博多まちづくりミートアップ

2つのエリアマネジメント団体と考える、これからの福岡〜ミートアップvol19レポート前編〜

藏田 隆秀 Takahide Kurata

We Love天神協議会 事務局長
藏田 隆秀 Takahide Kurata

岩永 真一 Hinichi Iwanaga

We Love天神協議会
岩永 真一 Hinichi Iwanaga

石橋 隆 Takashi Ishibashi

博多まちづくり推進協議会 事務局長
石橋 隆 Takashi Ishibashi


2019年7月に発表された調査で、全国でもっとも日本人が増えた福岡市。その中心部である天神・博多には、地域の事業者・団体・行政が、まちの魅力づくりに取り組むためにつくった2つのエリアマネジメント団体があります。天神の「We Love天神協議会」と、博多の「博多まちづくり推進協議会」です。福岡を魅力あるまちにしていくために様々な活動を行っている両団体からゲストを迎え、活動内容を紹介しながら、未来の福岡のためのまちづくりについて共に考えます。


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白石さん(以下、白石)みなさんこんばんは。司会進行の株式会社ダイスプロジェクト白石です。まず始めに、エリアマネジメント(以下、エリマネ)とは何かということについて簡単にご説明したいと思います。
国土交通省によると、エリマネとは「地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取り組み」と定義づけられています。地域をどう良いものにしていくか、まちの魅力をどうつくっていくかということを、住民、事業者、地権者、行政も関わりながら展開していく、というわけですね。

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モデレーターの白石氏

白石こうした活動を束ねる団体をエリアマネジメント団体(以下、エリマネ団体)と呼んでいます。当ミートアップの主催である「博多まちづくり推進協議会」(以下、博多まち協)や、本日のゲスト「We Love天神協議会」(以下、We Love天神)もエリマネ団体です。ちなみに私が所属している株式会社ダイスプロジェクトという会社も博多まち協の会員として、ミートアップなどのイベントや、駅前通りを賑やかにするための取り組みに参加しています。

エリアマネジメントによってまちはどう変わるのか

白石エリマネをめぐる主な背景の一つには、環境問題や防犯、震災時の避難など「環境や安全・安心への関心の高まり」があります。また道路や歩道環境の「維持管理・運営の必要性の高まり」、「地域間競争の進行に伴う地域の魅力づくりの必要性の高まり」なども挙げられます。

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白石このような時代の要請の中、エリマネによってまちなみや景観がよくなり、快適な環境や防災・防犯への効果が期待されています。商業・経済面では、消費活動や雇用などへの効果も見込めます。
ほか、エリマネに関する詳細は、国土交通省の「エリアマネジメント推進マニュアル」をご参照ください。

博多駅は田んぼの上にできた?

白石福岡は今、全国でももっとも勢いがある都市として認知されてきています。そこで本日は、エリマネ団体が福岡においてどのような活動をしているのか、その実態はどのようなものか。実際にエリマネ団体の方の話をご紹介します。まずはじめに、博多まち協・石橋事務局長です。

石橋さん(以下、石橋)みなさんこんばんは。JR九州所属で、博多まち協の事務局長をしております。よろしくお願いします。

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博多まちづくり推進協議会の石橋事務局長

石橋まずはじめに下の写真をご覧ください。これは昭和35年前後、現在の博多駅がある一帯を写したものです。ご覧の通り高い建物はひとつもなく、田んぼと畑ばかり。そんなエリアに、博多駅はあるんですね。

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石橋ちなみに初代と2代目の博多駅は、現在の位置より少し北にありましたが、当時はロータリーなどもなく駅としての環境があまり良くありませんでしたので、昭和38年に現在の場所に移転しました。そして今から8年前、九州新幹線の全線開通に伴いリニューアルしたのが、現在の4代目・JR博多シティのある博多駅です。

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九州新幹線全線開通に伴いリニューアルした4代目の博多駅(2011年3月)

博多まちづくり推進協議会の誕生

石橋当時、時代の移り変わりとともに、博多駅を含めた都心部のビルの更新や、九州新幹線の全線開通など、博多は次のまちづくりへの段階に差しかかっていました。その変化に対応するため、まちの魅力と価値を高めるイメージづくりが行われ「良質な景観のまち・新たににぎわいが生みだされるまち・災害に強いまち」という指針が掲げられました。これをまちづくりに反映するには、個々の開発を超えたところで「まちを育てる」という意識が必要です。こうして平成20年4月に博多まち協が発足しました。We Love天神さんが発足したのがその2年前ですので、私たちはかなり勉強をさせていただきました。

石橋博多まち協の活動範囲は、博多駅を中心とした比較的欲張りなエリアになっています。また組織の会員数は、行政・企業・住民・学校合わせて182の個人・団体から成り立っております。

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博多駅を中心に東西約1.5km、南北約1kmのエリアが、博多まちづくり推進協議会の活動エリアとなっている

駅前に賑わいを生み出す取り組みとは

石橋団体のスローガンは「駅からまちへ、まちから駅へ、歩いて楽しいまち」。
「歩いて楽しいまち」にするためには、回遊性を高める必要があります。そこで我々は駅周辺を中心に様々なイベントを仕掛けてきました。その一例を紹介します。

〈はかた駅前どんたくストリート〉

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石橋5月3~4日の2日間、はかた駅前通りをステージに見立て、多種多彩な演目で賑わいを創出しています。令和元年度は2日間で26,000人を超える集客がありました。

〈冬のファンタジー・はかた〉

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石橋冬の博多のまちを彩るイルミネーション事業です。JR博多シティ、キャナルシティ博多と駅周辺の通りを約120万の光の装飾で演出しています。

〈ハカタストリートバル/博多まちづくりミートアップ〉

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石橋国家戦略特区の利点を生かして新たな都心の賑わいをつくる「ハカタストリートバル」(左)と、博多のまちで様々な事業を行う方を招き、これからの博多のまちづくりを考えるトークイベント「博多まちづくりミートアップ」(右)があります。

〈クリーンデイ〉

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石橋環境や防犯面での取り組みもしております。毎月第3木曜日の朝には、博多駅の周辺企業や地域にお住まいの皆さまにご協力いただき、駅周辺の美化活動を行なっています。博多まち協の前身団体が始めて21年間にわたり継続している活動です。

〈防犯講習会〉

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石橋福岡県警察、福岡市と連携し平成22年より始めました。ひったくり、電話詐偽、ネットトラブル、性犯罪など様々なテーマを取り上げ「安全・安心なまちづくり」実現に向けて取り組んでいます。
こうした活動以外にも、博多駅前通りの歩道再整備や公園再整備などにも取り組んでおります。また今年の1月には「博多コネクティッド」という政策が福岡市より打ち出されました。具体的には、10年間で20棟の建替を誘導。インセンティブとして税制優遇や交付金を受けられるようになりました。私達としても博多コネクティッドを受け、更にまちの賑わいづくりに力を入れていきたいと思っています。

天神のエリアマネジメント団体
〜We Love天神協議会〜

白石次に、天神のエリマネ団体、We Love天神より藏田事務局長です。

藏田さん(以下、藏田)みなさん、こんばんは。We Love天神の藏田です。本籍は西鉄になります。どうぞよろしくお願いします。

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We Love天神協議会の藏田事務局長

藏田We Love天神の設立は2006年。目標は「歩いて楽しいまち/心地よく快適に過ごせるまち/持続的に発展するまち」です。会員数は142と、おかげさまでここ近年増えていまして、天神にオフィスを構えていらっしゃらない企業や商業事業者の方の入会も目立っています。背景には「天神ビッグバン」という建替政策と、それに伴うまちの変化に期待していただいていることが大きいと思います。

交通とともに発展してきた天神のまち

藏田天神のまちは、交通インフラの整備とともに発展してきたという歴史があります。戦前まで遡ると、西鉄の前身である九州鉄道が今の天神大牟田線を開業したのが1924年。もともと田んぼと畑しかないような場所に、どうして電車を通したのか。歴史を紐解くと、渡辺通りを造った渡辺与八郎さんという方が「将来のまちの発展は天神から」という強い志で以って、ポケットマネーで土地を買い、1911年には渡辺通りに路面電車を走らせ、まちの発展に寄与したという記録が残っています。その後、1936年に現在パルコがある場所に岩田屋が開業しました。続いて戦後直後の1946年には新天町、1961年には西鉄福岡駅内に西鉄名店街が開業します。

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藏田70年代の高度成長期には「第1次天神流通戦争」という名の下、百貨店や商業ビルを筆頭にまちの発展が加速し始め、今日に至るまでその勢いは衰えておりません。

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天神地区の歴史は、交通インフラの整備と両輪となり発展してきた商業発展の歴史でもあることが分かる

藏田この年表でひとつのポイントとなるのは、「都心界」と「天神発展会」(現・We Love天神)です(年表右上のオレンジ箇所)。これは現在のエリマネ団体の前身とも呼べるもので、天神地区は比較的古くから、ライバル同士が一致団結してまちを盛り上げていくという機運が醸成されてきたことがわかります。

天神のまちの魅力と課題

藏田天神というまちの魅力は、コンパクトな中に面的な広がりがあるところです。天神・大名・今泉・警固・舞鶴……と、天神周辺のエリアも一体となってまち歩きの楽しさが生み出されています。一方、メインストリートである渡辺通りの交通渋滞や違法駐輪など、様々な課題も抱えています。2000年代初頭は、九州新幹線開通を控え、駅ビルのリニューアルという博多エリアの存在もまた脅威でした。そこで地域一帯が一枚岩となって、天神地区を盛り上げていかなければいけないと、2006年にWe Love天神の設立に至りました。

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We Love天神の活動事例「天神こどもまるごとワンダーランド」(福岡市役所西側ふれあい広場)は2012年から開催。水とミストを使った遊具を設置し、子どもたちが涼しく楽しめる遊びの空間「天神涼園地」を創出

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本場ヨーロッパさながらの本格的な「天神クリスマスマーケット」(福岡市役所西側ふれあい広場)は2015年より開催。クリスマスならではの飲食メニューやステージイベント、雑貨販売などがある

藏田発足から13年、これまで様々な活動をしてきましたが、We Love天神としての役割そのものにも変化が訪れているように思います。「お買い物天国」として栄えてきた天神ですが、文化発信機能は不足していますし、商業以外では他都市と差別化が図れていません。天神らしさを、商業以外の面においても再構築していく必要があります。

天神のまちをより魅力的にするために

藏田下の写真は、近年力を入れている岩田屋新館・本館の間の「きらめき通り」の写真です。長さは約180メートル、天神地区の中では比較的洗練された通りで、我々の目指す「歩いて楽しいまち」をもっとも象徴しています。

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きらめき通りの歩行者天国

藏田将来的にはこの通りで毎週歩行者天国を実施したいと考えています。大名小学校跡地の再開発を経て、今後大名と天神をつなぐメイン動線はこの通りになると予想していますし、もちろんまち全体の回遊性向上も狙っています。

藏田また天神地区のクリスマスイルミネーションでは、近年「博多に負けとるぞ」という声がよく聞かれます(笑)。確かに博多駅前のイルミネーションと比べると全然違う。手法の陳腐化、設備の老朽化、予算の問題など山積みですが、天神の冬のお色直しも実現したいところです。 ほか、2008年に完成した団体のガイドラインについても、改訂の必要が出てきています。内容的には非常によくできていて、全国のエリマネ団体さんにもありがたいことに取り入れていただくことも多いのですが、まちを取り巻く環境は大きく変化しましたし、来年の総会までには改訂版を完成させたいところです。


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