博多まちづくりミートアップ

もっと自由な働き方と仕事づくりのあり方〜ミートアップvol17レポート前編〜

榎本 二郎 Jiro Enomoto

株式会社Zero-Ten Park 代表取締役
榎本 二郎 Jiro Enomoto

福岡県出身・1978年生まれ。早大理工に入学し、世界を周遊した後、米ニューヨーク工科大を卒業。米国で映像制作に携わる。2011年に株式会社Zero-Ten を立ち上げ、現職。2016年、プロジェクト創生型ワークスペース&コミュニティ「The Company」を開業し、2018年に事業を分社化。株式会社Zero-Ten Parkを創業。日本国内だけでなく、主に東南アジア地域に拠点拡大中。また2018年には、初の映画監督作品がモナコ国際映画祭で最優秀賞を受賞。

白石 憲正 Kensei Shiraishi

株式会社diffeasy 代表取締役社長 CEO
白石 憲正 Kensei Shiraishi

早稲田大学大学院時代に人工知能(AI)およびディープラーニングを用いた株式売買の研究を行う。大学卒業後、IBM(日本アイ・ビー・エム株式会社)に入社。銀行システムにおける全行程を経験し、プロジェクトマネージャーの職位に就く。独立しdiffeasyを創業。


ここ数年で増加しているコワーキングスペース。フリーランスのみならず企業が入居する動きも増え、自由な働き方の実現だけでなく、新たな仕事の広がりにもつながっています。第17回目となる博多まちづくりミートアップでは、単なる空間のシェアだけではなく、コミュニティを構築する空間を目指し、福岡を中心に世界各地でワークスペースを運営する株式会社Zero-Ten Park(以下、ゼロテン)の榎本二郎氏、そのワークスペースに入居している株式会社diffeasyの白石憲正氏の2人を招き、コワーキングを通じた新たな働き方、仕事づくりと、博多のまちの関係について考えます。


コワーキングスペースとシェアオフィス、どこが違う?

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白石洋一さん(以下、白石(洋))みなさんこんばんは。本日モデレーターを務めさせていただく株式会社ダイスプロジェクトの白石です。

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博多まちづくりミートアップでモデレーターを務める白石洋一氏

白石(洋)コワーキングは2005年にサンフランシスコで始まりました。主にフリーランスや小規模企業などがオープンなワークスペースを共有することで、コミュニケーションを図りながら協業するというワークスタイルのことです。近年増えつつあるコワーキングスペースも「利用者同士の交流拠点」としての機能があり「予約なしでもドロップインできる」ことが大きな特徴となっています。単にオフィスを共有する「シェアオフィス」と混合されがちですが、実は利用の目的や使い方がちょっと違うんですね。

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榎本二郎氏(左)と白石憲正氏

白石(洋)2011年頃になると個人のフリーランスだけではなく、欧米の大企業を中心にコワーキングスペースを活用する例が増えていきます。

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世界におけるコワーキングスペース数(上)と、コワーキングスペースを利用する会員社数(下)の推移。共に軒並み増え続けているのがわかる。(出典:IPAニューヨーク便り 2018年3月)

白石(洋)コワーキングスペースが盛んになった背景には、バブル崩壊(2001)やリーマンショック(2008)以降、契約社員やフリーランスが急増したこともあるようです。日本でも、資本金が1円でも会社として認められる法律(中小企業挑戦支援法)ができましたし、時代の要請や働き方の変化などで、ここ数年で急増しています。コワーキングスペースに限らず、シェアオフィスや起業支援のスタートアップカフェなどを含めると、福岡だけでも数十カ所のスペースが生まれています。

福岡から世界へ
日本最大級のコワーキングスペース「The Company」

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これまでの博多まちづくりミートアップでもたびたび会場として利用されてきた「The Company」のイベントスペース

白石(洋)ではさっそく、コワーキングスペース「The Company」を運営されている榎本二郎さんにお話を伺いたいと思います。まずThe Companyを立ち上げた経緯を教えてください。

榎本二郎さん(以下、榎本)僕はもともと映像系の制作会社を立ち上げて運営していたのですが、受ける案件が大きくなってきて融通がきかなくなってきたので、色んな会社と組んでアウトソーシングを始めたんです。すると今度は効率が落ちてきました。仕事のクオリティを保つためには、コミュニケーションをより深めて密な関係性を築くことが必要です。だから個々の仕事をしながらも場としては同じものに向かって一緒に動けるような働き方を提案したんですね。それでオフィスを借りたのですが、延900坪もあっていくらなんでも広かった。だったら外部の人でも使える場所にしたらいいんじゃない?と。ちょうど海外でもコワーキングがムーブメントのようになっていましたので、福岡でもそれを作ったというのが、The Companyの始まりです。

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白石(洋)実業の中で発想が生まれていったんですね。The Companyの特徴を教えてください。

榎本独自のSNSアプリやマルチロケーションシステムを導入し、よりコミュニケーションを深めて協業を促進させることに力を入れています。日本では、福岡を中心に熊本にも拠点があり、海外ではセブ、バンコク、シンガポール、ホノルルなどに展開中です。入居会員数は約400社。約850名の方に所属していただいています。

利用者はフリーランスから大企業まで

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The Company キャナルシティ博多前店

白石(洋)入居者の方はどのような業種の方が多いのですか?

榎本様々ですが、ロケーションごとになんとなくカラーが分かれている感じはします。例えばこのキャナルシティ博多前店は、エンジニア、コーダー、デザイナーなど、実際に手を動かして制作する方が多い印象です。福岡PARCO店は、イベントオーガナイザーやモデル事務所、広告代理店の方が多いですね。

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福岡PARCO店。日本初・商業施設内のコワーキングスペース

榎本同じ福岡でも、中洲川端店はブロックチェーンの技術者がオフラインで集まれる「GBEC Park(ジーベック パーク)」というコミュニティを開設しています。ちなみにdiffeasyさんが入ってらっしゃるのはここですね。
つい先月には、トヨタ自動車九州さんとコラボした「Garraway F」というスペースを、天神イムズ店に開設しました。

白石(洋)海外でもわりと大企業がらみのスペースが増えているようですが、このあたりの目的といいますか、双方にとってのメリットとはどのようなものでしょうか。

榎本大手企業の狙いは大きく2つあると思います。ひとつは、これから成長する企業に投資したい。The Companyは契約会社の数も増えてますし、成長過程も見てますから、紹介してほしいわけですね。

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榎本もうひとつは、新しいアイデアや人材との出会いがほしい。変化の読めない未来を、社内だけじゃなく外の人間も一緒に予測していきたいという考えがあると思います。だから彼らは、どんどん新しい人たちと交流したいわけです。

白石(洋)完全に付加価値になっているわけですね。The Companyの海外拠点についても教えてください。

榎本セブ店は、セブでも今一番大きなコワーキングスペースになっています。現地のフリーペーパーには必ずメンバーが写るくらいの人気で、勢いで開設したわりには盛り上がっていますね。セブには2店舗ありますが、福岡と協業してもらいたいエンジニアもたくさんいます。

白石(洋)どうしてセブでそんなに流行ったんでしょうか?

榎本セブで仕事を提供したら「仕事だー!」って爆発的に人が来たんです。彼らの熱量、仕事への貪欲さはすごいですよ。なんせ今のフィリピン人口は10〜20代が一番多くて日本と真逆。日本に興味を持って、日本の会社で働きたいと思っている人も多いので、そういった展開ができたら面白いと思います。

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The Compnay セブ マンダウエ店

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The Company バンコク店。タイ最大手のエンタメ系企業のフロアに開設され、撮影やインタビューに利用されることも

弟とふたり、マンションの一室からスタートしたdiffeasy

白石(洋)ここからはdiffeasyの白石憲正さんにお話を伺います。まずは、diffeasyさん設立の経緯について教えてください。

白石憲正さん(以下、白石(憲))もともと僕は大学で人工知能の研究をしていまして、卒業後にIBMに入社し、その後独立してdiffeasyという会社を弟と立ち上げました。「世界中の難しいことを簡単に」という経営理念を、「difficult」と「easy」をひとつにした会社名に込めています。

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白石憲正氏

白石(憲)diffeasyには大きく3事業あって、「法人向けオーダーメイドWebシステム開発」は業務効率やスマホのアプリを中心とした受託開発をしています。また「大会運営 向上心」では、剣道、空手道、柔道など対戦型競技の大会運営をスマホ上で管理できる自社ソフトです。最後に仕事やプライベートの目標を達成するための大谷翔平選手も活用したアイデア発想法をシステム化した「目標達成マンダラート」があります。

白石(洋)diffeasyとThe Companyとの出会いはどのようなものですか?

白石(憲)2015年10月に、弟と2人で大名のマンションの一室を借りて会社をスタートさせたのですが、1年くらい経つと回らなくなってきたので社員を4名増やしたんですね。でも狭いマンションの一室で男ばっかりでむさ苦しくて……どうしようかと思っていたところThe Companyのことを知りました。すでに法人ブースが埋まっていて入れなかったので、(榎本)二郎さんに「会議室ひとつ潰しませんか?」と無茶な交渉して入れてもらったのが、2017年の3月です。

榎本福岡って、マンションの安くて狭いワンルームを借りてオフィスにしてますというベンチャーの方が結構多いんです。でもThe Companyに移ると3坪になってますます狭くなるから、結局ワンルームのままというケースも多い。このワンルームから出ない会社の98%は、永遠に世に出ることがない会社だと僕は思いますね。

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白石(憲)3坪とはいえ、The Companyに引っ越してきたのはすごくいい変化でした。その後も社員数が増加するたびにThe Company内での引越しを3回も繰り返しました。経て、今は社員数22名で中洲川端店の6階フロアの半分を利用しています。中洲川端店に移る時も使いやすくレイアウトデザインしてもらったり、初期コストもかなり抑えていただいたし、コワーキングゆえの有利さを存分に使えています。

榎本コワーキングスペースの魅力のひとつに、サイズに合わせて変更していけることと、コストを抑えやすいということはありますね。

白石(憲)計画上2024年に社員数100名を越えることになっているので、またよろしくお願いします(笑)


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