キーワードは“行政らしさ”からの脱却!?

白石ただただ“真面目”なだけじゃない、という活動は割と福岡市が得意としているところだと思うんですが、どうでしょうか?
上原全部真似したいくらいですね(笑)。活動を広げようとする思いが強いばかりにどうしても押し付けがましくなってしまうのですが、greenbirdさんのように自発的に動いてもらう仕組みづくりが必要ですよね。小堀さんと入山さんのお話をうかがって、いい意味で、“行政らしさ”から脱却するというのがポイントになってくるのかなと感じました。

白石企業の方たちには、一人一花運動をどうアプローチしていったらいいと思いますか?
小堀花業界はどんどん縮小している状態です。スマホやSNSが発達しているデジタルな時代だからこそ、花を楽しむことがより大切だと思っているんですが、みなさんに伝える作業というのがとても難しいところなんですよね。花業界としては、顔の見える生産者と企業、そして小学校をつなげるなど、花だけではなく作っている人や育てている人の「顔が見える」取り組みに力を入れていこうと考えています。例えば、生産者から届いた苗を小学生が花壇に植える、その後に近隣の企業の方に花を託すセレモニーをするなど、ロジカルな部分と感情で動く部分、その2つを上手に使うことが重要だと思います。

白石確かに、顔が見えることによって、義務的に託されたそれとはまったく違うものになりますよね。入山さんにおうかがいしたいのですが、企業に支援していただくためのポイントなどはあるのでしょうか?
入山greenbirdの場合は、チームが広がったのが大きいですね。企業が団体に求めることは、半分は広告効果だと思うんです。あとは、寄付をいただくだけではなく、社員研修の一貫としてゴミ拾いに参加してもらったり、一緒に活動していく取り組みにも力を入れています。
人を上手に巻き込む方法とは

白石花を植える、ゴミを拾う、誰もが見ても正しい取り組みですよね。そういう取り組みを企業の方に活用してもらうというのはいいアイデアかもしれません。とはいえ、団体に入ったり運動に参加したりするのは実際パワーが必要。どうしたらこういう活動にやんわりと興味を持っている方たちを巻き込むことができると思いますか?
上原greenbirdさんのようなオリジナルグッズの制作だったり、小堀さんがおっしゃっていた心を動かす取り組みだったり…もっと広い視野で、花を手段として使っていくということが必要かなと思いましたね。
白石若者の参加者を増やしたいという場合、“かっこよく”というのがキーワードになってくるかもしれませんね。例えば、イギリスで盛んに行われている、「ゲリラ・ガーデニング」。違法とはいえ、ゴミがポイ捨てされ、落書きにまみれていた空き地に植物を植えてしまうというその行為は、インパクトがありますよね。
小堀「ゲリラ・ガーデニング」は極端な例ですが、インパクトは大切ですよね。当社でも、花と緑を軸に何ができるだろう?ということは常に考えています。以前、島根県のバラを使ったスイーツを開発したのですが、普段花と触れ合う機会のない人たちに、「バラの香りってこういうのだったんだ」と感じてもらうことで、違った角度からアプローチすることができました。「こうきたか!」という花の魅せ方をどんどん提案していきたいですね。
花が持つ、不思議な力

ゲストの胸にあしらわれた花のコサージュは、日比谷花壇さんが用意してくれたもの
白石そう考えてみると、花っていろんなところに入り込みやすいですね。社会課題の解決手段としても花が活躍するかもしれません。
上原昨年5月に行われた博多どんたくが終わった後にスポンサー花壇を見に行ったんですけど、まったく踏まれてなかったんですよね。それには驚きました。
小堀花壇を設けることで地域の犯罪率が低くなると聞いたことがあります。やはり花がそこにあるだけで、住民同士がコミュニケーションを取り合う機会が増え、不審者を寄せ付けないのかなと思いました。
大切なのは、環境づくり

白石「かっこいい」「排他的にならない」と口でいうことは簡単ですが、実際すごく難しいことじゃないですか。
入山greenbirdに関しては、10年目には排他的になっているだろうと予想していたんです。現在15年続いているのですが、「おじさんは代表から退く」ということを徹底しています。要は、40歳になったら次世代へ代表のバトンを受け継ぐ、というわけです。そうすることで、若い人が参加しやすい環境づくりをしています。

白石企業の代表が、引退したけれどまた戻ってくることになった…なんていう話もよく聞きますよね。
入山任せる勇気がないとそうなりますよね。10年単位で時代が移り変わるといわれていますし、何年も代表に居座ってたら世の中の動きについていけなくなる日が来るはずなんですよ。
ターゲットの変化

白石日比谷花壇さんは、若い人に寄り添う取り組みに関しては何か行っていますか?
小堀日比谷花壇は正直、“高い”ブランドというイメージが強いと思います。だからこそ、ワークショップなどを通じて若い人にも訴求していくことを意識しています。一人一花運動に関していうと、傘下に小さなブランドをたくさん抱える、統合ブランドのようなポジションが「一人一花運動」であってもいいのかな、と思いますね。
白石間口を広げる取り組みを別ブランドとして発信していく。いろんな入口をつくるのはいいアイデアかもしれませんね。
上原たしかに、ターゲットを変えて、さまざまなブランドを打ち出していくのはアリですね。
小堀ターゲットの話でいうと、女性誌などでお花を取り入れた上質な暮らしをテーマにした特集も多くなったことで、「花」という分野においては、年齢で区別されるというよりは、そういうスタイルに憧れを持つという人も多くなりました。

白石暮らしの中にどう寄り添っていくのかっていうことを考えていくことが大事なのかもしれませんね。それでは最後にみなさんにひとことずつメッセージをお願いします。
入山人って1歩動き出すのが本当に難しいんです。トークショーなどに来ていただいても、聞いて終わりっていうパータンが多いんですよ。必ず今の仕事にも活きてくると思うので、ぜひ“1歩動く”ことを意識してみてほしいです。
小堀いつも、花と緑でできることはなんだろう?と、必死で考えていますが、こうやってアウトプットする場をいただいたことで、得たものがたくさんありました。一人一花運動の認知度が全国区になり、「一人一花モデル」なんていわれるような活動になったら素敵だなと思います。
上原みなさんからもすごくヒントをいただきました。花を軸に、様々な人と手を組んで、面白いことを仕掛けていけたらと思います。そしてgreenbirdさんのように、私も早く引退して次世代に受け継いでいかなくてはならないですね(笑)。本日はこのような機会をいただいて本当にありがとうございました。
(了)