博多まちづくりミートアップ

2つのエリアマネジメント団体と考える、これからの福岡〜ミートアップvol19レポート後編〜

天神はまちづくりのトップランナー?

白石そして3人目のゲストは、同じくWe Love天神の岩永さんです。よろしくお願いいたします。

岩永さん(以下、岩永)みなさん、こんばんは。普段は福岡テンジン大学という市民大学の学長をしています。We Love天神には2006年の立ち上げ時から関わらせていただいています。

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We Love天神の岩永さん

岩永さきほど藏田さんが、We Love天神のガイドラインが全国のエリマネ団体にコピペされたとおっしゃっておられました(笑)。そこにはちゃんとした理由があるんです。実は天神は、エリマネのトップランナーだと、全国のエリマネ団体から思われているんです。

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岩永藏田さんのお話にもありましたが、天神では「都心界」がかなり早い段階で発足しました。これはエリア内の商業施設共同体みたいなもんで、なんと戦後3年後の1948年にできている。こんなこと実現できているのは、日本全国見渡しても天神だけです。しかもこの年に歳末共同バーゲンまでやっています。札幌の初共同バーゲンは確か2006年、名古屋の栄が2013年なので、天神がどれだけ早い段階で共同バーゲンをやったかということが分かります。天神はエリマネのモデルを早くから確立していたんですね。

藏田2010年にパルコさんが福岡に進出された時、天神の各商業施設が「パルコさん、ようこそ福岡へ」「一緒に天神を盛り上げていきましょう」という懸垂幕を掲げたんですね。天神ってクレイジーなまちだと思ったと、後々パルコさんから聞きました(笑)。

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持続可能な開発にいち早く目をつけたまち、天神

岩永次にすごいのは、We Love天神のガイドラインにはいわゆるSDGsの思想が早くから入っている。これは「社会・経済・環境」の3本柱が束になり、どれも犠牲にすることなく未来に進むことで持続可能なまちづくりが実現できる、というものです。国連がSDGs(的な思想)を掲げ始めたのが90年台後半、それがまちづくりに発展してきたのが2000年代に入ってからなので、非常に早い段階で天神がそれを取り入れたんですね。これが、全国のエリマネ団体が「天神すごい!」とコピーした最大の理由だと思います。

天神は、横のつながりが驚異的

岩永僕はよく色々な施設の方と飲みに行く機会があるのですが、実はこれも珍しい。他のまちでは、商業施設同士で飲みに行くなんてまずありえないです。この横のつながりは、色んなところで感じますね。

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岩永しかも福岡の人って福岡のこと大好きじゃないですか? 市政調査でも「福岡市のこと好きですか?」と聞かれて「YES」と答えたのは、なんと97%。異常ですよ。だからこそ、自分たちで「We Love天神」とか言っちゃう(笑)。他都市から「どんだけ天神好きやねん」とツッコミが聞こえてきそうですが、天神だと違和感ないんです。でもこの感じが、来街者にも伝わっているんだろうなと思います。

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岩永「エリマネのモデル確立」「持続可能なまちづくり」「横のつながり」というこの3つを併せ持つトップランナー的存在の天神を、ライバルとして博多が常に意識している。この状況が、さらに福岡の都心部をより高みに持っていっているんじゃないでしょうか。

地域にコミットしているという意識は企業にあるか?

白石ここでひとつ僕の個人的な意見でもあるのですが、エリマネ団体の活動って基本的にその地域の代表企業がリードしている印象があります。エリマネには他の企業をどうまちづくりに巻き込んでいくかということも課題のひとつかと思うのですが、皆さんはどうお考えでしょうか?

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石橋会員企業さんには、自分たちの団体と思っていただくのが大前提ですが、なかなか難しいのが実情です。博多まち協には、開発・交通・事業・学びという4つの部会がありますので、各々関心がある部会に参加していただくという体制で、参画意識を高めるよう促しています。とにかく積み重ねが大事ですね。

白石それぞれの企業が地域にコミットしている意識を持ち、各々の立ち位置からまちづくりを盛り上げていくという図式がまだまだ必要なのかなと思います。ただ、まちづくりって有益性の問題と切れませんので、一筋縄ではいきませんね。

石橋すべて定量的に数値化するのは難しいので、定性的な点でまちづくりを評価してご理解いただくということも大事です。

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藏田We Love天神も13年活動してきて、ようやく会員企業さんが事務局側に話をしてくれる動きが出てきました。今後ますます天神も発展していくでしょうけれど、まちづくりを担うのは人。仕事、買い物、居住など天神に関わる様々な人たちをつないでいきたいですね。そのためにはますます会員が一枚岩になって盛り上げていかなければと思います。

会場からのご感想

参加者1博多で「ガーブリーブス」という飲食店の経営をしていますファビオと申します。店は博多駅前通りを一本入ったところにあります。オープン当初から飲食に適したエリアじゃないと聞いていましたが、そのような環境を敢えて選ぶことで、人の流れを作りたいと日々取り組んでいます。店がオープンした3年前と比べるとかなり飲食店が増えました。今後も少しでも回遊性を高めて、一緒に博多のまちを盛り上げていきたいと思います。

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参加者2店舗内装デザイン設計を手掛ける「クレアプランニング」の戸田と申します。今お話にありましたガーブリーブスや、本日の会場でもあるThe Companyの内装を手がけました。先日は博多駅前地区に「パンとエスプレッソと」というお店をリーシングしました。
We Love天神には4〜5年ほど前に入会し、会員として割と自由に活動させていただいています。一例に、若手の会員が集まるランチミーティングを催しているのですが、ゆくゆくはそこが出会いの場となり、結婚する人たちが出るかもしれないという夢を抱きつつ、日々取り組んでいます。

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参加者3福岡建築ファウンデーションというNPO団体で、博多まち協の会員でもあります。お話をお聞きし、天神と博多のエリマネは似通るのではなく違うものであるほうが、面白さが出てくるのではないかと思いました。

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石橋博多としては、歴史的な側面は意識していきたいですね。ただエリマネという面で見ると、We Love天神は大先輩。しっかりと追いかけていきたいですね。

岩永天神と博多を見てみると、大きな不動産で埋め尽くされそうになっていて、実は僕あんまり良くないと思ってます。人間ってパブリックとプライベートのほかに「セミパブリック」というものがあって、日本人はこの領域が大好き。例えば旅館なんか行くと、浴衣着て風呂行ったり食事したりしてますけど、海外にはこんな文化ありません。でもこのセミパブリックの領域にこそ人を惹きつける魅力が詰まっていると思っているんです。消費者にも生産者にもなれる、つまり両者がつながれる領域。しかもセミパブリックのコミュニティは、継続性が高いんです。まちづくりに例えると、消費するだけじゃない地域のお祭りやイベントなどでしょうか。そういったものと天神・博多の大きな不動産がどう両輪となってやっていくのかが、今後の鍵だと思っています。

参加者4私は超高齢社会の調査研究をしています。団塊ジュニアが定年退職する2030年頃って、まちはどうなっていると思われますか? 商業者側のお話ばかりで、住民の目線をあまり感じられませんでした。特に高齢者のことは何もなく、高齢者を抜きにしたエリマネなんて考えられないのではないか、というのが感想です。

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石橋超高齢社会に向けての議論はほとんどしていないのが実情で、今は申し訳ありませんとしか回答できませんが、今後の課題として認識をさせていただきたいと思います。

白石今後ガイドラインも改定されていくということで、そういった課題も含めて「歩いて楽しいまち」にしていくことも大切かもしれません。みなさん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

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〈ミートアップの内容がイラストに!〉

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おえかきあかねさんが、ミートアップの内容をグラフィックレコーディングしてくださいました! カラフルでかわいらしいだけじゃなく、ポイントとなるワードが分かりやすく散りばめられています。ミートアップのレポートと併せて見ていただくと、より一層イメージしやすいですよ♪

おえかきあかねさんのinstagramはこちら▽
https://www.instagram.com/oekakiakane/

(了)


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