イベントレポート

野菜のワインはNG? だったら自分が前例をつくるだけ。 日本初!ミニトマトワインづくりへの道なき道

 

長崎県は東彼杵町(ひがしそのぎまち)で、新しく販売予定のワインの試飲会が開かれると聞きつけ、潜入してきました。

会場は、元千綿農協第三米倉庫を改装して造られた複合施設「Sorriso riso(ソリッソリッソ)」。イベントスペースのほか、コーヒーショップ、オリジナルの革製品専門店、アンティーク雑貨や古着を扱う店舗などが入っています。

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暗くて会場の雰囲気がうまく伝わりませんが……当時の古き良さが残るとても素敵な空間でした。

 

お茶農家とミニトマトとの出会い

この日、晴れてお披露目となったのは、日本初!ミニトマトのワイン「サンチェリーピュア」。開発したのは、東彼杵町出身の大場譜五さんです。

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大場譜五さん。

実は大場さん、「そのぎ茶」と呼ばれる、長崎県を代表するお茶を代々生産されているのですが、緑茶の需要が伸び悩むこの時代、お茶以外の農産物で差別化を図ろうと、2018年からミニトマトの生産に取り組み始めました。

なぜミニトマトだったのでしょうか? その決め手は、「かわいらしい見た目」。赤い宝石のようなミニトマトが鈴なりに実るその姿に惹かれ、経験はありませんでしたが挑戦することに。もうひとつは、お茶の栽培は、茶の木を植えてから5年ほどかかるのに対して、ミニトマトは約50〜60日間で栽培できることも、大きな魅力だったと言います。

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試飲会では、大場さんとミニトマトとの出会いや、ワイン開発のプロセスや課題についてのお話も。

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今年7月、同じく東彼杵町にオープンしたばかりの洋創作料理店「tatara」さんがオードブルを提供。その他、冷たいそのぎ茶や、お茶を使用したスイーツなども。

 

トマトはワインとして販売できないことが判明

せっかくミニトマトの栽培をスタートしたのだから、なにかオンリーワンになれるものを開発したい。そんな思いからたどり着いたのが、ミニトマトのワイン。しかし日本ではトマトワインの前例がなく、いくつかのワイナリーに相談してみるも断られ続けます。そんな中で唯一、ぶどうの産地・久留米市田主丸のワイナリーから「作れるかもしれない」という返事をもらい、共同で開発を始めたのが今年の1月のこと。

瓶詰めされたばかりのワインは、まだ色が薄い。熟成期間を経て黄色味がかってくるそう。

この日は、いい感じに熟成したミニトマトワインがめでたくお披露目されるという記念すべき日。のはずですが、大場さんの口から驚くべき事実が伝えられました。

「日本では、ミニトマトをワインとして販売できない」

どういうことかざっくり説明しますと、ミニトマトは「果実」ではないため「果実酒」として認められず、「ワイン」として商品化できないというのです。ちなみに植物学的な分類上は果実になるそうで、フランスや台湾などでは当然のごとく「果実」に分類されているそうですが……。農林水産省や国税庁(お酒は国税庁の管轄だそうです)に問い合わせてみるも、現段階で「ミニトマトワイン」として販売するのは難しいとのこと。

何においても同じことが言えますが、“前例”を作らないことには改善されるものもされませんし、新しい価値観も共有できません。大場さんは“前例”を作るべく、フランスなど海外での商品開発も含めて「ミニトマトワイン」の実現化に向けて引き続き取り組んでいかれるそうです。

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現在はミニトマト“ワイン”ではなく“ブリュー=醸造酒”として開発中で、ラベルにも明記されています。ちなみにロゴデザインは、長崎を拠点に活動する「デジマグラフ」さんによるもの。

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ボトルにラベリングすると、鈴なりのミニトマトが現れる素敵なデザインに仕上がっています。商品名の「サンチェリーピュア」とは、ミニトマトの品種でもあるそうです。

 

ミニトマトワインが日本の酒屋に並ぶまで

醸造酒として一歩を踏み出した「サンチェリーピュア」。酒類の販売免許などまだまだいくつか踏むべき手続きはあるそうですが、クラウドファンディングも活用しながら販売に向けて確実に歩んでおられます。

大場さん、日本初のミニトマトワインが飲める日を、心待ちにしています!

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サンチェリーピュア、肝心のお味は…トマトの風味がほんのり漂いつつもトマト独特の酸味はなく、思ったより甘くやわらかい口当たり。飲みやすいのでついつい次の一杯が欲しくなります。

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サンチェリーピュア開発チーム。左から、ロゴデザインを手がけた羽山さん(デジマグラフ)、大場さん、奥様の晃子さん、村上さん(デジマグラフ)。

 

(文・撮影:堀尾真理)


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