 あ、そうそう。 アヴァンギャルドな映像表現はずっと好きだったね。それこそ60年代のATG(日本アート・シアター・ギルド)とか。そういう実験映像的なものとかね。ちょうどそういうことやってた時期、にサワサキさん*に再会したの。 (*サワサキヨシヒロ:音泉温楽の共同主宰者)
小石 サワサキさんがキーパーソンやね。

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田中 ジャーマンプログレとかじゃなくて本気のプログレで。イタリアのプログレとか。それでベロベロになって女の子にちょっかい出してて。
小石 ひどい(笑)
田中 最初の出会いがそれ。29の時に会社を辞めて。30歳になってさっきの映像の制作会社を自分で立ち上げて。そういう時期にまたサワサキさんにチェリーで会ったの。2008年の夏。その時に、サワサキさん今何やってるんですか?って聞いたら、「俺最近温泉やってんねん」って(笑)
小石 温泉をやる?
田中 温泉をやってんねんっ、て言ったんですよ、衝撃的part2。それで「なになに?」って思って。その時サワサキさんは『NATURALLY GUSHING』というCDアルバムをつくっていて、温泉とサワサキさんが考えるテクノラウンジミュージックを融合した作品。それを聴いて、元々サワサキさんのファンだったし、これはとてもすばらしいなあと。そういう再会があって、その作品の流通と宣伝のお手伝いをはじめたの。
小石 あーその映像YouTUBEで見た。
田中 そうそう。サワサキさんのクリエイティブの源というのは、とてもおもしろい。彼の視点の元になってるものは“視点をずらすこと”というか。普通じゃおもんないやんみたいなところで。
 で、その音楽CD『Naturally Gushing』に温泉地の映像をミックスした、ジャパニーズオリエンテッドなアンビエントオーディオビジュアル作品を作るっていう「Naturally Gushing DVD」プロジェクトが始まったの。コンセプトはBGV(バックグラウンドビデオ)。それが2008年の秋。
小石 最初は映像の仕事として始まったんやね。
田中 そうね。プロジェクトとして立ち上げて制作を始めたの。そうなると当然映像を撮りに行かないといけないでしょ?
小石 そうよね、温泉地巡りせんとね。
田中 サワサキさんとカメラマンとでロケハンするわけ。あの時期は毎週末温泉行ってたね。金土日月って。それが2ヶ月くらい続いたかな。サワサキさんはDJと一緒で“温泉を掘る”、ディグる、ディギンするわけ(笑)。いいグルーヴを求めて温泉をディグるわけよ。自分が今まで音を探して来たように、いいお湯を探すっていう遊び方を、サワサキさんは既に達成してたの。
小石 ほぉー。
田中 それで俺もサワサキさんと一緒に行くと、ものすごいディープなところに連れて行かれるわけ。
小石 そんだけ好きやったらそうなるよね。。。
田中 それから本当に色々行きましたよ。東北から北陸から…。 予算がそんなになかったから北海道とか九州にまでは行けんかったけど。とにかく最初は関東周辺のいい温泉地をプレゼンテーションできるようにして。
 それで映像作品DVD『Naturally Gushing DVD』シリーズを3作品作り上げて、そのリリースパーティーをやろうってなったの。場所もどうせだったら温泉地の温泉旅館の大広間っておもろいやんっていう。
小石 リリースパーティーが発展して音泉温楽の原型ができたってこと?
田中 そうそう。で、『Naturally Gushing DVD』シリーズの1作目の舞台だった長野県渋温泉でご縁のあった「金具屋」でやらへんか?ってことになって。親しいアーティスト呼んで、実験的にフェスとして開催しようって。それが2009年の8月。
 それから突貫で金具屋さんの若旦那とか地元の旅館組合の青年部の方々に協力してもらって11月にイベントやったの。準備期間2ヶ月くらいしかなかった(笑)。その時に言ってたのが「温泉復古の大号令」というキャッチフレーズと、“冬フェス”っていう概念。 みんなでワイワイ遊びにきて、フェスにいく感覚で温泉に浸かって泊まって宴会場で音楽楽しんでまた風呂に入って寝るっていう遊び方=音泉旅行を提示したわけ。

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小石 フェスって言ってるもんね。
田中 うん。それともう一つのコンセプトが、肌感覚を共有するっていうこと。普通の野外フェスは空気感を共有するでしょ?みんながその空気を共有して、空気の波動がグルーヴになって。
小石 うん。
田中 温泉の場合、みんなが同じ源泉のお湯に浸かると、その土地にチューニングされるの。みんなが出す波動がグルーヴを作るんじゃなくて、みんなが同じお湯に浸かってチューニングされた波動を楽しむの。そういう楽しみ方をみんながどう捉えてくれるかなあということを最初実験的にやったの。
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▲渋温泉「金具屋」のお座敷ステージ

小石 お座敷で音楽聴いてる時って、一体感あるよね。確かに。
田中 そういえば、温泉ってさ、本当にいいお湯ってグルーヴがあるのね。だから自分に合うグルーヴ、自分が好きなお湯と自分に合わないお湯があるの。例えばHIP HOPが好きな人とハウスが好きな人では体が感じるリズムが違うのと同じで。
小石 お湯にもあるったい!
田中 あるある。泉質によってめちゃくちゃアッパーなお湯とすごくなあなあになるお湯、横揺れのお湯と、縦揺れのお湯とか、あるよ。
 このお湯すっげー上がりますねサワサキさん!みたいな(笑)。
小石 そうなんや。面白いねー。
田中 お湯を楽しんで、アッパーになると実はヘトヘトになってたりね。ほどほどにせんと。それぐらいお湯には力がある。
小石 その感覚っていつぐらいに気づいたと?
田中 温泉地巡ってて10ヶ所超えてくらいからかな。あ、この辺ちょっと合わないとか。やっぱお湯がわかるようになってくるんですよ。僕の場合はちょっとぬるくてやわらかいお湯が合う。人によっては硫黄泉の硫黄のにおいがすごいする白濁したのが温泉や!っていうこともあるし。サワサキさんはそういうタイプ。
 まぁまぁ、そんなこんなでご縁あって、ちょうどtwitterが爆発的に拡がっていた時期だったってことも重なって、準備期間2ヶ月でも情報が拡散してお陰さまで全国各地から300名を超える多くのお客さんが駆けつけて来てくれました。翌年も同じ渋温泉で開催して、その時は2日間で延べ1,500人ぐらい来てくれた。
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▲2011年渋温泉「金具屋」にて開催された音泉温楽

小石 温泉地の組合とか、そういうところに許可とったりするんでしょ?調整するのにかなり苦労があるんじゃないかなって思うんだけど。
田中 それはまあそうね。だけど、何年か続けてやっていると、普段見かけないような若い人たちがたくさん来てくれたって、温泉地の旅館やおみやげ物やさんの方に喜んで頂けたりもして。 その温泉地の人で共感して積極的に協力してくれる人が一人でもいればけっこうスムースにいくことも多いよ。
 渋温泉の旅館組合青年部の人たちって面白い人たちが集まっていて。「渋響」っていうアートフェスを同じ渋温泉でやっていたり。だから一緒に盛り上げてもらったというか。彼らがいなかったら「音泉温楽」もできなかったと思う。協力者がいない場合は大変なこともあるけどね。
 地元の人たちが喜んでくれないと意味がないイベントだから、まず、場を作ること、そこに文化を根付かせることが大事だと思ってます。


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